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2017.5.2.Tue

第二章 来訪 【 一日目 夕 】

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 時刻は夕方頃。昼間の時点で雲が空を覆い始めていたせいか、辺りはすっかり暗くなっていた。
 嵐の前触れだろうか、どこかからゴロゴロと遠雷の音が聞こえ、強い風が吹き付ける。その瞬間、カッ、とフラッシュの如く空全体が光ったと思うと、腹の底に響くような音と振動を伝えた。

「外、荒れ始めたね。……雷、近くに落ちたっぽいし。今夜、ヤバそうじゃない?」

 夕食前の食堂で、私は窓の外を見ながら呟いた。山にいる以上、変わりやすい天候に今更驚く事はない。それでも、何と無く不安に思ってしまうわけで。
 その声に反応したのか、たった今までケータイを見ていた比美子が顔を上げる。どうやら、これからの天気の状態を確認していたようだ。

「雨、十時くらいには降るらしいよ。まぁ、今から外に出る用も無いから、気にしなくても良いんだけどね」
「そうね。冬だったら、小屋から薪を持って来なくちゃいけないし。嵐の中、重い物持ち歩くのは嫌だもん」
「あぁ……。確かに。あそこ、ただでさえ遠いもんねぇ……」

 実はここ、霧隠荘には薪ストーブが設置されているので、その薪を貯蓄しておく為の丸太小屋が近くに建てられている。
 近くとは言っても、霧隠荘からは徒歩で十五分程かかる上、一度に大量の薪を持って移動するのは、正直かなりしんどい。
 だからと言って、誰もストーブを撤去しろという苦情が出ない辺り、何だかんだ言っても皆、あのレトロ感溢れるそれに愛着があるのだろうけれど。
 などと談笑していると突然、室内を照らす閃光と、それを追うようにバリバリ、と窓を揺らすような激しい雷鳴が襲う。そのあまりの衝撃に、私達は思わず身震いした。

「ひゃッ! また近くに落ちたァ! ……マジで、皆が揃った後で良かったよね。危ないもん」
「本当にね。まぁでも、アタシ達以外にこんな山奥に来るような物好きなんて、そういるわけないけど……?」

 その時、おおよそする筈の無い日常音が、別荘内に響き渡る。この突然の出来事に、私達は顔を見合わせて目を丸くした。
 何で、今?
 間違いようがない。だって、この音は。

「比美子さん。今の、もしかして……」
「インターホンですね。朱華さん」

 人のそう立ち入る事の無い山奥。外は嵐。その上メンバーは既に勢揃いしている。そんな状況で、インターホン? どういう事だろう?

「もしかして、ユーガ君? ……なわけない、よね?」
「いや、あの子は来れないって言ったじゃん。確かに、昨日まで行きたい行きたいって駄々こねてたらしいけど」

 半信半疑、といった様子で聞いて来た比美子の問いかけを、私はバッサリと切り捨てる。ちなみにユーガ君とは荒木あらき優雅まさただ君という、今年中学生になる私の従弟の事である。
 本来なら、私達と一緒に霧隠荘を訪れる予定だったのが、風邪を拗らせてしまったので今回は見送る、と彼の母親(私の叔母とも言う)から連絡が来たのだ。だから、例え回復したとしても、こんな天候の変わりやすい山中に病み上がりの状態で来られるわけがない。
 ならば、本当に一体誰なんだろう? こんな夕方、それも悪天候の中、こんな山奥にわざわざ訪れた、おかしな客は?

「はぁい、ただ今」

 比美子と二人、あれこれ考えていると、神楽さんのくぐもった声と、ぱたぱたとせわしない足音がドア越しに聞こえて来た。
 そう言えば、彼女は夕食の準備をしていてキッチンにいたんだった。良く考えたら、食堂にいる私達の方が玄関に近かったのに。彼女には悪い事をしてしまったな、と今更ながら反省する。
 それにしても、こんな山中を訪れる珍客とは、一体どんな人間なのだろう。ちょっと、というか、かなり気になる。

「………覗いて来ない?」

 ぼそりと私が零せば、比美子が悪戯っ子のような笑みを向けて来る。どうやら、考える事は同じみたい。流石は我が友というか、類友というか。
 がっちりと互いの手を組んだ後、私達はなるべく音を立てぬよう気を付けつつ、食堂を出た。そうして、こっそりと廊下を進み、玄関へと向かう。しかし、覗いている事がバレると大変気まずい為、あくまでも物陰からでの様子見である。

「……何やっているんだろうね、私達。良い年してさ」
「コラ朱華! ここまで来て我に返っては駄目よ! それより静かにして。話し声が聞こえないじゃない」

 そう小声で私をたしなめた後、比美子はすぐに前方に集中し始めた。それを見て、私も耳をそばだてる。位置がやや遠く、玄関の様子が見えないため、音で判断するしかない。
 だが、廊下が思いの外静かだった為か、その声はかなりはっきりと聞こえて来たのだった。

