婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された

みみぢあん

文字の大きさ
39 / 55

37話 エドガーは恥知らず3

しおりを挟む
 
 ジュリーとエドガーを祝福する雰囲気の中… 男爵夫人だけが表情を曇らせた。


「エドガー… 男爵はおそらく、あなたたちの結婚を許可しないわ…」

「叔母上、その話なら昨日ジョナサンから聞きました」
 ニコニコと甘い笑顔を振りまいていたエドガーが… 王都で王太子の側近を務めている時のように、キリッ… と凛々りりしい姿に切り替わる。

「それで… 何か考えはあるの?」
 エドガーに男爵夫人は心配そうにたずねた。

「……!」
 あ! 私もそのことが、心配だわ。 お父様から男爵家に残れと言われた時は、『嫌だ』と答えたけれど… でも、家の助けが無い状態でとつぎ先を見つけることは、不可能だと私にもわかる。
 だから… きっとお父様の言う通りになると…… 正直、結婚はあきらめていた。 
 でも、エドガーが私を欲しいと言ってくれるなら、喜んでとつぐわ!

 ジュリーも心配顔でエドガーを見あげると…
 キリッ… としていたエドガーがジュリーの視線に気づき、また甘い笑みを浮かべる。

「実は… あまり使いたい手では、なかったのですが… 男爵にはすべて事後承諾じごしょうだくということで、進めてみてはどうでしょうか?」

 通常通り、エドガーは求婚の許可を男爵に申し込むが、それで本当に男爵が、許可を出さなかった場合のことである。

「あらあらっ! エドガー… あなた、本気でジュリーをさらう気なのね?」

「ええ、まぁ…… 先ほども言いましたが、すべて書類は整えてありますから、それも可能なのです」
 エドガーはポンッ… ポンッ… と内ポケットに書類を入れた上着の胸をたたく。 

「ど… どういう意味?」
 いまいち話の意味が理解できずにいるジュリーは、2人の会話に口をはさんだ。

「私の胸ポケットには神殿で『婚姻こんいんの儀』をとり行なってもらうための申請書もあるんだよ。 これがあれば、今すぐにでも結婚できるだろう?」
 貴族せきに入っている、貴族同士の結婚では… 神殿へ提出する申請書は、王国が2人の結婚に許可を出したという、証明でもあるのだ。

『婚姻の儀』を行った後は、神殿が婚姻証明書を発行し、王国の貴族籍を管理する機関へ提出し、結婚が無事成立するという仕組みである。

「……そんなモノまであるの?」
 だって、婚約解消前…… 私の結婚のためにお父様が、その申請書を王都から取り寄せようとしたら、確か数ヶ月かかったのよ? すごいわエドガー! いったい、どんな魔法を使ったの? あなたは本当に仕事が早くて完璧なのね。
 素敵…!!!

 キラキラとジュリーが瞳を輝かせている横で、男爵夫人とエドガーはサクサクと話を進めて行く。

「良いわ。 その手で行きましょう」
 男爵夫人はテキパキと、その場に集まっていた使用人たちに指示を出す。

「ありがとうございます叔母上」
 エドガーはニヤリ… と笑う。

「エドガー、あなたは男爵に求婚の許可を申し込む時間を、なるべく長く引き伸ばしてね。 その間に、私が準備をしておくから」

「叔母上が味方になってくれるのなら、こんなに心強いことはありません」

「…ちょっと、待って? あ… あの… もしかして、今から『婚姻の儀』をする気なの?」
 あわててジュリーは割って入った。
 すでに窓の外はが落ちて暗くなっている。

「急なことだから、『婚姻の儀』は地味になってしまうけれど… その代わりファゼリー伯爵夫人のお披露目ひろめは、日を改めて盛大にやろうジュリー」

「大丈夫よ… あなたの花嫁衣装は、私のクローゼットにしまってあるから」
 自分の結婚が流れてしまった娘の目に、着るはずだった花嫁のドレスを触れさせないよう、気づかった男爵夫人はドレステーラーから密かに受け取っていたのだ。

「あ… 私のドレス?!」
 いろいろあったから、ドレスのことなんて、すっかり忘れていたわ… でもあのドレスは何度もデザイナーと話し合い、私に似合う『白』をさがして… 外国の生地で少し金色がかった『白』を見つけて大喜びした。
 あの綺麗なドレスを… 私は着れるのね?

「それに… ほら! 花嫁のブーケもここにある… それも『奇跡』、『神の祝福』と呼ばれる青いバラのブーケよ?! なんて素敵なの、ジュリー!」
 男爵夫人はジュリーの手にある青バラと白バラの花束を指さした。


「……」
 まさに『奇跡』だわ!






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました! ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

処理中です...