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第十四話 晩餐会

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了がブルーの邸に来たのは昼ごろであった。了の手には手紙が握られており、手紙の内容はアサキシの晩餐会の招待状であった。ブルーはこの手紙を読み、再びアサキシと対面することになった。
アサキシの屋敷の大広間にて、ブルーは、アサキシと了と対面する形で、晩餐会が開かれた。テーブルに並ぶは海の幸ををふんだんに使った料理であった。
アサキシが日本酒に似た酒を飲みながら、ブルーに話しかける。

「やあ吸血鬼君たのしんでいるかね」

「まあなここの料理はうまい。いい腕をしている」

「そうだろうそうだろう」

「アサキシ、お前はなぜ私を呼んだ。」

 その言葉で、一瞬、空気が静まり返った。アサキシは語る。

「特に意味はないよ。君の顔が見たくなっただけさ」

「そうかい」
その言葉を聞いても彼女は納得できかったが、表面上は納得したように見せた。ブルーはアサキシとの会話をやめて、彼女と同席している了に話しかける。
「ところで了はなぜここに」

「アサキシに誘われてね。しかし料理のうまいこと」

そう言って彼女は、がつがつと料理を口に運んでいた。
そんな了の姿を見てブルーは尋ねる。

「了はいつこの世界にやってきたんだ」

その問いかけにアサキシが答える。

「一年前だ。前に話したように、了がエルカードもって悪党を退治したその際に、私と出会った」

(一年前エルカードがあふれ出した年と同じか)

「そうなかのか了」

「ああ、そうだ。そのころ私は感情表現に乏しい女だったよ」

「ふーんお前がねえ」

ブルーはがつがつとおいしそうに料理を食べる了をみて、信じられないといった顔になった。

「今の私があるのはアサキシのおかげなんだよ。いろいろな人に会わせてくれたり、勉学を指導してくれたり。恩があるんだ」

そう語る了の姿はまるで家族を自慢するかのようであった。それを見てブルーは気になったことを尋ねる。
「了。お前に家族はいないのか」

その言葉で、了が動かしていた箸が止まった。

「ああ。天涯孤独なんだよ」

「そもそもここ出身じゃないのか?」

「いやこの世界、で生まれたことは記憶しているよ。それ以外はわかんないけどね。気が付くとエルカードを持っていたんだ」
その言葉にアサキシは了をじろっと眺めたが何も言わなかった。ブルーは了の言葉にそうかいと答えた。

そうこうして三人の夜は更けていった。
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