10 / 30
9話 襲撃
しおりを挟む
馬車が止まりただならぬ気配を感じとり… クロヴィスは自分が座っていた座席の座面をあげて、物入れに隠してある銃を取りだした。
男たちの怒鳴り声が馬車の外で聞こえ、その中に御者台にいた、もう1人の護衛騎士の声が混ざっていることに気づく。
「…お前たちは誰だ! いますぐ馬車から離れろ――!」
「早く馬車の中の女を殺せ!」
ガンッ! と金属がぶつかり合う冷たい音が響く。 護衛騎士が外にいる男たちと剣で戦っているのだ。
不穏な怒鳴り声に、アデルは青ざめハッ… と息をのむ。
「…っ?!」
私を殺せですって? 馬車で移動中に、何度か襲われたことはあるけれど、いつも身代金が目的の誘拐だった。
この襲撃は、私を殺すのが目的なの?!
「弾は込めてある… 使い方はわかるだろう?」
緊迫した空気の中で、いたって冷静にクロヴィスは銃身の長い銃を2丁アデルに渡した。
クロヴィス自身は短い銃を2丁両手に持つ。
ずっしりと重い銃を受け取り、アデルはうなずく。
「……っ」
もちろん、知っているわ。
だって厳しい勉強のあいまに、気ばらしで月に1度は別邸へ行き、クロヴィスと競いあっていたから…
最初はただの好奇心からくる遊びだったけれど… クロヴィスに挑発されて、肩に痣ができるほどかなりの時間を射撃についやした。
でも… 結婚してからは伯爵夫人にふさわしくない趣味を持っているとピエールに知られたくなくて、アデルは1度も銃に触れていない。
それに当然、アデルは人を撃ったことがなく… 動揺し銃を持つ手ばブルブルと震えていた。
「躊躇せず打て!」
動揺するアデルにクロヴィスは指示を出す。
ガチッ! と誰かが外から馬車の扉に手をかけた。
その瞬間、クロヴィスは内側から、ガガンッ…!! と扉を蹴りぬく。
扉に手をかけていた者に、ゴツッ… とにぶい音をたてて扉をぶつけ、クロヴィスは馬車の外に出た。
クロヴィスが外に飛びだしてすぐに、ドンッ! と大きな銃声がなりひびく。
ギャアッ… ウアアァァ!! と男のさけびごえが聞こえた。
アデルはビクッ… と飛びはねる。
「クロヴィス…!」
ダメよ! ここで私がグズグズしていたら、クロヴィスが殺されてしまう!
あわてて馬車のゆかに膝をつき、長い銃身を開いた扉の外にむけ… 銃床をしっかりと肩にあててかまえる。
扉の前に黒布で顔を半分かくした男があらわれ、アデルはクロヴィスの指示通り躊躇なく銃の引き金を引いた。
男たちの怒鳴り声が馬車の外で聞こえ、その中に御者台にいた、もう1人の護衛騎士の声が混ざっていることに気づく。
「…お前たちは誰だ! いますぐ馬車から離れろ――!」
「早く馬車の中の女を殺せ!」
ガンッ! と金属がぶつかり合う冷たい音が響く。 護衛騎士が外にいる男たちと剣で戦っているのだ。
不穏な怒鳴り声に、アデルは青ざめハッ… と息をのむ。
「…っ?!」
私を殺せですって? 馬車で移動中に、何度か襲われたことはあるけれど、いつも身代金が目的の誘拐だった。
この襲撃は、私を殺すのが目的なの?!
「弾は込めてある… 使い方はわかるだろう?」
緊迫した空気の中で、いたって冷静にクロヴィスは銃身の長い銃を2丁アデルに渡した。
クロヴィス自身は短い銃を2丁両手に持つ。
ずっしりと重い銃を受け取り、アデルはうなずく。
「……っ」
もちろん、知っているわ。
だって厳しい勉強のあいまに、気ばらしで月に1度は別邸へ行き、クロヴィスと競いあっていたから…
最初はただの好奇心からくる遊びだったけれど… クロヴィスに挑発されて、肩に痣ができるほどかなりの時間を射撃についやした。
でも… 結婚してからは伯爵夫人にふさわしくない趣味を持っているとピエールに知られたくなくて、アデルは1度も銃に触れていない。
それに当然、アデルは人を撃ったことがなく… 動揺し銃を持つ手ばブルブルと震えていた。
「躊躇せず打て!」
動揺するアデルにクロヴィスは指示を出す。
ガチッ! と誰かが外から馬車の扉に手をかけた。
その瞬間、クロヴィスは内側から、ガガンッ…!! と扉を蹴りぬく。
扉に手をかけていた者に、ゴツッ… とにぶい音をたてて扉をぶつけ、クロヴィスは馬車の外に出た。
クロヴィスが外に飛びだしてすぐに、ドンッ! と大きな銃声がなりひびく。
ギャアッ… ウアアァァ!! と男のさけびごえが聞こえた。
アデルはビクッ… と飛びはねる。
「クロヴィス…!」
ダメよ! ここで私がグズグズしていたら、クロヴィスが殺されてしまう!
あわてて馬車のゆかに膝をつき、長い銃身を開いた扉の外にむけ… 銃床をしっかりと肩にあててかまえる。
扉の前に黒布で顔を半分かくした男があらわれ、アデルはクロヴィスの指示通り躊躇なく銃の引き金を引いた。
113
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約者の様子がおかしいので尾行したら、隠し妻と子供がいました
Kouei
恋愛
婚約者の様子がおかしい…
ご両親が事故で亡くなったばかりだと分かっているけれど…何かがおかしいわ。
忌明けを過ぎて…もう2か月近く会っていないし。
だから私は婚約者を尾行した。
するとそこで目にしたのは、婚約者そっくりの小さな男の子と美しい女性と一緒にいる彼の姿だった。
まさかっ 隠し妻と子供がいたなんて!!!
※誤字脱字報告ありがとうございます。
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
年増令嬢と記憶喪失
くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」
そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。
ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。
「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。
年増か……仕方がない……。
なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。
次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。
なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる