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③ 意外なごほうび
しおりを挟むあたしは、光に誘われ集まる虫たちのように
ひなちゃんの声に反応して、ろうかに おどり出た。
するとーーー
「あっ! さくらちゃん おはようー」
あたしに気づいた ひなちゃんが、ニコニコ顔で近づいてくる。
「おはよう」 あたしも 挨拶を返しながら、急いでかけよると、
「はい、コレ!」
そう言って お弁当箱を あたしに差し出した。
「何これ?」 あたしが尋ねると
「お弁当だよ!
さくらちゃん 知らないのー?」
ひなちゃんは、不思議そうに顔を歪ませ おかしそうに笑った。
「そんなのは知ってるよ!」
「ってか、そうじゃなくって‼」
うまく通じなかったことに もどかしさを感じ、しぜんと 言葉づかいが荒くなる。
「ひなちゃんの あるの?
コレ、ひなちゃんのじゃないの?」
あらたな問いかけに、やっと ひなちゃんも合点したのか
「なんだ。そんなことかー」 のほほんと つぶやくと、
ゆっくり カバンを開き、自分のぶんのお弁当を さししめした。
「ひなのは、ちゃんと ココにあるから大丈夫。
だから、ソレは さくらちゃんのぶんだよ!
【さくらちゃんに 渡して】って、言われたの。
【いつもがんばってる ごほうび】 なんだって、ママ 言ってたよ!」
ニコニコと うれしそうに ほほ笑みながら、
ポン!と、ソレを あたしの手の上に 乗せた。
あたしは、まじまじと ソレを見つめる。
あざやかなピンクのハンカチに包まれたソレは、
とても可愛らしくて、あたしには すごく 不釣り合いに見えた
こうゆう可愛くてキラキラしたものは、 ひなちゃんみたいな 素直で可愛い子に ふさわしい。
あたしみたい つまらない子には。きっと 似合わない‼
ちゃんと 納得してるはずなのに、
凍りついたみたいに 指先ひとつ 動かすことができない。
++++++++++++++
幼稚園で、月一回行われる お弁当の日。
この日は、いつもユ前の日から 心が石みたいに重くて すごく イヤだった。
なんでこんな日 作ったんだろう? って恨んだことも あった。
あらかじめ、持ってこられない子どもには、キチンと 幼稚園の方で用意するっていう対策までしていた。
だから、なんの問題もないはずだって…安心して実行したらしい。
ところが、幸か不幸か さくらの家は、その対象から外れてしまった。
その理由は、近くに住んでるおばあちゃんが作ってくれるということになっていたからである。
しかし ソレが、さくらにとっては 問題の種になっていた。
なぜかというと、あばあちゃんのお弁当は、良く言えば 【シンプル】
幼稚園生のさくらにとっては、すごくーーー【つまらない ワクワクしない】 ものだったから。
ゴマで顔を作った【うずらの卵のヒヨコさん】 や 【お花になったにんじんさん】とか まったく いなくて。
前日の残り物みたいなおかずや お野菜の煮物みたいのばっかり つめこまれてて、全体的に茶色い。
作ってもらえるだけ ありがたいことわかっているから、ワガママ 言っちゃいけないって。
一生懸命 ガマンしてるんだけど…
となりの ひなちゃんのお弁当は、いつも キラキラのキャラ弁で。
それを いいなぁって見てる あたしは、
お弁当の時間だけ ひなちゃんのこと 大キライになってた。
そんな自分は、もっと 大嫌い‼で
なんであたしだけ こんなみじめな思いしなきゃいけないんだろう って、神さまを 恨んでた。。
いっそ、足を バタバタさせて、わめいてみたら、何か変わるのかなー って思ったりもした。
でもね…
いっぱい 悩んだ先に出した 答えは、
あたしに、ママがいないのは、誰のせいでもないんだから…やっぱり ガマンするしかないよね というものだった。
だけど…
あたしが、さんざん悩んだソレを、ひなちゃんはアッサリとひっくり返した。
いともたやすく あたしの願いを叶えてくれた。
なんで? キライになりそうだったのに…
なんで? あたし悪い子なのに…優しくするの?
なんで? ひなちゃんは、簡単に オネダリできるの?
あたしには、がまんすることしか できないのに。
ソレって
やっぱり、悪い子だから?
ガマンが、足りてない証拠なのかな?
++++++++++++++
手にお弁当箱を乗せたまま、固まってしまったあたし。
「さくらちゃん…
ねぇ…どうしたの?」
心配そうに ひなちゃんが、顔を のぞきこんでくる。
その瞳は せわしなく オドオドと ゆれている。
その瞳を見て、ハッ! としたあたしは
「ごめん、ごめん、なんでもないの。
ちょっと うれしくて、泣きそうになちゃった‼」 と言って ごまかす。。
「なんーだ、良かったぁ!
よけいなこと しちゃったのかな?って、
ちょっと 心配しちゃったよー」 と、あっけらかんと 笑顔にもどったひなちゃんは
「あとで 一緒に食べようね!」そう言って、もう一度 笑った。
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