君だけがいればいい

akimaar

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3話

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最後のメンテナンスが終わり、勇人が病院を出ると、この日に病院の前で待ち構えていたのは大量の記者とカメラだった。
「一言ください!」
「勝手に機械の体にされたことについてどう思われていますか?」
「半永久的な体をもってどんな気分ですか?」
「退院おめでとうございます!未菜さんに一言!」

勇人は戸惑うが案内された車に乗ってその場を離れた。
「未菜にはしばらく会えそうもないなぁ…。」
未菜に落ち着いたら会いたいというメールを送り、マスコミから逃げ続ける日々が始まった。

 世界で初めてのアンドロイドに誰もの興味が向くのは必然であり、彼女を身を持って守った英雄として勇人は世間に知られていた。

 不運なことに勇人はかっこよかった。
彼はみんなが大好きな悲劇の主人公を務めるのにちょうど良かった。

 勇人にはたくさんのテレビ出演の依頼が来て、さらには勇人と未菜の恋愛をドラマにしようとするオファーもあったが勇人は全て断った。

 外出する度にカメラに追われ、家の周りにも常に人がいて、知らない人に勝手に写真を取られる。そんな日々が続いた。
住居を転々としても何故かすぐに居場所が知られていた。

未菜と連絡が取れなければダメになっていたかもしれない。

 だが見た目は何も人間と変わらないし、全くカメラにも見向きもしない。
そんな勇人に世間は興味をなくしていった。

 半年程であろうか。
ある芸能人のゴシップが大々的に報道されたあと全くと言っていいほどマスコミはいなくなった。

 半年ぶりに未菜に会うと自然と涙がでてきた。
未菜を抱きしめながら耳元で囁く。
「俺は絶対未菜を幸せにするから。」
未菜は返事の代わりに強く勇人を抱きしめた。

「幸せになろうね。」
未菜は勇人の顔を見て言った。

 だが、次に勇人と未菜に降り注いだのは偏見と興味の目だった。










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