君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん

文字の大きさ
18 / 23

17話 結婚生活



 高齢を理由に、王立騎士団の騎士団長が少し前に引退し、予定通り副団長のセイン・ガルフェルト侯爵が、新たな騎士団長へと就任しゅうにんする。
 
 以前よりもますます忙しい日々を、おくるようになっていたセインは… 久しぶりに休みがとれ、ガルフェルト侯爵邸で妻のマリエルと午後のひと時を楽しんでいた。


 裏庭の奥のあずま屋ガセボに作られたテーブルセットでお茶を飲み、ティーカップをカチャッ… と皿の上に置くと、妻のマリエルは夫に話しかけた。

「ねぇセイン? ガブリエルにダンスの先生をつけたいの」

「ダンス?」 
 腕の中で眠る、生まれたばかりの娘ルイーズを、ニヤニヤと笑いながら見ていたセインは、愛妻あいさいに名前を呼ばれて顔をあげる。

「学園へ入学する前に、ダンスを習っておいたほうが、あの子も恥をかかなくてすむでしょう?」
 私がガブリエルに、教えられたら良いのだけれど… 実はあまりダンスは、とくいではないのよねぇ…? 

 マリエルは自分のダンスが、どれだけ下手かを思い出して、苦笑いを浮かべた。
 
「ダンスの教師をやとうのはかまわないが… 学園でも習うだろう?」
 セインは学園でダンスをおぼえた。

「確かにそうですけど… 私の弟たちが、ダンスを上手くおぼえられなくて、とても苦労しているから…」

 マリエルの双子の弟たちは現在16歳になり、セインの息子ガブリエルは13歳になる。

「ふむ…」

「完ぺきではなくても、少しだけなれておけば、ガブリエルが学園の講義で、ダンスを嫌いにならなくて、すむのではないかしら?」
 私の夫は正しく説明して頼めば、私のお願いをかなえてくれる、優しい人だから… きっと、わかってくれるはずだわ?

 マリエルは立ちあがり、向かいがわの席に座るセインの横に移動して… 甘えるように、娘を抱く夫の唇にキスをした。

「弟たちは最初の講義でつまずいて… ダンス自体に苦手意識を持ってしまったの… ね? お願い… 良いでしょう、旦那だんな様?」
 ニコリッ… と笑い、マリエルはもう一度、セインの唇にキスをした。

「マリエルは本当に、気がきくなぁ?」
「ふふふ… ダンスの先生をさがしても良い?」
「良いよ! 君の息子になれたガブリエルは幸せだよ!」
「それは、私がステキな旦那様の、妻になれたからですわ…?」
 
「ああ、頼むから… 旦那様などと、私を呼ばないでくれ、マリエル!」
 きげんが良かったセインが、急に顔をしかめた。

「ふふふ… わかったわセイン!」
 もう、セイン… ったら! 私が“旦那だんな様”と呼ぶと… 私との年齢差を感じると言って、すぐにねてしまうのよね…?! ふふふっ… 
 いつまでも恋人のように、名前を呼んで欲しいだなんて!  本当に… 私の夫セインは、なんて可愛い男性かしら?! 大好き!!
 
 急にきげんが悪くなった、可愛い夫の唇に… マリエルはもう一度、愛情をこめてキスをした。



「失礼します、旦那様… 騎士のギリス・モルダール様がおみえです」
 侯爵家の執事があらわれ、丁寧ていねいに客の来訪らいほうを伝えた。
(さすがに自分よりも年上の執事に“旦那様”と呼ばれても、セインはねたりしない)


「…ギリス・モルダールだって?!」

「・・・っ?!」
 なぜ、あの人が侯爵邸へ?! 王立騎士団を辞めたから、2度と会うことはないと、ホッ… としていたのに…?!

 ビクッ… とマリエルは、身体を強張らせる。
 妻の動揺どうようを感じ取った夫のセインは、眉間みけんに深いしわを寄せた。


「旦那様、おことわりしますか?」
 来訪者らいほうしゃの名前を聞き、不快そうな表情を浮かべた侯爵夫妻に、有能な執事は、『会わずに追い返しますか?』 …と先に提案する。


「ああ、頼む! 今日は休日だから、私に会いたければ、王立騎士団の執務しつむ室へ来いと伝えてくれ」





あなたにおすすめの小説

【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」 その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。 「了承しました」 ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。 (わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの) そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。 (それに欲しいものは手に入れたわ) 壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。 (愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?) エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。 「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」 類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。 だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。 今後は自分の力で頑張ってもらおう。 ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。 ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。 カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*) 表紙絵は猫絵師さんより(⁠。⁠・⁠ω⁠・⁠。⁠)⁠ノ⁠♡

【完】初夜寸前で「君を愛するつもりはない」と言われました。つもりってなんですか?