「すみませんが、今晩、こちらに宿泊させて頂く事は出来ませんか? この辺りを一通り回ってみたのですが、他にそれらしい建物がなかったもので……」

 若い、少女の声だ。しかし、どこか大人びているその声色から、おそらく香澄ちゃんよりは年上なのだろうと思う。淡々とした口振りだが、そこには、少しの疲労が感じられた。
 ひょっとしたら、かなりの時間宿探しをしていたのかもしれない。何せ、この周辺には霧隠荘以外は宿泊地どころか、建物と言える物など皆無なのだから。
 そんな少女に対して、神楽さんは少し考えあぐねているようだ。彼女は優しいから、少女の申し出を了承したいと思っている事は、容易に想像出来る。
 通常ならばそのまま了承するのだろうが、今回は身内での集まり、それも五年ぶりのだ。だから、その中に他人が入る事を私達がどう思うのかを、気にしているのだ。
 だったら、と思った私は、そのまま玄関へと向かう。別に、一人くらい増えたって良いじゃないか。どうせ、元ペンションだから、部屋数だって余裕なんだし。

「良いじゃない、神楽さん。この風の中、放り出すのは危ないって。もし誰かが渋るようなら、私がOKしたって言うから」
「あ、朱華ちゃん。いつの間に……」

 突然現れた私に驚いたらしい神楽さんは、若干上擦った声を上げる。しかし、それを特に言及する事も無く、私は彼女の正面にいる少女に、目を向けた。
 はっきり言って、美人だった。当然、誇張なんかでは決して無い。もし、この場に美津瑠さんが居ようものなら、即座に口説くくらいのハイレベルだろう。
 セミロングの黒髪は艶やかで、同色の瞳は、黒曜石のよう。肌も、陶磁器を思わせる程に白く、全体的にほっそりとした身体は華奢で、スタイルも良かった。完璧だ。
 つい見惚れていると、後ろから比美子がやって来る気配がした。そして、私と同じように息を呑むと、やや興奮した口調で少女に話しかける。

「……こりゃまた、すっごい美人が来たものね。あ、アタシは樋口比美子。比美子、で良いからね。あなたは?」
「……烏丸からすま黎名れいな、と申します」
「黎名ちゃんかぁ。よろしくねー。で、こっちは、親友の等々力朱華。“アヤカ”は朱雀の朱に中華の華で、朱華。下手すると“スカ”とも読めるから間違えないであげてね」

 比美子は、さっくりと自己紹介を済ませると、ついでとばかりに傍らにいた私を指しつつ、紹介する。だが、その言い方は如何なものか。カチンと来た私は、すかさず反撃体勢に入る。

うるっさいな邪馬台国には言われたくないわ! 何? その読み間違い! 悪意しか感じないわ!! ……初めまして、黎名ちゃん。私の事は気さくに朱華で良いから」
「何おぅ! ノスタルジックで良いじゃないの“ヒミコ”!! 邪馬台国上等よ!!」

 来訪者を一目見に来ただけの筈が、いつしか互いの名前の貶し合いになってしまっていた。今思うと、即座に穴を掘って埋まりたいくらいだ。
 しかし、私と比美子のやり取りが面白かったのか、黎名ちゃんがくすり、と笑った。めっちゃ可愛かった。よしっ! 掴みはバッチリのようだ。

「……それじゃあ、黎名さんを部屋にご案内しなきゃ。確か、朱華ちゃんの部屋の隣が開いていたわよね?」

 和気あいあいとした空気の中、神楽さんが切り出す。そうだった。こんな風に立ち話に花を咲かせている場合じゃない。黎名ちゃんだって疲れているだろうし。

「じゃ、私が案内しますね。というわけで黎名ちゃん、付いて来て。……比美子はどうする?」
「んー、悪いんだけど、パス。ちょっとやる事があってね。ゴメンね黎名ちゃん。また後で」

 その、控えめな比美子の態度に、私はおや? と首をかしげた。こういう時、必ずノッて来る筈の比美子にしては珍しいなと思ったのだ。とはいえ、今の最優先事項は、黎名ちゃんを部屋に案内する事だ。
 私は隣の少女に声をかけると、共に連れ立って歩き出す。ちらりと後ろを盗み見てみると、比美子達が何か話しているようだった。本当に、何なのよ、もう!
 ……良いもん。私には黎名ちゃんがいるもんねー。
 心の中で悪態を吐きつつ、私は新たな客人と共に廊下を歩き始めた。どうせなら、香澄ちゃんも誘っちゃおうかな? 何て考えながら。



