りっぱなおねえさんになるために

hanahui2021.6.1

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「さっきは、ありがとうペン。やっとゆうきが出せてよかったペンね」
いきなり、ペンギンがはなしかけてきました。
さいしょはおどろきましたが、やがて、そのくうきのやわらかさにいつのまにか
きんちょうはきえ、こわがらずに口をひらくことが出来ました。 

「あなたは、おばあさんなの?」
きいたことりに

「そう、ばけていたペン。きみと、はなすためにしかたなかったペン」
しかたないと言いながら、ペンギンは、ぱけていたことをちっともをわるいとおもってないようです。
「わたし、すごくビックリしたんだからね!!」
ことりは、すこしおこったフリをして ほおをプーッとふくらませ、そっぽをむきました。
これにはちょっとあせったのか?
ペンギンは、はねをパタパタさせ、クルリとことりのまわりをいっしゅうすると、
「ごめん、ゴメン…わるかったペン」

その手(はね)?でことりのほっぺたをスリスリとなでてきました。

ことりは、なでられながら、
『へんなペンギン…』
あらためてペンギンを、かんさつしていました。
だってありえない!?
ふつうは【くろ】のはねが、【赤】って!!
しかも、そのはねはつかわず、せなかにべつのはねをつけていて、そのはねでパタパタと とびまわっているのです。
ねぇ、おかしいでしょう!?

ことりは、こんらんしているようです。

もうすこし、かんさつしていたかったのに、げんかいのようです。
さきほどから、こすられつづけていたほっぺたが、くすぐったくて、ひめいをあげています。
「もう、いいよ」
ことりは、クスリ…とわらい ゆるしてあけました。

「わたしは、ことり。あなたのお名前は?」 

なかなおりのかわりに、名前をおしえてあげました。

「ぼくは、サラダだペン。ことりに大切なことをおしえるためにきたんだペン。
じつはこのへやも、ぼくが作っているペン」
言われてはじめて まわりを見わたしました。
たしかに、このくうかんはヘンです。
クルマも人も、ぜんぜんとおらないのです。
ふつうは、ありえません。

ことりが見おえると、
「どぉ、すごいでしょう!」
『えっへん!ほめていいんだよ』と
ばかりに、むねをはってきます。 

「スゴいねぇ…」
おざなりにあいづちをうち
「ところで、大切なはなしって、なに?」
さりげなく、ほんだいにみちびく。
それは、すこし気に入らなかったのか、わずかにふまんそうなたいどをみせたものの、すぐに【ほんらいのもくてき】をおもいだしたようで、それをとりやめる。
「ものごとはくりかえすんだペン。いいことも、わるいことも。
じふんでやったことは、かならず、じぶんにかえってくるペン。かたちはじゃっかん、かわっていたとしても、わるいことをしたら、なにかをなくしたり、ころんじゃったり、わるいことがおこるペン。
ぎゃくに、さっきみたいにお年よりをたすけると、いいことがおこるはずなんだけど…」 

そこで、わたしを見かえし
「おかしいな?…ころんじゃってるね?どろんこだペン」
ふしぎそうになんども、首をかしげるサラダ。
そんなサラダに、ことりはいえにいたときのことをはなしてあげました。
ことりがやらかしたあくじを。

「わたしには、おとうとかをいるの。
まだ生まれたばかりの赤ちゃんで 手なんかも、ぜんぜんおもうように
うごかせないんだけど…。いじわるして、いつもつかってるおしゃぶりを、ととかないところにおいちゃったの」
「それって、ふとんのそと?」
わたしのこくはくに、いきおいこんできいてくるサラダ。
「ううん。ベットの中だよ」 

「はぁーーーっ」
そのへんじに、あんしんしたのか、一つ長いためいきをついた。
「なら だいじょうぶだペン。きっともう、おかあさんが見つけてるペン」
ひとだんらくついたとばかりに、ふたたび、わたしにしせんをむけると
「なっとくしたペン」
大きくうなづいた。
「それって、もしかして、いえを出るすんぜんにやらかしたペンか?」
かくにんをとる。 

「そう…だけど。どうーしてわかるの?」
こんどは、わたしのあたまの中が、はてなマークでうめつくされる。
たずねかえしたわたしに、コホンと一つ せきばらいしたサラダは
「いいかね…」と、エラそーことばをつづけた。
「さっきもいったように【できごとは、くりかえす】んだペン。
むずかしいことばで【いんがおうほう】とか【じごうじとく】っていうペン。
おとうとにしたこういで、きみは【わるい子はんてい】されてしまったペン。
だから、おばあさんをたすけるというよいことをしたのに、ころんでしまうというわるいことがおこったペン」
じぶんのせつめいによいしれ、
うん。うん。と、なんどもうなづく
サラダ。 

「ころんだんじゃないよ。これはトラックに水をかけられたの」

ちょうしにのってるサラダを、ギャフンといわせたくて、はんろんするけど
「どっちにしても、わるいことにはかわらないペン。
それより【おとうとにいじわるする】なんてつまらないことく、なんでしたんだペン?
もしかして、おとうとに【やきもち】やいたペン?
おかあさん、とられたような気がして、さみしかったペンか?」
みごと、ずぼしをいいあてられ
「…そう…かも…」
はずかしくて…
ことりのこえは、いまにもきえてしまいそうだった。
「おかあさん、いつも、おとうとのことばかり見てる。生まれたときから、ずっと…」 

「おとうと…生まれる前は、いつもことりといてくれたのに…グスッ
ことり、きらわれちゃったのかな?…
グスグスン………おかーズッ…さんに!…」

がまんできなくて、とちゅうからないちゃったけど、いっしょうけんめいにはなした。
そんなわたしのあたまを、よしよしとなでながらサラダは言う。
「よくがんばったペン。ことりは、えらいペン」
じゅもんのように くりかえしながら、あたまをなでつづける。

すこしたち…
わたしがおちつくのを、まっていた
サラダが、口をひらいた。
「ことりは、おかあさんにきらわれてないペン。それどころか、すごくたよりにされ
てるペンよ。しんじられないペンか?そういうかお、してるペン」

サラダはそう言うと、むごんで かいものぶくろをゆびさした。
「それが、しょうこだペン。おかあさんにたのまれたんじゃないのか?【かいものしてきてほしい】ペンって」

言われたとおり 手もとにしせんをうつすと、そこには、さきほどかったパンが、ほこらしげにかおを見せていた。 
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