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あさ、手をつないでいたおじいさんがぼくを見おろしていた。
まっ赤なようふくをきて、口に白いひげをはやしたおじいさんは、 ぼくの前まで来ると、目を合わせるようにしゃがんで、かおをのぞいてくる。
そして いっしょにもってきた大きなふくろをゴソゴソあさり、かみきれをさしだす。
「ぽくに?」たずねると
「おかあさんからだよ」にっこりほほえむ。
「会わせてあげることはできないけど、かわりにおてがみをかいてもらったんだ。
ちゃんと、きみにもよめるように、おかあさん、やさしい文字で書いてくれてるよ」 そう言って、あたまをひとなでした。
「かあさん…」 ぼくは、それをみつめたまま、しばらく かたまっていた。
それはうすもも色の、ほのかにやわらかい紙で…まちがいなく
「おかあさんっ!」
ひつたくるようにしておじいさんからうばい、つよくむねにおしあてる。
おじいさんは、もう一どぼくをなでると「なんてかいてあるか、見てみてごらん」やさしくうながした。
ぼくは、おそるおそるそれをひらく。
【だいすきなさくへ。
いつも、たくさんがんばっていて すごいね。
すごくえらいと思うけど、さくが、ガマンしすぎてこわれちゃわないか?
おかあさんは少ししんぱいです。
なきたいときはちゃんと泣いて、 もっとわがまま言っても、だいじょうぶだよ。
さくが、わらってるとき、泣いてるとき、いつでもみまもってるからね。
ざんねんながら、さくからは見えないみたいだけど。
おかあさんは、いつもだーいすきな さく のそばにいるからね。
これだけは、わすれないで。
さく をたいすきなおかあさんより】
「かあさんっ!!」
よみおえたとたん、ぼくはふたたび、てがみをつよくだきしめた。
りょう方の目から、つぎつぎになみだがあふれだし、ぼくの服を冷たいものへと、かえてゆく。
おじいさんは、ぼくのそんなすがたをただ、にこにこと見つめていた。
++++++++++++++
やがてぼくは、ブルリッと さむくて目をさます。
さりげなく あたりに目をやり、 そしておどろく。
あいちゃんのいえで、ねていたはずなのに、ぼくは 森の中にいた。
あたまの上には、まえにねむってたときと同じように、ポカポカがおのお日さまがいた。 かわらないニコニコかおで、ぼくを見おろしている。
よりかかっていた大きな石も、おだやかな風さんも みんなみんな、あいちゃんと知りあうまえと、同じ。
「今までのことって…ゆめ?」
あいちゃんや やさしかったあいちゃんのお父さんお母さん、白いおひげのおじいさん。
そして何より
「かあさんっ!!」ぼくは、さけんぶ。
同時にながれてきた なみだのツブをぬぐおうと、うでをあげる。
…カサッ…。
その時、かすかな音がした。
耳をすませると、それは、ふくのあいだからきこえてくるようで。
ふしぎに思いいつつ、ふれてみると…..。
ソレは、 きれいにおりたたまれた紙きれ。
『なんだ?これ』ひらいたぼくは。
ぜっくした。
それは…【母さんのてがみ】だったから。
「ゆめ…じゃなかった!?」
ぼうぜんと立ちつくす。
その時、どこかとおくのほつからおじいさんの声がきこえた気がした。
「メリークリスマス!!」
おしまい
まっ赤なようふくをきて、口に白いひげをはやしたおじいさんは、 ぼくの前まで来ると、目を合わせるようにしゃがんで、かおをのぞいてくる。
そして いっしょにもってきた大きなふくろをゴソゴソあさり、かみきれをさしだす。
「ぽくに?」たずねると
「おかあさんからだよ」にっこりほほえむ。
「会わせてあげることはできないけど、かわりにおてがみをかいてもらったんだ。
ちゃんと、きみにもよめるように、おかあさん、やさしい文字で書いてくれてるよ」 そう言って、あたまをひとなでした。
「かあさん…」 ぼくは、それをみつめたまま、しばらく かたまっていた。
それはうすもも色の、ほのかにやわらかい紙で…まちがいなく
「おかあさんっ!」
ひつたくるようにしておじいさんからうばい、つよくむねにおしあてる。
おじいさんは、もう一どぼくをなでると「なんてかいてあるか、見てみてごらん」やさしくうながした。
ぼくは、おそるおそるそれをひらく。
【だいすきなさくへ。
いつも、たくさんがんばっていて すごいね。
すごくえらいと思うけど、さくが、ガマンしすぎてこわれちゃわないか?
おかあさんは少ししんぱいです。
なきたいときはちゃんと泣いて、 もっとわがまま言っても、だいじょうぶだよ。
さくが、わらってるとき、泣いてるとき、いつでもみまもってるからね。
ざんねんながら、さくからは見えないみたいだけど。
おかあさんは、いつもだーいすきな さく のそばにいるからね。
これだけは、わすれないで。
さく をたいすきなおかあさんより】
「かあさんっ!!」
よみおえたとたん、ぼくはふたたび、てがみをつよくだきしめた。
りょう方の目から、つぎつぎになみだがあふれだし、ぼくの服を冷たいものへと、かえてゆく。
おじいさんは、ぼくのそんなすがたをただ、にこにこと見つめていた。
++++++++++++++
やがてぼくは、ブルリッと さむくて目をさます。
さりげなく あたりに目をやり、 そしておどろく。
あいちゃんのいえで、ねていたはずなのに、ぼくは 森の中にいた。
あたまの上には、まえにねむってたときと同じように、ポカポカがおのお日さまがいた。 かわらないニコニコかおで、ぼくを見おろしている。
よりかかっていた大きな石も、おだやかな風さんも みんなみんな、あいちゃんと知りあうまえと、同じ。
「今までのことって…ゆめ?」
あいちゃんや やさしかったあいちゃんのお父さんお母さん、白いおひげのおじいさん。
そして何より
「かあさんっ!!」ぼくは、さけんぶ。
同時にながれてきた なみだのツブをぬぐおうと、うでをあげる。
…カサッ…。
その時、かすかな音がした。
耳をすませると、それは、ふくのあいだからきこえてくるようで。
ふしぎに思いいつつ、ふれてみると…..。
ソレは、 きれいにおりたたまれた紙きれ。
『なんだ?これ』ひらいたぼくは。
ぜっくした。
それは…【母さんのてがみ】だったから。
「ゆめ…じゃなかった!?」
ぼうぜんと立ちつくす。
その時、どこかとおくのほつからおじいさんの声がきこえた気がした。
「メリークリスマス!!」
おしまい
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