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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~
第七章:澱神無 6
しおりを挟むましろとこがね。
“きつねび”の銃火器使いが無事帰還したことで、オレ達の戦力は大幅に増強。しかも既に核を一つ潰すことに成功した。
この流れに乗って、一気に決着をつけたい。
「核探しの方はどうだ!?」
闇夜の中、ましろの顔が二挺拳銃のマズルフラッシュで照らされている。頭部の傷は塞がりかけているのか、血の跡は乾きつつある。本人も戦闘意欲があり、心躍らせながら澱神無の周囲――その空中を駆け回っている。
ましろのバトルスタイルとポルターガイストの浮遊サポートの相性は抜群で、次々と弾丸を撃ち込んで浄怪しつつ、反撃も的確に避けていた。
その姿、まるで戦場の踊り子。
「まだ見つからない!でも中心部近くにある可能性が高いと思うけど!?」
茶々の予想。それは邪怪の体型に基づく考えだ。基本的に核は人間にとって脳か心臓がある部分に近い場所に出来やすい。また本能故か肉の奥底、どこから攻めても一番時間がかかる場所にあることも多い。そして澱神無の特徴……核が三つあることと先程の潰した核が胴体脇近くにあったことを考慮すると、一番可能性が高いのは頭部の奥になるのは自然だ。次点で反対側の胴体脇だろうか。
「中心部って、あのギョロ目の真ん中辺りか!?」
「そうね。それについでに目玉も抉っちゃう?」
「それならボクに任せて」
ポルターガイストの浮遊状態で貫穿を両手で構えるこがね。あの威力で撃てばたとえ防御されても目玉に傷を付けられそうだ。
「姉ちゃんと駆郎はボクの背中を押さえて。これ、反動が凄いから」
「だろうな」
本来、対物ライフルを足元の安定しない場所で使うことなんてないだろう。ましてや空中なんてあり得ない。もしそのまま引き金を引いたら大方空中で大回転、弾道も逸れてしまいそうだ。
オレとましろはがっちりと支えてスタンバイ。こがねを発射の衝撃から守るクッション役になる。
ドガンッ!
反動で吹っ飛びそうになるこがねの体を、反対から押し返してその場に留める。
弾丸は真っ直ぐ澱神無を穿とうとするが、その前には珊瑚礁の盾が現れる。
ドガンッ、ドガンッ!
こがねは立て続けに磁轟弾を放ち、計三発が盾にぶち当たる。
それなりに美しかった珊瑚礁は木っ端微塵に砕け散り、その全てが焼け焦げて海の藻屑になる。それでも弾丸は威力を失わず、澱神無の左目を撃ち抜いた。
「うまくいったね」
「いや、まだだ!目玉はまだ生きていやがる!」
爆煙の裂け目から覗く物体に、ましろがいち早く気付く。
左目を潰したと思ったが、破壊出来たのは表面のクリアパーツ、ドーム状のカバーまで。まだ内部の機能は失われていない。
「心配ご無用、ここが裸になればこっちのものだよ♪」
そこへ茶々が刃を突き刺す。眼球を保護する部位がないため、もろに目の奥まで深々と刃が沈み込む。
ぶるるっ、と身震いすると共に左目が浄怪により消滅。そこにはぽっかりと空いた眼窩だけが残された。
「もう一方も抉ってやろうぜ――って、やばい、全員退避!」
ましろが意気揚々と次の狩りポイントへ向かおうとしたが、即座にUターン。そして遅れてオレ達も逃げ出す。
核と目玉を一つずつ失った澱神無はなりふり構わなくなったのか、全身から一斉に海産物を発射してきた。
「早く逃げなさい!」
「ここはオレ様達が食い止めるぜ!」
相馬さんと牛来さんが、オレが作った聖結の札で結界を展開。更に足りない分は自身の浄怪道具で海産物を防いでいく。
オレ達が砂浜まで緊急避難出来る時間を稼ぐつもりだ。しかしそれでは二人は逃げられない。無理矢理引き戻そうとしても豪雨のような海産物から守り切れない。
「ノブレス・オブ・リージュ、これが年長者の務めというものですよ」
