婚約者に好きな人がいると言われました

みみぢあん

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1話 婚約者の告白

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 婚約者のアップトン男爵家の長男エミール様に、学園の裏庭に呼び出され… 私はとんでもない告白を聞かされた。


「アンリエッタ… 好きな人ができたんだ」

「何ですって?!」
 突然、うちあけられた婚約者の告白に、私は自分の耳が信じられなかった。

「相手は最近、知りあった人なんだ」

「……そ、それで、エミール様は何が言いたいのですか?」
 私と婚約解消をしたいの? …でもフェアエル子爵家と、エミール様が将来引き継ぐアップトン男爵家をむすびつけるための、大切な政略結婚なのに。
 
「好きな人がいるけど、僕は君と結婚するから…」
「は? 私と結婚する? 婚約解消はしないのですか…?」

「僕の一方的な片思いだから… 相手は僕の気持ちを知らないし、言う気もないよ」
 エミール様は私のきげんをうかがうように、チラリッ…と視線をむけてくる。

「それならなぜ、私には、こんな話をするの? 私たちの結婚に必要ないでしょう?」
 自分だけの片思いだと言うのなら、自分の中にとどめておいて欲しかった。

 不誠実で迷惑な婚約者を、私はキッ… とにらみつけた。

「でも婚約者の君にだけは、僕の気持ちを話しておきたくてね……」

「私は聞きたくありませんでした」
 私はずっと、こんな人を好きだったの?!
 9歳の時、初めてエミール様と顔を合わせ… 私は婚約者ができたことが嬉しくて、エミール様が大好きになった。
 はっきり気持ちをたずねたことはないけれど… エミール様も私を好きだと思っていたのに。

 私は運命の女神様に、思いっきりほほをたたかれ… あわい初恋の夢から、目がさめた気がした。


「だって、僕たちの結婚は政略結婚だから、止められないだろう?」
「……」
「だから恋愛と結婚は、わけて考えるべきだと… 君も思っているだろう……?」 

「……」
 こちらが黙っているのに、エミール様はペラペラと話し続ける。 

 普段はどちらかと言うと、不器用で口べたな男性だから… エミール様がこんな軽い口調で話すのは珍しい。
 今まで私はそういうエミール様の不器用さが、可愛くて好きだったのに。

「迷惑をかけたくないから… 僕が思いをよせる相手の名前は、君に言えないけれど。 とても信頼できる令嬢なんだ」
「私は婚約者だから、迷惑をかけても良いの?」
「だ… だからさぁ、アンリエッタ… 僕は……」

 ペラペラと話し続けるエミール様に嫌悪を感じた。

「これ以上、アナタのくだらない言いわけは、聞きたくありません!」
 婚約者の私に、自分が思いをよせる女性の話をするなんて… どこまでエミール様は鈍感で恥じ知らずなの?!





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