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29話 求婚4
しおりを挟むジュリーが玄関ホールへおりると、ちょうどエドガーのために使用人が扉を開いたところだった。
「エドガー? あなたが領地に帰っていたなんて… ジョナサンがずっと来ていないのだけど… 何かあったの?」
それに… あなたはなぜ、そんなに大きな花束を持っているの? もしかして体調を崩したアリアーヌのお見舞いに来たの?
久しぶりに会ったエドガーに挨拶をするのも忘れて… ジュリーは大きな花束とエドガーの顔をチラチラと交互に見つめた。
「やぁ、ジュリー……」
エドガーはものすごく不本意そうに顔をしかめる。
「エドガー、アリアーヌに会いに来たの?」
「君の妹に用は無いよ…」
「それなら、どうして…? あなたが来るなんて… ジョナサンに何か悪いことでも起きたの?」
彼は拗ねているだけかと思っていたけれど。 ジョナサンはお父様と話をした後、とても落ち込んでいたから… プライドの高い彼はもしかして… もしかすると…?
ジュリーの脳裏に『婚約解消』という言葉が、フッ… と浮かんだ。
弟のかわりにファゼリー伯爵のエドガーが来たせいで、ジュリーの頭には悪いことしか浮かばない。
それほどジョナサンはジュリーに信用されていないからである。
ジョナサンを心配するジュリーの顔を見下ろし、増々エドガーは顔をしかめる。
「ジョナサンは昨日まで酒浸りになっていたが… 私が性根をたたき直しておいた」
文字通りジョナサンを自分の拳で叩き直したことを… エドガーはボソボソと語った。
「あら! そういうことなの… なぁ~んだ、心配して損をしたわ」
もう、驚いた。 もしかするとジョナサンはアリアーヌまですてる気ではないかと… 冷や冷やしたわ!
ジュリーはホッ… と胸をなでおろして笑った。
「そんなに… 君はジョナサンが気になるのか?」
「気になるというか… 彼… 私と同じぐらい落ち込んでいたから……」
そう言えばエドガーはお父様がジョナサンに話した内容を… 聞いたのかしら? もうダメね… 私ったら。 アリアーヌの結婚式が終るまではなるべく考えないようにしていたのに。
思い出したら、また泣きたくなって来たわ。
ホッ… と笑っていたジュリーの顔が急に曇る。
「ジュリー?」
「父が何を考えているか… あなたはジョナサンから聞いた?」
ついついエドガーの顔を見ると甘えてしまいたくなるのよね… いけないわ。 我慢しないと! だって私たちはもう子供ではないのだから。
無邪気に甘えてはいけないのよ。 それでエドガーに優しくされたら… きっと傷つくことになるわ。
「…ああ、君を嫁がせずに領地の管理をさせるという話だね?」
「ええ…」
「ジョナサンが信用できないのなら、私のように信用できる領地管理人を雇えば済むことなのだが」
管理人が雇えないほどセイフォード男爵家は金に困ってはいない。
もちろん困っているのならエドガーはファゼリー伯爵家から資金を援助するつもりだ。
一般的にこのようなやり方は裕福な上級貴族の考え方ではあるが。
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