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16日目(ドレス)

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 彼女の名はラフィ。
 今夜の舞踏会に着ていくドレスを選ぶため、彼女は屋敷の衣裳部屋にいた。


「う~ん、迷いますね。普段ならこちらの白い方を選ぶところですが、たまにはこちらの大人っぽい青もいいかもしれません。誰かのアドバイスが欲しいところですが……」

「――呼びましたか?」

 シャアッ。


「あなたは……」
「どうも、僕です」

 そう言って、男は試着室のカーテンを開けながらニコリとほほ笑んだ。


「あなたは本当に神出鬼没ですね」
「ありがとうございます」
「褒めてません。私が裸だったらどうするつもりだったのですか?」
「全力で興奮します」
「帰りなさい」
「そうですか。しから――」
「あ、ちょっと待ちなさい」
「はい?」
「あなただったらこの2着のドレス、どちらがいいと思いますか?」
「僕が決めていいのですか?」
「あくまで参考程度です」
「なるほど。承知しました」

 穴の開くほどドレスを見つめる男。その表情は真剣そのものだった。

「では……青い方で」
「その心は?」
「セクシーだからです」
「……悩んだ挙句それですか。全然参考にならない意見をどうもありがとう。お引き取りを」
「そうですか。しからば」

 シュバッ。




「ごきげんよう姫様、今日のドレスもとてもよく似合っておりますね」
「ありがとう」
「でも、姫様にしては珍しいタイプのドレスですね」
「あら、そうですか?」


「…………まあ、ほんの気まぐれです///」
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