「ようこそ霧隠荘へ。そして初めまして。俺は塙美津瑠と言います。どうぞよろしく! ……それにしても、まさか、こんなところで天使に会えるなんて、今日は幸せな日だなぁ!!」
「黙れ美津瑠」
「流石美津瑠さん歪み無い! 半径二メートル以内に近付かないで下さい!」
「将泰も朱華ちゃんも酷くねぇ!?」

 夕飯の時間が近付いて来たので、黎名ちゃんを食堂へ案内すると、初っぱなから美津瑠さんがブチ込んで来た。
 将泰さんからのフォローを受けつつ、私は黎名ちゃんを自分の隣の席に誘導する。もちろん、ナンパ魔から出来るだけ離れた場所に、だ。
 ちぇー、とぶすくれる美津瑠さんは、子供みたいに可愛くて憎めないが、それとこれとは話が別だ。それを呆れて見ていた将泰さんが、こちらに声をかけて来る。

「初めまして、村崎将泰です。あのナンパ野郎が迷惑かけてゴメンね。後でシメておくから」
「烏丸黎名と申します。こちらこそ、急な珍客を受け入れて下さり、感謝しています。よろしくお願いします」

 堅苦しい挨拶を終えた黎名ちゃんに、将泰さんは握手を求めた。うーん。相変わらずスマートな人だなぁ。素直にカッコいいと思う。例えその直後、「ずるいぞ将泰ー! 俺もー!」と騒ぐ美津瑠さんを、エルボーで沈めていたとしてもだ。

「おー、流石将泰さん。相変わらずキレの良い動き! 尊敬するなぁ!!」
「わぁ! もしかしてぇ、その子がさっき来たっていうコですかぁー? ヤバぁ! ちょー可愛いー!!」

 背後から聞こえた光志郎と唯の声に振り返れば、いつの間にやら他のメンバーが集まって来ていた。皆、急な来訪者である黎名ちゃんに興味津々のようだ。せっかくなので、私が率先して彼女を紹介する事にする。

「紹介するね。この子は、烏丸黎名ちゃん。この辺で、泊まれる所が無くて困っていたところを、私がお誘いしたの。さっき来たばかりだったから、部屋で休んで貰ってたわけ」
「初めまして、烏丸黎名と申します。皆さんの久しぶりの再会に、水を差す真似をしてしまってすみません。今晩は、こちらでお世話になりますので、皆さん、どうぞよろしくお願いします」

 ペコリ、と黎名ちゃんがお辞儀をすると、皆が息を呑むのが判った。……デスヨネー。あの黒髪から覗く項とか、マジヤバい。色っぽい。
 ……ってコラ! 先生以外の男性陣! じっくり見ているんじゃない! 特に聖!! 鼻の下めちゃ伸びているから!! 欲望に忠実過ぎるのよ、この変態がぁ!!
 紫御に光志郎も! どんなに涼しい顔していても、結局あんた達も所詮男って事ね畜生!! 思いっ切り目が泳いでいるのよ、バカヤロォ!!
 と、内心で大暴れしていると、目の前で唯が聖を殴ったのが見えた。唯、偉い! 褒めてつかわす! 後でご褒美上げようっと。今ので、紫御も光志郎も我に返ったみたいだしね。

「いッ!……てぇ~……。おい唯! 何も殴るこたぁねぇだろぉ~……」

 打撃を受けた左頬を撫で擦りながら、聖が涙目で唯を睨みつける。だが、当の本人はそれに怯む事無く、寧ろ聖をギロリ、と睨み返しつつ追撃し始めた。

「ウザイ! 年下のコにそんなイヤらしい視線向けるとか、マジサイテェー!! そんなに飢えてるんだったらぁ、山で猿とでもイチャついて来ればぁ?」
「つぅか、何でオレだけ? 光志郎や紫御だってガン見しているし、美津瑠さんなんかナンパしてんだろッ!!」
「そんなのぉ、あんたが一番キモかったからに決まってるでしょお! 大体ぃ、美津瑠さんはもう手遅れだからぁ、今更何言ったってどうしようもないのぉ!!」
「どういう意味かな唯ちゃん!?」

 思わず、といった様子でツッコミを入れた美津瑠さんの方を、唯がゆっくりと振り返る。すると、不意ににや、と不敵な笑みを浮かべながら楽しげに言った。

「事実じゃないですかぁ。……でもぉ、まだ懲りずにいるんだったらぁ、唯ぃ、ちょっと考えちゃうかもぉ」

 ……今、ちょっと背筋がゾワッとした気がするのは、気のせいかな? うん! きっとそうだ。そうに決まっている! 聖達が震えている? ……気のせいだよ!!  うん!! 
 あと、急な流れ弾を受けるハメになった美津瑠さん、ご愁傷様。これで少しはナンパ癖がマシになれば良いけど。……いやムリだな。きっと。
 というか相田先生、笑い過ぎ。はっはっは、じゃなくて。せめて、唯の代わりに鉄槌下して欲しかったナー。……あ、やっぱり良いや。地獄絵図とか見たくないもの。