迦陵 れん
恋愛
侯爵家跡取りのクロディーヌと、公爵家三男のアストルは政略結婚といえども、幸せな結婚をした。 婚約者時代から日々お互いを想い合い、記念日にはプレゼントを交換し合って──。 なのに、記念すべき結婚初夜で、晴れて夫となったアストルが口にしたのは「君を愛するつもりはない」という言葉。 何故? どうして? クロディーヌは混乱に陥るも、アストルの真意は掴めない。 一方で、巷の恋愛小説ばりの言葉を放ったアストルも、悶々とした気持ちを抱えていて──。 政略で結ばれた婚約でありながら奇跡的に両想いとなった二人が、幸せの絶頂である筈の結婚を機に仲違い。 周囲に翻弄されつつ、徐々に信頼を取り戻していくお話です。 元鞘が嫌いな方はごめんなさい。いろんなパターンで思い付くままに書いてます。 楽しんでもらえたら嬉しいです。    

困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず
恋愛
「アン! お前の礼儀がなっていないから夜会で恥をかいたじゃないか! そんな女となんて一緒に居られない! この婚約は破棄する!!」 「アン君、婚約の際にわが家が借りた金は全て返す。速やかにこの屋敷から出ていってくれ」  新興貴族である我がフェリルーザ男爵家は『地位』を求め、多額の借金を抱えるハーニエル伯爵家は『財』を目当てとして、各当主の命により長女であるわたしアンと嫡男であるイブライム様は婚約を交わす。そうしてわたしは両家当主の打算により、婚約後すぐハーニエル邸で暮らすようになりました。  わたしの待遇を良くしていれば、フェリルーザ家は喜んでより好条件で支援をしてくれるかもしれない。  こんな理由でわたしは手厚く迎えられましたが、そんな日常はハーニエル家が投資の成功により大金を手にしたことで一変してしまいます。  イブライム様は男爵令嬢如きと婚約したくはなく、当主様は格下貴族と深い関係を築きたくはなかった。それらの理由で様々な暴言や冷遇を受けることとなり、最終的には根も葉もない非を理由として婚約を破棄されることになってしまったのでした。  ですが――。  やがて不意に、とても不思議なことが起きるのでした。 「アンっ、今まで酷いことをしてごめんっ。心から反省しています! これからは仲良く一緒に暮らしていこうねっ!」  わたしをゴミのように扱っていたイブライム様が、涙ながらに謝罪をしてきたのです。  …………あのような真似を平然する人が、突然反省をするはずはありません。  なにか、裏がありますね。

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》  最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。  そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

幼馴染に夢中の夫を捨てた貴婦人は、王太子に熱愛される

Narian
恋愛
アイリスの夫ロイは、新婚の頃から金髪の愛らしい幼馴染・フローラに夢中で、妻には見向きもしなかった。 夫からは蔑ろにされ、夫の両親からは罵られ、フローラからは見下される日々。そしてアイリスは、ついに決意する。 「それほど幼馴染が大切なら、どうぞご自由に。私は出て行って差し上げます」 これは、虐げられた主人公が、過去を断ち切り幸せを掴む物語。 ※19話完結。 毎日夜9時ごろに投稿予定です。朝に投稿することも。お気に入り登録していただけたら嬉しいです♪

(完)婚約解消からの愛は永遠に

青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。 両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・ 5話プラスおまけで完結予定。

心の傷は癒えるもの?ええ。簡単に。

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢セラヴィは婚約者のトレッドから婚約を解消してほしいと言われた。 理由は他の女性を好きになってしまったから。 10年も婚約してきたのに、セラヴィよりもその女性を選ぶという。 意志の固いトレッドを見て、婚約解消を認めた。 ちょうど長期休暇に入ったことで学園でトレッドと顔を合わせずに済み、休暇明けまでに失恋の傷を癒しておくべきだと考えた友人ミンディーナが領地に誘ってくれた。 セラヴィと同じく婚約を解消した経験があるミンディーナの兄ライガーに話を聞いてもらっているうちに段々と心の傷は癒えていったというお話です。

あなたが女友達を優先するなら、私は幼馴染みと幸せになるのでどうぞご自由に。

ぽんぽこ狸
恋愛
伯爵令嬢のヘルガは婚約者のオスヴィンとその”女友達”のカリーナに初めて対面した。 それ以前でもことあるごとに、カリーナの話を聞かされて疎外感を覚えていたが、ヘルガのことなど蚊帳の外で自分たちは特別な友人だとアピールする。 そしてカリーナは「実は親友としてオスヴィンの婚約者となったヘルガを見定めるためにやってきた」と暴露し、最後に「オスヴィンはこう見えて繊細だけどよろしくね?」とまるで正妻のような態度でヘルガに言ったのだった。 堪忍袋の緒が切れたヘルガは、婚約を機に連絡を絶っていた幼なじみに久方ぶりに会い、作戦を立てた。 彼らと同じ土俵に立って、真っ向から彼らのプライドを打ち砕きつつも「お互い様でしょう?」とヘルガは笑って口にした。 小説家になろう様にも別タイトルで投稿中です。