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〝おいで。一緒に行きましょう〟
迎えに来ると言って出て行った母が戻った時、幼い心は確かに歓喜した。大人の事情も世間も何も知らなかった子供は言葉もおぼつかない外国人が子供を養えるだけの仕事を見つけるのがどれほど大変かを知らなかったから、母が随分と早くに迎えに来た違和感にも気づくことはなかった。
〝何も聞かないで。何も聞いては駄目。見ては駄目〟
祈るように言う母が何を思ってそう言ったのか、その真相は未だにわからない。だが愚直なまでに母を信じ、愛していたから、その祈るような願いに頷いた。そして母に手を引かれるままに見も知らぬ外国の地に足を踏み入れ、言葉さえもわからぬままに母が用意した部屋でジッと、帰りを待っていた。
シンと静まり返った部屋に独りいると、あれこれと考えそうになる。どうして? という問いはいつだってその心の中にあった。けれど母が何も聞かず、何も見ないでと言うのであれば、その通りであれるようにと思考を閉ざす。それは随分と孤独で、寂しくて、だから母が〝おいで〟と言ってくれた時は、やっと時が進むのだと笑みさえも浮かんだ。
母と共に向かった先で、黒髪の美しい青年がいた。子供の心が明るくなって、弾むようだ。
けれど、行きついた先にあったのは、そんな美しく輝かしいものではなかった。
そこで子供は初めて、嫌悪を抱きながら膝をついたのだった。
迎えに来ると言って出て行った母が戻った時、幼い心は確かに歓喜した。大人の事情も世間も何も知らなかった子供は言葉もおぼつかない外国人が子供を養えるだけの仕事を見つけるのがどれほど大変かを知らなかったから、母が随分と早くに迎えに来た違和感にも気づくことはなかった。
〝何も聞かないで。何も聞いては駄目。見ては駄目〟
祈るように言う母が何を思ってそう言ったのか、その真相は未だにわからない。だが愚直なまでに母を信じ、愛していたから、その祈るような願いに頷いた。そして母に手を引かれるままに見も知らぬ外国の地に足を踏み入れ、言葉さえもわからぬままに母が用意した部屋でジッと、帰りを待っていた。
シンと静まり返った部屋に独りいると、あれこれと考えそうになる。どうして? という問いはいつだってその心の中にあった。けれど母が何も聞かず、何も見ないでと言うのであれば、その通りであれるようにと思考を閉ざす。それは随分と孤独で、寂しくて、だから母が〝おいで〟と言ってくれた時は、やっと時が進むのだと笑みさえも浮かんだ。
母と共に向かった先で、黒髪の美しい青年がいた。子供の心が明るくなって、弾むようだ。
けれど、行きついた先にあったのは、そんな美しく輝かしいものではなかった。
そこで子供は初めて、嫌悪を抱きながら膝をついたのだった。
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