「ごめんねぇ、バカでスケベな男ばっかりでぇ。初めましてぇ。あたしぃ、小野寺唯って言いまぁす。よろしくねぇ。でぇ、こっちのどーしようもないバカ共がぁ……」
「あ、……成瀬紫御です。ゴメンね、つい見とれてしまって。今日は、気兼ねせずに楽しんでいってね」
「柳井光志郎です。今のは失態でした大変申し訳ない。まぁ、今日出会ったのは何かの縁だろうし、歓迎するよ」
「……嵯峨聖。悪かったな。あんまり可愛いコだからつい、な。だから、俺としては、華が増えて嬉しいぜ! 何せ、他の奴らが“こんなの”ばっかりだしなー…………」

 それぞれの自己紹介の後、再び聖が唯に殴られて、頬を押さえて蹲る。やっぱり、唯はイイコだ。
 それにしても聖の奴、マジ許すまじ。私達の方を見て“こんなの”だなんて、失礼も良いところだ。まったく、このピチピチギャル(死語)のどこが不満なんだか。

「おぉい。お前ら、少し静かにしろ! 準備も整ったし、そろそろ始めるぞ!!!」

 和やかな空気に、突然大声が乱入して来た。兄の声だ。振り向いて見れば、神楽さんや香澄ちゃんもいる。

「皆さん、どうぞこちらへ。今回は上等なウイスキーが手に入りましたので、ぜひお召し上がりになって」
「おぉ、それは有難い。では、お言葉に甘えさせて頂きましょうか」

 神楽さんの言葉に真っ先に反応したのは、意外にも相田先生だった。後から知ったのだが、先生はウイスキー党らしい。神楽さんはそれに微笑みつつ、続けた。

「もちろん、未成年の方もいらっしゃるという事で。飲めない方の為に、自家製のジンジャエールもご用意したわ」
「あ、そうか。黎名ちゃんも未成年だっけ。今、いくつ?」
「十八歳ですよ」
「若ッ! 年下だろうとは思っていたけれど、やっぱりそうかぁ。何か良いなぁ、初々しくて」

 いつの間にか、私の隣の席に座っていた光志郎は、黎名ちゃんの年齢を聞きながらしみじみと言った。……やっと成人式を終えた身としては、ちょっと悲しくなる。
 と、ややセンチメンタルな気持ちになっていた時、私はある事を思い出した。どうせなら、と思い、黎名ちゃんにそっと耳打ちする。

「……ねぇ黎名ちゃん。さっき、何で比美子に呼び出されたの? カツアゲとか、されなかった?」

 それは、今から三十分くらい前の事だ。確か、黎名ちゃんの部屋で、香澄ちゃんも交えてお喋りしていた時。不意に比美子が訪れた事があった。
 比美子は、黎名ちゃんを呼ぶと、そのまま攫うようにして彼女を連れて行ってしまったのだ。その時、香澄ちゃんは含み笑いを浮かべていたし、戻って来た黎名ちゃんも特に何も言わなかったので、あまりこちらからは口に出来なかったのだけど。
 冗談と本気が半分ずつ混じった私の問いに、黎名ちゃんは一瞬きょとんとした表情を見せた後、やがてくすくすと控え目に笑い出した。え、何ですかそのリアクション。
 思わず、ぽかんとバカみたいに口を開けてしまった私を見て、黎名ちゃんは、笑い声を殺すように、軽く口元を押さえながら言った。

「大丈夫、すぐに判りますよ。それにしても、ここの皆さんは、優しくて素敵な人ばかりですね」
「え? それ、どういう意味?」

 私が詳しい事を聞こうと口を開きかけた、まさにその時、自分のグラスに飲み物を注がれて気がそれた。まったく、今日は色々な事に邪魔されている!
 ふと見渡せば、いつの間にやら全員のグラスに飲み物が満たされていた。 未成年である唯、香澄ちゃん、黎名ちゃんと、下戸の美津瑠さんはジンジャエール。後は全員ウイスキーだ。

