君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん

文字の大きさ
6 / 23

5話 自立への道

しおりを挟む


 貧乏男爵家出身でも、学園で学んだ淑女しゅくじょの教養があるマリエルは、子どもたちの家庭教師として、欲しがる貴族や、裕福な商人(平民)はたくさんいると、女性神官たちに教えてもらった。

「あわてて決めたりしないで… どのやとい主のもとで、マリエルさんが働きたいかは、じっくりと考えてから、決めた方が良いですよ?」
「はい、神官長様」
「マリエルさんは働き者で、慈愛じあいにみちた優しい女性だと… 責任をもって私が推薦状すいせんじょうに書きますからね?」
「ふふふっ… ありがとうございます!」


 『絶対に苦労するから』 …と父親やセインに止められ、以前はマリエルも良い就職先があっても、少しだけ躊躇ちゅうちょしていた。
 だが結婚に失敗し、痛い目にあったマリエルは… そんな甘えはすてることにしたのだ。

 マリエルは自分が女神カルミーンの神殿にいることを、手紙を書いてギリスに送った。

「ギリスさんに、少しでも話し合う気があるのなら… 私は始めからやり直す努力を、しようと思ったけれど…」
 1週間すぎたが、ギリスからの連絡はない。
 マリエルをむかえにも来ない。
『自分は考えをあらためる気はないから、嫌なら帰らなくても良い』 …とそれが、ギリスの答えなのだ。

「家を出た私が悪いと… ギリスさんはきっとセイン様にそんな言いわけをして、この結婚がうまくいかなかった理由を、すべて私のせいにしているのでしょうね…?」

 自立する手段を知らなければ、マリエルは何の希望も夢も無い、ギリスとの冷たい結婚生活を始めていただろう。

「セイン様と実家にも… 報告しないと…」
 ああ… きっとセイン様は、私にがっかりするでしょうね…? でも、私はこれ以上間違いを、犯したくはないわ……

 何度も大きなため息を、ハァ―――ッ… とつきながら、マリエルは謝罪の手紙を2通、書いた。





「これは… いったい、どういうことだ?!! 1週間前から、マリエルが神殿にいるだと?! なぜモルダール家ではないんだ?!」
 王立騎士団の本部で、マリエルの手紙を受け取り、副団長のセイン・ガルフェルト侯爵は、執務しつむ室で怒鳴り声をあげた。

「ど… どうされたのですか、副団長?!」
 セインの近くにいた、部下の1人がギョッ… と目をき、おずおずと怒り狂う上司にたずねた。
 高齢で引退間近の騎士団長よりも、厳しくて怖い副団長、セインの前では、部下の騎士たちはみんなこの調子である。

「ギリスはどこだ―――っ?!」
「ギ… ギリスですか? あいつは確か… 昨夜おきた、伯爵邸の強盗事件の犯人を追って、東部に行っていますが? 2,3日は王都へ戻らないと思います…」
「…チッ! 先にギリスから話を聞きたかったが… 仕方ない! 私は神殿へ行く」
「は… はい、副団長!」


 すばやく剣を剣帯べるとに装着し、足ばやに執務室を出て行くセインの大きな後ろ姿を、ビクビクッ… と部下は見送った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

あなたとの縁を切らせてもらいます

しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。 彼と私はどうなるべきか。 彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。 「あなたとの縁を切らせてください」 あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。 新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。 さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ ) 小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。

【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」 その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。 「了承しました」 ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。 (わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの) そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。 (それに欲しいものは手に入れたわ) 壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。 (愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?) エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。 「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」 類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。 だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。 今後は自分の力で頑張ってもらおう。 ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。 ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。 カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*) 表紙絵は猫絵師さんより(⁠。⁠・⁠ω⁠・⁠。⁠)⁠ノ⁠♡

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~

Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。 「俺はお前を愛することはない!」 初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。 (この家も長くはもたないわね) 貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。 ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。 6話と7話の間が抜けてしまいました… 7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!

捨てられた私は遠くで幸せになります

高坂ナツキ
恋愛
ペルヴィス子爵家の娘であるマリー・ド・ペルヴィスは来る日も来る日もポーションづくりに明け暮れている。 父親であるペルヴィス子爵はマリーの作ったポーションや美容品を王都の貴族に売りつけて大金を稼いでいるからだ。 そんな苦しい生活をしていたマリーは、義家族の企みによって家から追い出されることに。 本当に家から出られるの? だったら、この機会を逃すわけにはいかない! これは強制的にポーションを作らせられていた少女が、家族から逃げて幸せを探す物語。 8/9~11は7:00と17:00の2回投稿。8/12~26は毎日7:00に投稿。全21話予約投稿済みです。

【完】初夜寸前で「君を愛するつもりはない」と言われました。つもりってなんですか?

迦陵 れん
恋愛
侯爵家跡取りのクロディーヌと、公爵家三男のアストルは政略結婚といえども、幸せな結婚をした。 婚約者時代から日々お互いを想い合い、記念日にはプレゼントを交換し合って──。 なのに、記念すべき結婚初夜で、晴れて夫となったアストルが口にしたのは「君を愛するつもりはない」という言葉。 何故? どうして? クロディーヌは混乱に陥るも、アストルの真意は掴めない。 一方で、巷の恋愛小説ばりの言葉を放ったアストルも、悶々とした気持ちを抱えていて──。 政略で結ばれた婚約でありながら奇跡的に両想いとなった二人が、幸せの絶頂である筈の結婚を機に仲違い。 周囲に翻弄されつつ、徐々に信頼を取り戻していくお話です。 元鞘が嫌いな方はごめんなさい。いろんなパターンで思い付くままに書いてます。 楽しんでもらえたら嬉しいです。    

逆行令嬢の反撃~これから妹達に陥れられると知っているので、安全な自分の部屋に籠りつつ逆行前のお返しを行います~

柚木ゆず
恋愛
 妹ソフィ―、継母アンナ、婚約者シリルの3人に陥れられ、極刑を宣告されてしまった子爵家令嬢・セリア。  そんな彼女は執行前夜泣き疲れて眠り、次の日起きると――そこは、牢屋ではなく自分の部屋。セリアは3人の罠にはまってしまうその日に、戻っていたのでした。  こんな人達の思い通りにはさせないし、許せない。  逆行して3人の本心と企みを知っているセリアは、反撃を決意。そうとは知らない妹たち3人は、セリアに翻弄されてゆくことになるのでした――。 ※体調不良の影響で現在感想欄は閉じさせていただいております。 ※こちらは3年前に投稿させていただいたお話の改稿版(文章をすべて書き直し、ストーリーの一部を変更したもの)となっております。  1月29日追加。後日ざまぁの部分にストーリーを追加させていただきます。

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

処理中です...