必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「周だね。その……あまり聞きたくない話かもしれないけれど、一応、話しても良いかな?」
 雪也は随分と優しい性格なのだろう。聞きたくないだろうと言いながら、彼自身が誰よりも痛みを堪えているような顔をしながらポツリ、ポツリと話し始めた。
 屋敷から怒声や悲鳴が響いていて気にしていたこと。出先から帰る時にボロ布に包まれた周を担ぐ大男が屋敷から出てくるのを見て、その異様さに後をつけたこと。大男が去ってから確認したら周が生きていたこと。おびただしい量の血が流れていたのでこの庵に運んだこと。蒼が呼んでくれた優が治療を施してくれたこと。
 わざとに淡々と語られたそれらを、周はただ頷きながらボンヤリと聞いていた。驚くことなどない。きっと屋敷の主は折檻が過ぎて周が死んだと思い込み、使用人の男に山へ捨てさせたのだろう。彼はどうして捕まらないのかと思うほどに人を人と認識しない。折檻に理由も手加減もなく、動かなくなれば捨てて新しいモノを用意すれば良い。ただそれだけだ。
「……やっぱり、神さまだった……」
 周の苦しみを痛むように眉根を寄せる雪也を見つめて、周はポツンと零した。雪也や蒼は何のことかわからずキョトンとして首を傾げるが、周はそれを気にすることなく小さな、本当に小さな笑みを浮かべる。
 これまで何度も動かなくなった同僚を見てきた。皆乱雑にボロ布をまかれ、大男が担いでどこかへ連れて行かれた。おそらくは周と同じように、人目のつかぬ場所に捨てられたのだろう。捨てられた者がすぐに動けるわけでも仕事を得られるわけでもないことは、今の己を見れば一目瞭然だ。だが金もない、動くこともままならない者が食事を得ることなど不可能で、運よく生きて屋敷を出たのだとしても所詮は遅いか早いかの問題だけで待ち受けるのは死でしかない。だというのに、目の前の美しい青年は助けてくれた。周が何も持たないことは見ればすぐにわかることであろうに、この庵まで運んで、人を呼んで手当をしてくれた。今も何かと気にかけ、周を生かそうとしてくれている。周が今まで見てきたどの人間とも、雪也は違った。
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