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43話 後継者 エドガーside
しおりを挟むジュリーの父親、セイフォード男爵にも… 若い頃、愛する恋人がいた。
男爵の元恋人は準男爵の娘で、幼馴染だった。
だが男爵家のために近隣に領地を持つ、裕福なファゼリー伯爵家出身のジュリーの母親と、結婚することを先代男爵に命令され、それを受け入れたのだ。
「旦那様…! もう、止めて下さい! あなたは娘の幸せを、ご自分の手でつぶす気ですか?! 恥ずかしくないのですか?!」
乱暴に婚姻の儀を止めようとする夫の態度に、男爵夫人は耐えられなくなり、娘のために声をあげた。
「今さら何を言っているのだ?! 貴族に生まれたのだから、家を守るために個人の幸せなど後回しにして、当然ではないか!」
男爵自身も自分の幸せよりも、男爵家を優先させた人だった。
「嫌です…! お父様、私はエドガーと結婚します!」
ジュリーはエドガーの背中にしがみつき、抵抗した。
エドガーはチラリッ… と祭壇広間の入り口で、おろおろとしているジョナサンを見る。
「……」
ジョナサンにセイフォード男爵家の、当主となる覚悟が足りないのは明らかだ! もしもその覚悟があったなら… 未来の男爵夫人に、病弱で無能な妹のアリアーヌを、けして選んだりはしないだろう。
伯爵位を継承した私なら… 容姿が美しいというだけのアリアーヌを、妻に選ぶことなど断じてない。
だから亡くなった父上、先代伯爵も… 男爵に私の妻にと、アリアーヌをすすめられたが、丁重に断っている。
「ジュリー! お前も男爵家の娘なら、責任をはたすべきだ!!」
「お父様! 男爵家は… ジョナサンとアリアーヌが守るべきです! 私ではありません!」
「我がままを言うな! ジュリー!」
「乱暴なことはやめて下さいセイフォード男爵」
男爵の動きに合わせ、エドガーは身体の向きを変え… 背中で隠したジュリーの盾となり守る。
「エドガー! 君こそ伯爵位を継承したのなら、礼儀と秩序を守れ!」
「……」
確かに、男爵家や領地民のことを考えれば、ジョナサンよりもジュリーが領地の運営に、関わる方が有益だ!
男爵の言う通り、ジュリーはそのための教育を受け、育てられたのだから。 男爵の次に領地のことを熟知している。
何より、今までジュリーは自分の幸せよりも、男爵家を優先して生きて来た。 男爵がジュリーに執着する気持ちもわかる気がする。
「ジュリー! セイフォード男爵家の先祖たちのように、我々は男爵家を、子孫たちへ完璧な状態で渡す義務があるのだ!」
男爵の主張は間違ってはいない。
だが……
「ですが男爵、それはあなたの子孫かも知れないが… ジュリーの結婚を禁じるなら、ジュリーの子孫ではないでしょう?」
「それは…っ」
さすがの男爵も、エドガーが放った理屈に言葉がつまる。
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病弱な娘のアリアーヌも、母親と同じ身体にならないとは限らない。
「それは…!」
パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!
突然、誰かが手のひらを打つ音が、祭壇広間に響き渡る。
祭壇に一番近い参列者席で… 花嫁のエスコート役をしたマクシミリアンが立ちあがり、満面の笑みを浮かべて拍手をしたのだ。
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