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それからヒバリは〝ちょっと抜けてる〟〝ちょっとドジ〟な青年を演じ続けた。うっかり物を落とし、慣れていないと視線を彷徨わせ、ほんの微か声音に戸惑いを隠して。わざとらしくないそれは事情と素を知っている凪ですら間違えそうになるのだ。何も知らない街の人々は、それはもう面白いくらいにホイホイと引っかかった。そしてヒバリが一言も助けを求めたりしていないにも関わらず、我先にと助けの手が差し出され、聞いてもいないのに「この時期はこれが安い」だの、「夜は急に寒くなるからね」だのと言った日常の知識に加え、「あの場所には近づいてはいけない」とか、「あの人は最近変な噂がついて回っているから気をつけろ」と言った興味深い話もあちこちから提供された。しかしヒバリは一言も「何か変なことが起こったりしていませんか?」といったような探りを入れる言葉はひとつも口にしていないので怪しまれることも無い。今のヒバリはどこまでいっても〝少し抜けていて、少しドジな、手を貸してあげたくなる世間知らずな青年〟でしかなかった。
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