君だけがいればいい

akimaar

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2話

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「はやと。」
未菜は眠っている勇人の手を握り彼の名前を呼ぶ。彼のおかげで未菜は少し擦りむいただけだった。

彼が事故にあって3ヶ月がすぎた。ほとんど毎日未菜は勇人のお見舞いに来ている。あとは勇人の目が覚めるのを待つだけだ。

ただ寝ているだけに見える勇人の頭を撫でる。

「はやと。早く起きてよ…。」
未菜は勇人に呼びかける。少し手を握り返してくれた気がした。彼の顔に手を当てる。

「眠り姫だね。キスで目覚めたらいいのに。」
未菜はそう呟いて少し涙を流した。

「…かないで。」

顔をあげると勇人が起き上がろうとしていた。
だけど思うように力が入らないのか起き上がることは出来なかった。

「無理しないで。」
未菜は勇人を抱きしめる。そして急いでナースコールを押した。

駆けつけた医者から勇人は自分の体のことを知る。

「あなたは幸運だ。」

少し興奮している医者は勇人はアンドロイドになったことを告げた。

「つまり、あなたは半永久的に生きられる最初の人間なのです。お風呂も食事も必要ない。数十年後にはあなたのような人がたくさんいるに違いありません。あなたのような人を担当出来て私も幸せです。」

手の甲にバーコードが印字されてるのを眺めながら勇人は医者にお礼を言う。

「ありがとうございます。出来るだけ早く退院したいです。」

目が覚めてから1ヶ月毎日未菜は来てくれた。きついリハビリも全部が彼女のおかげで頑張れた。
ある日、勇人がずっと閉まっている自分の部屋のカーテンを開けようとしたら未菜にとめられた。

「外にはマスコミがいっぱいいる。絶対に開けたらダメだよ。」

「分かった。未菜も無理せずにね。」
勇人は未菜を抱きしめた。

見舞い客を装ってはやとと接触しようとした記者がいたのをきっかけに、勇人は見舞い厳禁になった。

だけど未菜と勇人は毎日携帯で連絡が取れた。

毎日毎日励ましてくれる未菜を勇人はさらに好きになった。

 慣れてしまえば機械の体も使い勝手が良かった。味は感じないが、食事はとれるし、体温は分からないけど元々の手のように動かすことが出来る。それに未菜に愛を囁く声も何も前と変わらない。
機械の体に十分に慣れた頃、勇人は退院した。












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