「よーし! 全員に飲み物行き渡ったか?」

 さぁ食事だ、という所で急に兄が立ち上がる。自分以外が心得た、とばかりに頷いたのを見て、私はふと、妙な違和感に気付いた。
 まずは、テーブルの上に所狭しと並べられた料理。前にここへ来た時も、神楽さんは私達に素晴らしい料理を振る舞ってくれたが、あの時よりも豪華な気がする。
 続いて、周りの皆の様子。私以外の全員が、一斉に兄に注目していた。まるで、次の言葉を待っているかのような。そんな感じだ。
 展開が読めずに焦って視界を彷徨わせていると、不意に黎名ちゃんと目があった。彼女はこちらに気付くと、声を出さずににっこりと笑いかけた。
 もしかして、この子は判っているの?
 ならば実質、今のこの状況を理解出来ていないのは、私一人という事になる。一体、何が始まるというのか。
 そんな私の心情など意に介さず、目の前の光景は進んで行く。私達が見守る中、兄は軽く咳払いをし、緊張のせいか少し深呼吸をしてから、ゆっくりと口を開いた。

「えーっと、まず、……今日は、忙しい中集まってくれて、本当にありがとう。全員がそれぞれの道に進んでから、五年という歳月が経った。それでもなお、皆が変わらず、元気でいてくれた事は、大変喜ばしい事だと思う」
「何だ、堅っ苦しいぞ明宣ー!」
「らしくないっすよー!」
「明宣さぁん、頑張ってぇ!」
「ちゃんと決めろよー!」
うっせぇ!!! お前ら全員黙れ!!!」

 美津瑠さん、聖、唯、将泰さんがそれぞれ茶化すように野次を入れ、それに嫌気が差したらしい兄が吠えた。何やっているんだか、もう……。
 しかし、これでは埒が明かないと思ったらしく、コホンと軽く咳払いをしてから、先程の畏まった口調を辞め、いつも通りに話し始めた。

「……まぁ何だ。こういうのはあんまり慣れてねぇもんでな。手短に行く事にするわ。繰り返すが、今日は集まってくれてありがとう。ぶっちゃけ、ここまでスムーズに全員が集まれるとは思っていなかった。黎名ちゃんも、俺らに付き合ってくれてありがとう。初対面の奴らばかりで、気まずいだろうにな」

 その言葉を受けて、黎名ちゃんは兄の方を向いて、軽く微笑んだ。やはり、彼女は知っていたのだ。兄はそれに笑顔で返すと、晴れやかにこう告げた。

「まず、単刀直入に言おう。……朱華、処女作映画化おめでとう」
「…………え?」

 突然、予想だにしなかった事を言われて、私は言葉に詰まった。その反応に気を良くしたのか、兄はしたり顔でこちらを見ながら続ける。
 
「おめでたい事だよな。お前の小説が、ついに世間に認められたのかと思うと、俺は嬉しくて仕方ないよ。ここまで来るのに、お前がどれだけ頑張っていたか、判っているつもりだ。だから、計画したんだ。皆が霧隠荘に集まる日に、お前を祝うパーティを開く事をな」
「え? ……それじゃ、この豪華なメニューや、皆が何か隠しているような素振りをしていたのは、……私の、為?」

 呆然とそれだけを口にすると、兄は照れたように笑う。そのまま視線を周囲に走らせれば、柔らかい、穏やかな笑顔の皆がいた。
 ……何だ。そういう事なの。

「何それ。ハブられたと思っていた自分がバカみたい。正直、ちょっと傷付いていたんだからね」
「そんな涙目で言われても説得力無いわよ……あ、痛い痛い。止めて、ゴメンナサイ。……でも、皆、あんたを驚かせたかったんだよ。きっと、喜んでくれると思っていたしさ」

 目の事をからかった比美子の手を思いっ切りつねりながらも、私は嬉しさと安心感でいっぱいだった。こんな幸せな事、本当に起きるなんて思わなかった。
 実は、私は大学生でありながら作家、朱華朱はねずあかねとして活動している。
 正直言って、私は、自分に文才があるとは思っていなかったのだが、ある時、ほんの気紛れで書いた作品“ユダの箱庭”で新人賞を受賞したのだ。
 それから、晴れて小説家の仲間入りをした私は、かつての平凡な日常的が嘘だったかのように、忙しくなった。
 瞬く間に店頭から消えて行く自分の本、時折行われるサイン会、取材に赴く日々。 その目まぐるしく回る世界で、私は非常に充実した毎日を過ごしていた。
 けれど、その後に書いたいくつかの作品達は、それなりに売れても、あまり注目される事は無くて。やはり、華々しくデビューした作家が、二冊目以降ひっそりと消えて行くのは、本当の事らしい。一冊目が傑作だと言われる程、そう言えるだろう。
 どうしても、処女作を越えられない。その焦りと苛立ちが、次回作を書けなくして行く。
 まるで、作家としての限界を突き付けられたようで、ショックだった。それでも、書き続けるしかなかった。だって、私は作家だから。
 そんな折に、作品の映画化の話が来た。
 夢のような話だ。どうやら、あの作品は私が思っていた以上に、愛されているらしい。それを知った時は、嬉しかった。
 だって、こんなにみっともない作家の、受賞作とは言え過去の作品が、未だに注目されているのだから。

