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36話 エドガーは恥知らず2
しおりを挟むどういった経緯で、男爵家の玄関ホールでキスをしていたのかエドガーが叔母の男爵夫人に報告すると…
「男爵に求婚の許しをえる前に、ジュリー自身の気持ちを先に確かめたかったのです… 私もジュリーに無理強いだけはしたくありませんから…」
エドガーは我が物顔で、ジュリーの腰をさらに引き寄せ、自分の身体にピッタリと密着させる。
「ううっ……」
もう… 顔から火が出そうだわ! どうしてエドガーはこんなに冷静なの? お母様に見られて恥ずかしくないの?
真っ赤にそまったジュリーが、背の高いエドガーを見あげると目が合った。
その瞬間、ふたたびエドガーの唇がジュリーの唇に落ち、チュッ… とキスされてしまう。
「……っ!」
エドガー―――ッ…?!!
「このままジュリーを、攫って行きたいぐらいです」
ジュリーの激しい動揺に気づいていても… エドガーは男爵夫人にニコリッと爽やかに笑って見せる。
男爵夫人が子供の頃から見て来た、エドガーの真面目で冷静沈着な印象からすれば、ずいぶんとはしゃぎ、砕けた態度だった。
自分の甥が、それほど娘に受け入れられたことを、喜んでいるのだと、男爵夫人はエドガーの気持ちを読み取った。
「あらあら… 私の礼儀正しかった甥は、いつからそんな恥知らずになったのかしら?」
男爵夫人は手首にひっかけていた扇を開き、パタパタとあおぐ。
「ほんの数分前に、ジュリーが私の求婚を受け入れた時からです」
「……」
男爵夫人はチラリ… とジュリーを見る。
恥かしがり顔を真っ赤にしているが、エドガーにピッタリとくっ付いたまま、大人しくしている娘の姿に… 男爵夫人はニッコリと笑いうなずく。
ジュリーの性格なら、異性にされるがままで、黙ってくっ付いていることなどありえない。(婚約者時代のジョナサンでもありえなかった)
男爵夫人は手袋をはずし、ジュリーの真っ赤な頬を、白くふくよかな手で優しくなでた。
「ふふふっ… ジュリーは子供の頃からずっと、エドガーが好きだったから。 お父様がジョナサンとの婚約を決めた時は、心を痛めたものよ?」
「お… お母様っ…!」
えええ~っ! 私が… エドガーを好きだったことを、なぜ知っているの?
激しい動揺で、魚のように口をパクパクするジュリーに、男爵夫人は笑みを深くする。
「あなたは一生懸命、気持ちを隠していたけれどね… エドガーに纏わりついて、あれこれ好みを聞きだそうとする姿は、とても微笑ましかったわ」
当時子供だったジュリーやエドガーたち… 姉妹、兄弟たちだけが、そのことに気づかなかったが…
まわりの大人たち(使用人を含め)は全員、ジュリーの幼い恋心に気づいていた。
「…子供の頃から、私を好きだった…?」
男爵夫人とジュリーの会話に、エドガーは突然喰いつく。
「そうよ」
「……っ」
もう…! もう…っ!! もう~~っ!! エドガーに言ってしまうなんて、ひどいわ、お母様ぁ~!!
羞恥が限界に達したジュリーは… ピタリとくっ付いたエドガーの胸で顔を隠す。
「知らなかった」
エドガーは嬉しそうにジュリーの髪にキスを落とした。
その場にいた全員から笑みを誘う…
ジュリーとエドガーは相思相愛だとわかる、幸せな光景だった。
―――だが、男爵夫人の明るかった表情が、不意に曇る。
「エドガー… 男爵はおそらく、あなたたちの結婚を許可しないわ…」
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