「とにかく、気にすんなよ!」
二人は、死を覚悟しているのだ。
後輩達に全てを託して、自ら犠牲になるつもりなんだ。
『おーい、自己犠牲なんて別にいいもんじゃねーぞ!』
拡声器越しの、ハウリング混じりの声。
そして、ヘリコプターが飛ぶバタバタという特有の音。
『いや~、遅れて悪かったなーっ!』
それは、松林の向こう側から飛んでくる物体から発せられていた。
飛行するのは、機体。
それは無骨で、殆ど飾り気がなかった。
蒼いヘリコプター。
その腹には黒光りするガトリング砲を抱えていた。
そしてそれに乗っているのは――
『ヒーローは遅れて登場するってな――って、あっ取らないで』
『ただ単に清寂会の幹部が揃いも揃って腰が重かっただけでしょうが!』
――新兵器の使用許可を取りに行っていた母さんと行兵衛だった。
『よーし、今から試作機でいきなりの実戦だ!フリーのお二人さん、早くどかないと巻き添え食らうぞ!』
「待って下さいよ、これどうするんです――」
『発射五秒前ぇーっ!』
「あのおっさん話聞かねーぞ!?」
相馬さんと牛来さんが結界があった場所からフルスピードでトンズラするのと同時に、機銃が回転。
ズドドドドドドドドドドッ!!
ガトリングの先端が真っ赤に燃え上がり、大口径の磁轟弾が絶え間なく放たれる。夜を照らす火花の線は海産物の豪雨を焼き尽くし浄怪、更に澱神無の胴体にも着弾していく。
「さすが清寂会ですね。規模が段違いだ」
「オレ達、あいつら押しのけて天下取れるかなー……」
ガトリングの射程範囲から逃れ、なんとか砂浜に着いた牛馬コンビ。割と余裕があるのか、砲撃の様子を感心しながら見ている。
「って、さっき死のうとしていた人達が何言っているんですか」
「別に死ぬつもりはありませんでしたけど。ねぇ?」
「あれくらいなら死なないだろ」
「えぇ……」
格好良い先輩なのか、ただ無謀なのか。
どっちなんだこのコンビ。
『こいつはとんだじゃじゃ馬だっ!でも威力は最高だな!』
一方、行兵衛はやけにハイテンションだ。ヘリコプターの操縦と初めて新兵器を使ったことを実感しているからだろう。
こんな火力を有した武器、普通に念導者をしていたら触るどころかお目に掛かることさえない。そんなレア中のレア武器である試作機が使えたら、オレだって同じようにはしゃいでしまいそうだ。
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
新兵器のヘリコプターは澱神無の周囲を旋回、再びガトリング砲で海鮮焼きを作っていく。
澱神無はヘリコプターへと集中的に海産物を発射するものの、その全てが圧倒的火力によって消し炭になる。しかも相殺しきれず着弾する物もある。伝説の怪物も、最先端の技術の前では苦戦していた。
更に目の周辺に集中砲火。その内の一発が右目の透明な防護壁を壊し、もう一発が眼球そのものを破裂させた。
これで両目は完全に浄怪。遂に澱神無は気配や霊力を察知して戦わなくてはいけなくなったのだ。
『まだまだ、ここからだぜ!』
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
一切の容赦をせず、途切れなく弾幕を放ち続ける。澱神無の顔はどんどん耕されていき、元の形を留めなくなってきている。
そして頭頂部が楕円形に抉れて飛び散り、大きく脈打つ核も発見される。
『その核、もらった!』
磁轟弾はぐっちゃぐちゃのミンチ肉まみれとなった頭部で鼓動する核へと砲撃する。
ズドドッ!
無防備になった核には身を守る術がなく、磁轟弾を受け止めるしかない。
黒い体液の飛沫の中で、核が光の粒子へと変わっていった。
行兵衛が手綱を引くじゃじゃ馬の圧倒的火力により、残る核はあと一つとなったのだ。
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