「……だから、嬉しくて仕方ないの。ずっとスランプ続きで、納得いく作品が書けなくて、辛かった。このまま一発屋って世間で言われて、忘れ去られるって思っていたの。所詮、最初の作品がまぐれで売れただけの、平凡な作家だ、って。……でもね」

 そこまで言うと、私は俯いていた顔をさっ、と上げる。
 目の前には、私を祝福しようとしてくれた、大切な、大好きな仲間達の姿。皆が、私の次の言葉を待っている。

「皆が、支えてくれた。直接じゃなくても、電話やメールで。特に比美子は、いつだって側にいてくれたよね。些細な事だったけど、それだけで私は頑張って来れた。……だから、皆には、すっごく感謝しているの。それだけでじゃなく、私の為に、こんなパーティを開いてくれてありがとう。私って、愛されているのね」

 そう言いながら、皆に笑いかければ、比美子と唯が駆け寄り、私の肩を優しく叩いてくれた。

なぁに言ってんのよ。当然じゃない。愛してなきゃ、わざわざ時間作ってまでこんな事しないわよ」
「そぉですよぉ。皆ぁ、朱華センパイが大好きだからぁ、お祝いしたかったんですよぉ」

 二人にそう言われた私は、気付いたら彼女らに思い切り抱き付いていた。なんて、優しい奴らなんだろう。そんな私に、更に優しい声がかけられる。

「何、弱気になっていたんだよ。お前はそう簡単に終わるような奴じゃないんだ。自信を持てよ!」

 光志郎が、私を見て呆れたように、肩を竦めながら言う。

「そーそー。ウジウジしているなんて、らしくねぇんだからさ。いっその事、はっちゃけちまえよ」

 聖が、悪ガキみたいな小憎たらしい顔でニカッ、と笑いながら言う。

「朱華ちゃんは、今までずっと頑張って来たじゃんか。それは、俺らが一番理解しているって」

 美津瑠さんが、女子をくどく時のような、キラキラの笑顔で言う。

「積み重ねて来た努力が、無駄になるなんて事はあり得ないんだ。だから、これは当然の結果なんだよ」

 将泰さんが、語りかけるように穏やかな微笑みを称えながら言う。

「朱華ちゃん。あなたは、あなたらしく生きなさい。そのままのあなたが、一番輝いているのよ」

 神楽さんが、男女問わず振り向いてしまうような、魅力的な笑顔を私に向けて言う。

「等々力さん。君は自分を信じて良い。上手く行かない事が続いたとしても、それが活きる時は必ず来るから」

 相田先生が、お馴染みの“相田スマイル”を浮かべて、諭すような口調で言う。

「お姉ちゃん、これからも小説いっぱい書いてね。私、お姉ちゃんの書く小説が大好きなの!」

 香澄ちゃんが、ヒマワリを思わせるような無邪気な笑顔で言う。

「朱華、辛い時はいつでも頼って良いよ。何があっても、僕達は君の味方だからさ」

 そして紫御が、私の大好きな笑顔で、私を安心させるように言った。
 皆が次々と、私に温かい言葉をかけてくれる。それが嬉しくて、私は胸の奥がじぃん、と熱くなるのを感じた。なんて、幸せなんだろう。ヤバイ、また泣いてしまいそうだ。
 ふと、視線を感じて見た先に、微笑ましそうに自分を見る黎名ちゃんがいた。その瞬間、脳裏に先程の彼女の言葉が過る。

 ──大丈夫、すぐに判りますよ。
 ──それにしても、ここの皆さんは、優しくて素敵な方ばかりですね。

 今なら、あの子の言った事が判る。話を聞いていたからこそ、やや不安だった私を慮るような言葉をくれたんだと思う。随分、大人びた子だなぁ。まったく、これじゃ、どっちが大人なんだか判らなくなってしまう。

