結婚しておいてと姉が手紙を残して家出した【改訂版】

みみぢあん

文字の大きさ
5 / 8

4話 初夜

しおりを挟む


 結婚式が無事に終わり、神殿からソールズ伯爵邸の舞踏室に場所をうつして、結婚式に招待された客たちはダンスパーティーを楽しんでいる。

 本当の花嫁のマグノリアお姉様は、いまだに見つかっていない。
 おかげでお父様は顔を青くしたまま、招待客たちの相手をしていた。

 花嫁役の私は初夜の準備のために、お母様と一緒にダンスパーティーを途中で抜け出し、クロード様が用意してくれたデントン家の控室いた。

「ハァ──…」
(疲れたわ)

 キツイ香水の香りとベッタリと濃くぬったお化粧をきれいに落とすと、不思議と身体が軽くなりため息が出た。

 胸の中は神殿にいた時と変わらず、惨めさでいっぱいだったけど。
 お母様がお姉様のために用意した外国産の貴重なレースで飾られた、純白の夜着に着がえて鏡の前に立つと…
 そこにはぼんやりとした、暗い表情の私が立っている。

「嘘つきの顔。醜いわ…」
(自分が招いたことだもの。こうなって当然だわ…)

 鏡にうつる私は見るからに不幸そうな顔をしていた。


「本当にマグノリアには困ったわ! どうしましょう。さすがに初夜までビオレータに身代わりをさせられないわ…」
「そうね……」

 急にオロオロとするお母様に私は苦笑した。

「でも、使用人たちが見ているし。花嫁が夫の寝室へ行かないのは、使用人たちも変に思うから…」
「ええ…」

「だからね、ビオレータ。あなたは初夜をむかえる花嫁として、寝室へいってほしいの」

「はい」
(ああ… 私は最後まで、花嫁役をしなければいけないのね?)

「それでつまりね… クロード様が寝室に来たら、マグノリアが家出したことを、あなたから説明してくれるかしら?」

「はい」
(こんなことをした私は、きっとクロード様に軽蔑されるでしょうね)

 お母様の計画を受け入れたのは私自身だから、何もかも自業自得だけど。
 でもやっぱり、マグノリアお姉様を許せない。

 私がどれだけ望んでも手に入れられないクロード様の愛を、お姉様は持っているのに。こんなふうに粗末にするなんて許せない。


「ごめんなさいビオレータ! あなたにばかり苦労をさせて。もっと簡単にマグノリアが見つかると思っていたのに…」
「うん… わかっているわお母様」

「あの子はいつも子供みたいな悪戯をするけど、大きな問題になるようなことは今までなかったから…」

 大切な結婚式の直前でいなくなったこと自体が、大きな問題だと思うけれど。

 私はすでに結婚式で傷つき疲れ切っていたから、何もかもどうでも良くなっていた。

「私もお姉様も… クロード様に叱られるでしょうね」
(嫌われて憎まれたほうが… クロード様を早く忘れられるかもしれない)

 幸か不幸か… クロード様がお姉様に向ける愛情を、すぐ近くでこの目で見たから。ようやく私はクロード様への恋心を、捨てることができそうな気がする。

 怖いけど、早く終わらせたい。花嫁の代役も… 私の恋も…

 
 私はふたたび花嫁のベールを頭からかぶって顔を隠し、初夜のためにクロード様の寝室へ行く。


 薄暗い部屋の中で、一人静かにクロード様が来るのを待った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様

睡蓮
恋愛
ジーク伯爵は、溺愛する自身の妹レイアと共謀する形で、婚約者であるユフィーナの事を追放することを決めた。ただその理由は、ユフィーナが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしユフィーナは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、ユフィーナを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。

お見合いパーティーとは結婚したい人が参加するものでは?

しゃーりん
恋愛
王城で働く者に未婚が多いことを知った国王陛下の一言で開催されることになったお見合いパーティー。 上司から担当責任者であるゼクランの補佐を頼まれたアンリエッタは、参加者が集まらないため周りに声をかけ、どうにかお見合いパーティーは行われた。 しかし、一度きりではなく今後も定期的に開催されることが決まり、アンリエッタは担当補佐を誰かに代わってほしいと思った。なぜなら、ゼクランはアンリエッタの元夫だから。 仕事だと割り切って接していたのに、お見合いパーティーの参加者にアンリエッタが声をかけられ、ゼクランからは「私の大切な人」だと助けてもらう。 再婚を願うゼクランとまだ気持ちが残っていても悩むアンリエッタのお話です。

白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします

鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。 だが彼女は泣かなかった。 なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。 教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。 それは逃避ではない。 男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。 やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。 王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。 一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。 これは、愛を巡る物語ではない。 「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。 白は弱さではない。 白は、均衡を保つ力。 白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。

【完結】花冠をあなたに ―信じ尽くした彼女の、最期の言葉―

桜野なつみ
恋愛
病弱な婚約者を支え続けた令嬢ミリアーナ。 幼いころから彼を想い、薬草を学び、研究し、元気になったら花畑で花冠を編ごう」と約束していた。 けれど、叔母と従妹の影がその誓いをゆがめ、やがて誤解と病に蝕まれていく。 最期に彼女が残したのは――ただ一つの言葉。 全十話 完結予定です。 (最初は全四話と言っていました。どんどん長くなってしまい、申し訳ありません。)

《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから

ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。 彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

消えた治癒士への執着は棄てて下さい

みん
恋愛
200年〜300年周期で現れる“亀裂”を封印、浄化する為に、数ヶ国連合のパーティーが組まれ、1年程で“亀裂”の封印、浄化を終えて帰還した。それは、これから200年〜300年平穏が約束されたも同じ事である為に、国中がお祝いムードに包まれた。 でも、そこには、パーティーの一員だった1人の治癒士の姿が無かった。その治癒士はどうして消えてしまったのか?それぞれの理由で、それぞれの人物が、その治癒士を探し続けた結果は─ ※独自設定あり ※他視点の話もあります

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

処理中です...