婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された

みみぢあん

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53話 後継者 ーENDー

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 王都にあるファゼリー伯爵家のタウンハウスで、元気な赤ん坊の泣き声が響いた。


「男の子ですよ、伯爵様!」
 ジュリーの母セイフォード男爵夫人が、寝室から産まれたての赤ん坊を抱いて出てくると… イライラと廊下で待っていた、父親のエドガーの腕に渡す。

「そうですか…」
 エドガーはホッ… と笑い、小さな息子の髪にキスを落とす。

「やれやれ、これで一安心ね……」
 男爵夫人もエドガーに抱かれた孫を、幸せそうに見つめながら微笑んだ。

「妻は…?! ジュリーは? ジュリーは大丈夫ですか?」
「ええ、元気よ。 は産まれるまでが早かったから…」
「話せますか?」
「眠そうだったけれど、まだ起きているわ…」

「それなら眠る前に、妻をねぎらわないと…」
 もう一度、小さな息子の髪にキスを落とすと… エドガーは近くに立っていた弟のジョナサンに小さな息子を渡す。

「あ…っ! 兄上??!」

「抱き方はファニーで覚えただろう? 産まれたばかりの子は頭を支えてやるんだ!」
 エドガーは小さな息子にビクつくジョナサンに、ニヤリッ… と笑った。

「は… はい!」
 最初はオロオロとしていたが、小さなエドガーの息子を受け取り… 腕の中の赤ん坊を見つめるうちに、ジョナサンからも笑みがこぼれた。

「小さくて可愛いだろう?」
「本当に可愛い!」

「すみません義母上、ーをお願いします」
 産まれる前からエドガーは、息子の名前を決めていた。

「ええ…」




 エドガーが寝室へ入ると… 
「妻と話しても良いか… 医師せんせい?」

「ええ、伯爵様… 私はしばらく席を外しますから、奥様を疲れさせないよう気を付けて下さい」
 医師はジュリーのみゃくをはかり終えカルテに書き入れた。


 医師と助手の女性が寝室から出て行くと… ジュリーが先に口を開いた。

「やったわ、エドガー! 男の子よ!」

「ああ、すごく可愛い男の子だった。 ジョナサンにやるのがしくなって来た」
 男爵に懇願こんがんされ、ジュリーとエドガーは3人目の子が男の子なら、将来セイフォード男爵家へ養子に出すと約束した。

「ふふふっ… もう、エドガー…ったら! ジョナサンへ養子に出すのは20年も先の話でしょう?」

「そうだけど……」
 妻の声がかすれていることに気づいたエドガーは、サイドチェストの水差しからカップに水を注ぎ、ジュリーの身体を支えて起こしてやり水を飲ませる。

 ゴクッ… ゴクッ… と美味しそうに水を飲み終えると…
 フゥ―――ッ… とジュリーは満足そうにため息をつく。

「お疲れ様… よく頑張ったね、ジュリー。 君もヘクターも無事でホッ… としたよ」
 子供を出産するたびに、妻を心配するエドガーの寿命はいっきに10年は縮みそうだった。 

「ふふふっ… でも可愛いから… ついつい、もう1人ぐらい欲しくなるのよね」

「もう… これで最後にしてくれ…!」
 エドガーは苦笑する。

 だがジュリーの本音では、あと2人ぐらい欲しいと思っている。

「ふふふっ… 子供は神様からの贈り物だから」

「ジュリー…」
 エドガーは困った顔をしながら… ジュリーの白いひたいにねぎらいのキスをいくつもした。

 昔はジョナサンにみにくいと言われていた、ジュリーの日焼ひやけした肌は… 王都で暮らすようになると、あっという間に白くなってしまった。
 今では若い独身貴族たちの間で、ジュリーは『妖精の奥方様』と呼ばれている。


 いまだに新婚夫婦のような、情熱的に愛をわすジュリーとエドガーとは反対に… アリアーヌとジョナサンの結婚生活は、新婚当時から冷えきり破綻はたんしていた。
 6年過ぎた今でも、2人に子供が恵まれることは無かった。


 本人たちは何も言わないが、ジュリーが聞いた男爵夫人の話では…
『白い結婚を続けているわ… いくら説得してもアリアーヌが受け入れようとしないから… 間違いないと思う』

『まぁ… それではジョナサンが婚姻こんいん無効むこうにしても、文句は言えないわね』
『ええ、だからお父様は子供を産ませないという条件で、ジョナサンに愛人を作ることを許可されて…』
『愛人…?』
『でもジョナサン自身が、娼館へ行けば良いから、何かと面倒な愛人はいらないと言っているらしいの』
『そう…』 

 鼻の骨が折れてまがり、周囲の人たちに美男子とは言われなくなったジョナサンは… 人が変わったように、男爵と領地の運営に熱心な態度で取り組むようになった。

 昔は武器として使っていた美しい容姿がダメになったことは、ジョナサンにとって不運ではなく、むしろ幸運だったのだ。




「それより… サディとファニーは?」
 笑いながらジュリーは、長男と長女のことをたずねた。

 昼間、出産前の陣痛じんつうに苦しみ、うなり声をあげていたジュリーを見て… 母親を失うのではないかと、息子のサディと娘のファニーはすっかりおびえきっていたのだ。
 子どもたちと一緒に、夫のエドガーも内心ではおびえていたが…

「大丈夫だよ。 もう、真夜中だし… さっき見て来たら、2人ともぐっすり眠っていたよ」

「そう?」
「可愛い息子をありがとう、ジュリー」
「ふふふっ… どういたしまして、エドガー」

「愛しているよ、美しい奥様!」
「愛しているわ、素敵な旦那様!」


 2人はいつものように、キスを交わす。



 ― END ―

 ここまで読んで下さり、ありがとうございます!






 ◯ あとがき ◯

 ギリギリで途切れがちな更新でしたが… なんとかハッピーエンドまで、たどり着けました。
 遅くなりましたが、コメント欄を開きます…(-_-;) ご意見、ご要望などございましたら、残して下さいませ。

 またどこかで、お会い出来れば幸いです☆彡




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