「さぁ、もう湿っぽいのは終わりだ。ここからは、パァーッと楽しもうじゃねぇか! というわけで全員、グラス持て! 乾杯するぞ!!」

 兄の声を受けて、私を含む全員がグラスを取って立ち上がる。実に壮観だった。準備が整った事を確認した兄が、乾杯の音頭を取る。

「それじゃ、我らが誇りの作家、朱華朱を祝福して、……乾杯!」

 全員での乾杯の音頭の後、パーティが始まった。そこからは凄かった。
 神楽さん自慢の手料理はどれもこれも美味しく、普段するカロリー計算とか全部かなぐり捨てて何度もお代わりしてしまう程だったし、お酒もぐいぐい進んだ。
 途中、余興とか言って、聖と光志郎が始めた漫才は腹が捩れるくらい笑ったし、将泰さんが得意の手品を披露した時は、その鮮やかさに割れんばかりの拍手を送った。
 その他は、どこから調達したのか、美津瑠さんが紫御にパイ投げしたり、突然始まったカラオケ大会で相田先生のあまりの美声に感動したりしたのだが、パーティの中盤くらいから、皆お酒や雰囲気に酔っていて、完全に無法地帯になっていた。かくいう私も、最初にいた席を捨てて、今は適当に空いていた席を使わせて貰っている。
 ふと、斜向はすむかいの席を見ると、いつの間にか移動していたらしい黎名ちゃんが一人で静かにグラスを傾けていたので、突撃しに行く事にする。

黎名れーいなちゃん! 楽しんでるぅ?」

 私は、お酒のせいで上機嫌になったまま、黎名ちゃんに声をかける。一瞬、周りのテンションに付いて行けずに孤立しているのかと焦ったが、彼女の顔に、気まずさは見られなかった。元から、一人でいる事が好きなのかもしれない。
 暫し場の雰囲気を楽しんでいたらしい黎名ちゃんは、私に気が付くと、すぐに笑顔を返してくれた。

「えぇ。とても楽しいですよ。これだけ豪華で賑やかなパーティは、なかなか経験出来ませんし。それに……」
「……それに?」
「……朱華朱の、ファンですから」

 そう言って笑う黎名ちゃんは、得意気だ。そうだ、確か部屋で話していた時にバレたんだっけ。なら、本当に楽しんでくれているのだろう。本当に良かった。

「そっか。……ありがとね。こんな二流作家、見捨てないでいてくれて。凄く嬉しいよ。でも、良かった。…… その、……いきなりこんな騒がしい所に放り込む形になっちゃって、悪かったかなぁって、ちょっと思っていたからさ……」

 軽く頬を掻きながら、私は、ずっと気にしていた事を口にする。
 例え、今回のパーティの事を知らなかったとは言え、彼女をここに招き入れるよう、神楽さんに頼んだのは私だ。
 他人ばかりの別荘に泊まるだけでなく、こんな身内(しかも私)の為に行われたパーティに、一人で参加するアウェイ感は半端無いと思う。
 少なくとも、私には無理だった。作家として、交流のパーティに参加した時など、最初の頃は何度帰りたくなったか判らない。
 それを数回重ねた後にようやくく慣れた、というのが本当の所だ。今思うと、これも経験の内だったんだ、と言えるけど、当時の私からすれば地獄でしかなかった。
 そういう苦い経験があるからこそ、まだ十八歳の女の子を同じような状況に置いてしまった事に、少々罪悪感を抱いていたわけだ。
 しかし、そんな私の思いに反して、黎名ちゃんは随分余裕そうだ。それどころか、先程と同じような微笑を湛えている。

「お気になさらず。私、メンタル面はそれなりに強いですから。寧ろ、お礼を言わなくては」
「お礼? 何で?」
「朱華さんがここに招いてくれたからこそ、私は皆さんのような、素敵な人達に会えましたから。泊めて頂けるだけでも有難いのに、こんな素敵なパーティにご招待頂き、ありがとうございました」

  そう言って、黎名ちゃんはぺこりと頭を下げる。慌て顔を上げるよう言うと、彼女は穏やかな笑みを向けて来た。私も、それに返すように笑いかける。

「こちらこそ、ありがとう。初めまして、なのに祝ってくれて。私、あなたに会えて良かったと思っているよ」
「私もです。……あなた方に会えて、本当に良かった」
「ふふ、嬉しい。なら、思いっ切り楽しまないとね!それじゃ、今日の出逢いに、乾杯!!」

 そう言って、二人で改めてグラスをぶつける。パーティの喧騒の中、静かに響く小気味良い音に気分を昂らせながら、私は幸せを噛みしめていた。
 ああ、今日はなんて最高な日なのだろう。今、この瞬間、私は、世界一の幸せ者に違いない。
 この幸せがずっと、ずうっと続けば良いのに……。



「ふぅ~! たっのしかった~! ひっさびさに飲み過ぎちゃったよ~!!」
「……大丈夫ですか? 足元フラついてません?」
「へーきへーき! 私、結構強いからさ! ぜーんぜん問題無いよ! マジで!!」

 無事にパーティがお開きになった後、私は黎名ちゃんと一緒に廊下を歩いていた。
 思っていたより飲んでいたのか、身体は熱いし、何だか頭がふわふわする。そのせいか、今のテンションは異様に高かった。どうしよう、今、めっちゃ叫びたい気分。

