大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)

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 ツバキがヒバリと密通している。そんな噂が流れてから、凪は今まで以上にヒバリの行動を注視するようになった。
 夜に動くヒバリは朝昼はあまり部屋から出てこない。それが凪の認識で、だからこそ朝昼に自らの仕事を片付けていたのだが、よくよく見るようになって、彼が朝昼にも何かしらの動きを見せていることに気づいた。その様子からして昨日今日に始まったことではない。つまりヒバリは凪に――ひいてはサーミフに何も知らせず今までも動いていたということだろう。ディーディアは贋金問題解決に協力してもらっている身とはいえ、あまり秘密を作られるのは好ましくない。例え朝昼はただの観光をしているだけだったとしても、誰に見られるとも限らないのだから事が終わるまでは控えるべきだろう。これではヒバリに疑いがかかる。そんな建前をつらつらと頭の中で並べ立てて、凪は独り静かにため息をついた。
(違うな……)
 ディーディアのため、ヒバリのため、怪しい行動は好ましくないなんてただの言い訳だ。凪の本心はディーディア王室に隠れてコソコソ動くヒバリを見れば、また母との密会だと騒がれてしまうかもしれないという懸念しかない。それが母を想ってなのか、自らの保身ゆえかも、もはや凪にはわからなかった。
 けれどディーディアにとってもヒバリの行動は好ましくないものだと何度も何度も自分に言い聞かせて、凪は静かに深呼吸するとヒバリの部屋へ向かった。
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