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19日目(雨)

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 彼女の名はラフィ。
 この日は朝から雨がザーザー振りだった。


「ひどい雨ですね。菜園の野菜たちは大丈夫でしょうか?」

「――急でしたからね。ご心配お察しします」

 ピチャピチャ。


「あなたは……」
「どうも、僕です」

 そう言って、男は全身から水を滴らせながらニコリとほほ笑んだ。


「心配は心配ですが、どちらかと言うと今はあなたの方が心配です」
「え」
「え、じゃありません。ずぶ濡れじゃないですか」
「水も滴るイイ男、ですね」
「滴り過ぎです。とにかく服を脱いでください。風邪をひいてしまいます」
「はい」

 ヌギヌギ。

「きゃあ! いきなり脱がないでください!」
「今脱げと……」
「私の視界に入らないところでです! まったく。そもそもこんな雨の日にまでわざわざ来なくとも」
「そういうわけにはいきません。やるべきことがありましたので」
「そんなに私を落としたいのですか?」
「はい!」
「すさまじく素直な返事ですね……」
「あ、ちょうど雨が止みましたね。それでは失礼します。着替えは明日また返しに来ます」
「やっぱり明日も来るのですね」
「当然です。しからば」

 シュバッ。


「はぁ、あの人の存在が嵐みたいですね……。さて、私もちょっと菜園の様子でも見てきましょうか」


 ◇◇◇


「これは……」

 菜園に着くと、そこには身に覚えのない屋根ができていた。
 見たところ突貫工事。だが、おかげで雨風をしのぐことができ、野菜たちは無傷だった。

「いったい誰が……」



「…………なんて、考えるまでもありませんね///」
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