「ねぇ、今ここでシャウトしたら、地球の裏側まで届くかな? どう思う?」
「…………やっぱり、お水貰って来ましょうね。朱華さん、ご自分のお部屋で待ってて下さい」
「アレ!? 何か冷たくない?」

 不意打ちの黎名ちゃんの口撃に、私は酔いが冷めた気がした。いや、確かにバカな事言ったかも知れないけど、まさか年下の子に詰られる日が来るとは。
 しかし、黎名ちゃんの塩対応はこれで終わらなかった。

「いいから、酔っ払いはさっさと水飲んでとっとと寝て下さい。明日、辛いのは自分ですよ」
「ヤダ辛辣! 良い子だった黎名ちゃんは、どこに行っちゃったの!?  朱華泣いちゃうよ!?」
「どうぞ、遠慮無く」
「解せぬぅぅぅぅぅ~~~!!」

 更なる黎名ちゃんの追撃に、私のガラスのハートはビッキビキにヒビ割れた。もう止めて、私のライフはゼロよ。

「あ、いたいた! 朱華お姉ちゃーん! 黎名さーん! 探したんだよー!!」
「おや、香澄ちゃん」

 悲しみに泣き濡れる私と、涼しい顔の黎名ちゃんの元に、香澄ちゃんが駆けて来た。どうやら、私達に用があるらしい。

「ごめんねー。食堂出てからずっと、黎名ちゃんと話していたから気付かなかったの。何かご用?」
「うん! あのね、これから皆で人狼ゲームするの。良かったらお姉ちゃん達も一緒にやろー!」
「え、……今から? というか人狼ゲームって、人いないと出来ないよね? 皆って何人でやるの?」
「えっと、唯さんに、聖さんに、紫御さん、それに私。後は、二人が入ってくれるなら、六人になるかな。比美子さんと光志郎さんは、ベロベロでヤバそうだったから止めたの。で、明宣お兄ちゃん達三人と、神楽さんと相田先生は、飲み直すってさ」

 成程。納得出来るメンツだ。比美子はお酒にそこそこ強いけれど、その場の雰囲気にノッてガバガバ飲んで、翌日潰れるタイプだし。光志郎は、聞いたところによると、コップ一杯のビールで酔えるほど弱いらしい。現に、さっきもウイスキー一杯で顔が真っ赤になっていたっけ。
 大人組が飲み直すっていうのも、まぁ予想の範疇だ。あの人達は、揃いも揃って酒豪だし。特に、神楽さんはザルだと聞いた事があった。……というか、あれ?

「……美津瑠さん、下戸だよね? 何であの大酒飲み達に付き合うんだろう?」
「大人同士で話したい事があるんだってさ。未成年者を退ける為の、都合の良い言葉だよねー………」
「あぁ……。察した」

 要するに『ガキはお呼びじゃねぇ』ってところか。その言い方ならば、二十歳の私は一応OKって事になりそうだが、おそらく、仲間入りは望めないだろう。

「……それはそうと、六人で人狼ゲームって、厳しくない? すぐ終わっちゃうと思うよ」
「あ、そこはワンナイト人狼にするから大丈夫。だから、二人もやろう!」

 それ、結局終わるの早いよね? まさか、深夜に何周も遊ぶつもりなの? そうまでして人狼ゲームしたいの?
 と、頭の中で疑問が渦巻くが、当の香澄ちゃんはニコニコ顔だ。そうか、そんなに皆で人狼ゲームしたいのか。楽しそうだなぁ、とのんびり思う。
 そんな私を余所に、黎名ちゃんが不安そうな声を漏らした。

「……私、人狼って初めてなんですけど、上手く出来るでしょうか………?」
「大丈夫! 私がルール教えてあげるから! だからやろう! 皆、私の部屋で待っているからさ!」

 そう言われて腕を引かれては、無下には出来ないし、何より断る理由が無い。私は勝負に乗る事にした。今思えば、お酒のせいで気が大きくなっていたのだろう。

「よっしゃ! いっちょ勝負決めたるわ~! 行くよ香澄ちゃん、黎名ちゃん。私の実力見せたげる!!」
「イェ~イ! そう来なくっちゃ! 流石さっすが朱華お姉ちゃん!! 私、一生付いて行くからねッ!!!」
「ふはははは! おいでなさい可愛い子! 私が勝利を掴む瞬間に立ち会わせてあげるわ!!」

 香澄ちゃんに腕を引かれて部屋に向かう間、ついテンションが振り切れた私は、香澄ちゃんと二人楽しく叫びながらスキップで移動した。
 ちなみに、黎名ちゃんの「……これだから酔っ払いは」という呟きは、聞こえないフリをする事にした。
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