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7話 セインの事情 セインside
王立騎士団の中でも、セイン・ガルフェルト侯爵は…
『人を殺害できる剣を、腰に下げている騎士は、誰よりも自分を厳しく制御しなければならない!』
という考えかたする人物である。
『つねに心は清らかにたもち、自分の欲望を優先することは、騎士の恥だということを知れ!』
…と、部下や同僚の騎士たちにも、厳しく要求した。
その厳しくて禁欲的な考えかたを… セインは結婚してすぐに、妻にも要求した。
「私の妻なら、君も自分に厳しくして欲しい!」
「旦那様、私は騎士ではありませんわ! 私をあなたの部下たちと同じように、あつかうのは止めて下さい!」
そのため… 結婚当初からセインの要求に反発した、ガルフェルト侯爵夫人とのあいだには、ケンカが絶えることがなかった。
セインの妻は、社交シーズンになると毎日、夜おそくまで夜会をまわり、翌日は侯爵夫人の仕事を怠け、昼過ぎまでゆっくりと眠る。
使用人をたくさん雇い入れている、裕福な貴族の婦人ならそれぐらいの贅沢は普通のことだが… ガルフェルト侯爵家では違った。
それらの社交活動をセインは禁じてしまい、妻に禁欲的な生活をおくることを要求した。
「君は騎士の妻になったのだから、人々の模範とならならなければ、ならない! 社交活動は最小限にとどめ、夜遅くまで夜会で遊ぶことを禁じる!」
「何ですって?!」
「君が3日前の夜会で、独身の貴族たちと戯れていたと、私の上司の騎士団長に注意されたぞ?! 私は、あれほど恥ずかしい思いをしたのは、初めてだ!」
私が忙しい騎士の仕事に走りまわっているときに、その裏で妻が愛人と、浮気をしていたなんて…! そのことを知らなかった私は、良い笑いものだ!!
引退間際の高齢な騎士団長でさえ、知っていたのに… 夫のセインだけが、愛人と妻が遊びまわっていることを、知らなかったのだ。
積極的に、セインが社交活動をしていなかったのも、運が悪かった。
「それは… あなたが私を、1人で夜会に参加させるから… 仕方ないからだわ!」
「この社交シーズンが、王立騎士団にとって一番忙しい時期だと、君も知っているだろう?」
社交シーズンは地方から貴族たちが出て来て王都に集まるため、何かと問題が多くでる。
貴族を狙った強盗や、貴族同士のケンカなどで… 殺人事件の件数もいっきに跳ね上がるのだ。
「ああ、もう嫌! これでは、裕福な侯爵家に嫁いだ意味が無いわ!」
「君は恥ずかしくないのか?! 小さな息子に対して、罪悪感も無いのか?!」
「跡取りを1人産んだのだから、じゅうぶん妻の仕事ははたしたはずよ?! セイン、あなたこそ妻の私に対して、夫の仕事をさぼって恥ずかしくはないの?!」
「なんて… 恥知らずなんだ、君は!!」
「私を幸せにできない、あなたが悪いのよ!! あなたなんか地獄に落ちれば良い―――っ!!!」
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だが…
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「旦那様、ガブリエル坊ちゃまが今日も庭で、泣いておられました…」
「泣いていた? …なぜだ?!」
「以前はこのようなことは、無かったのですが… 奥様が去られて、さびしがっておられるのでしょう」
「そうか… あんな母親でも、ガブリエルにとってはたった1人の母親だからな… 困った!」
母親がいなくなり、元気をなくして落ち込んでしまった息子を育てるには… どうすれば良いのやら?
妻と離婚する時は、たいして悩まなかったが… セインは小さな息子ガブリエルのことを思うと、早まったか? と後悔した。
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