私のお金が欲しい伯爵様は離婚してくれません

みみぢあん

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16話 共犯者 ピエールside

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 バーンウッド伯爵邸になんの前ぶれもなく、シャルロットの兄ストナル子爵ガストンがおとずれた。

 そわそわと落ちつきなく、ガストンが応接間でまっていると… ピエールとシャルロットは恥ずかしげもなく手をつなぎ、クスクスと笑いながらようやく姿をあらわした。

 3人分のお茶を用意して使用人が応接間から出て行くと… シャルロットがお茶をそそぎ、ピエールはティーカップを受け取りながら、ヒソヒソと声を落としてガストンにたずねる。

「それでガストン… 昨夜はうまくいったのだろう?」
 計画通りに、僕とシャルロットがアデルを侮辱ぶじょくして、離れの小屋メイプルハウスに押し込めると… アデルは実家のガーメロウ邸からむかえを呼び、夜のうちにさっさと逃げ出した。

 ガストンが雇った4人の男たちに、逃げ出したアデルを追わせ… あらかじめ調べておいた人の気配が無い場所で襲い、アデルを殺すことになっていた。

「終わったらすぐに、報告に来る約束だったが… いくら待っても、誰も報告に来なかった…」
 ガストンは緊張し、顔を強張こわばらせてピエールの問いに答える。

 兄の話を聞きピクッ… と手を震わせ、お茶をそそぐのをやめてシャルロットは2人の会話に参加した。

「どういう意味なの、お兄様?!」

「やとった男たちの報告が無いから、わからないんだよ!」 

「つまり… アデルをまだ、殺していないのか?」
 うそだろう?! 僕たちの計画は完璧だった! 失敗なんて、するはずがない!

 ピエールはシャルロットから受け取った、ティーカップには口をつけず、そのままローテーブルにカチャッ… と置く。

「わからない…! だからガーメロウ邸に彼女がいるか、ピエールに確かめに行ってほしい」
 ガストンは動揺をかくせず… 胸のまえで両手の指を組みあわせて、せわしなく動かしている。

「もしも失敗していたら… アデルをここに、連れ戻さないといけないな?」
 クソッ! そうなったら、今度はどくを手に入れて… 毒殺どくさつするか?!
 
 ぶるぶるとピエールの手が震えていた。

「嫌よ…! あの女をこの屋敷に入れるなんて… ここは私とピエールの家なのよ?! ぜったいに、私は嫌っ…!!」
 興奮したシャルロットは声をおさえるのも忘れて、かん高い声でさけぶと… ピエールの腕をギュッ… とつかむ。

 ガックリと肩を落とし、ガストンは頭をかかえ弱音をはいた。

「…やっぱり、こんなことするべきでは無かったんだ! 人を殺すなんて… 間違いだった!」
 ガストンは計画が成功したらアデルから奪った遺産をもとに、ストナル子爵家とバーンウッド伯爵家で、新しい事業を始めようと… ピエールに持ちかけられて共犯となった。

「今さらそんなこと言っても遅いぞ、ガストン! お前がアデルを殺すなら、どこかで襲わせるのが良いと言ったのを忘れたのか?!」

「……っ」
 ガストンは黙りこむ。





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