結婚しておいてと姉が手紙を残して家出した【改訂版】

みみぢあん

文字の大きさ
12 / 15

11話 これから…



 クロード様は私の両親から結婚の許可をもらった。

 …でも、その直後にマグノリアお姉様が泣きだして、クロード様から許しを得ようと半狂乱で懇願こんがんを始めた。

「嫌よ、クロード! 私はあなたと結婚するわ! お願いだから許して! ごめんなさい、私が悪かったわ。これからはあなたの言う通りにするから!」

「まぁ、まぁ… 落ちついて、マグノリア。そんなに泣いたりして… はしたないわ」

 クロード様にすがりつこうとするお姉様を、お母様が抱きしめてなだめるけど…

「お願い、クロード! 私の話を聞いて!」
「マグノリア… クロード様を困らせてはいけないわ」

「嫌よ、お母様! こんなの嘘でしょう? ねぇ、クロード! ビオレータも何とか言いなさい!」

 私はお姉様にキッ! …と睨まれた。自分の婚約者を私に横取りされたと、思っているのだろう。

「お姉様……」
(お姉様もクロード様が好きなのね? …それなら好かれるように、なぜクロード様に求められていた努力をしなかったの?)

 ずっと反抗的だったお姉様が、こんなに取り乱すとは思わなかった。今までクロード様との、ケンカの愚痴ばかり聞かされていたから。

 でも、取り乱すお姉様を見ていると… お姉様はクロード様が好きだからこそ、『好きな人に優しくして欲しい』 …という思いでクロード様に反抗していたのだとわかる。


「もう謝らなくて良いよマグノリア。今まで厳しいことばかり言って悪かったよ」
「クロード!」


 懇願するお姉様に声をかけるクロード様の姿は、穏やかでとても優しく見えるけれど… 
 
 『婚約者ではない君に、期待する必要が無いから何も言わない』 …だから自分はお姉様に関わらないから『好きにすれば良い』と。
 自分の人生からお姉様を完全に切り離し、突き放したように見える。

 私にはお姉様をなだめるクロード様の言葉が、ひどく惨酷に聞こえ… 背筋が寒くなった。


「オルランド卿、デントン夫人、僕はここで失礼します。今後のお話は明日にしましょう」

 泣きわめくお姉様がいては、これ以上はまともに話を進められないと、クロード様に手を引かれて、私は一緒に居間を出た。

 見苦しく泣きわめくお姉様の声が、パタン! …と居間の扉を閉めて遮られる。

 私はそれまで無意識で緊張していたらしく、ハァ───…… と大きなため息がでた。そんな私の背中を、クロード様がトンッ、トンッ… とたたく。

「やれやれだな… お疲れ様、ビオレータ」
「…クロード様こそ、お疲れ様です」

 フゥ───…… とクロード様も大きなため息をつく。


「僕はこの後、結婚式をしたソールズ伯爵領の神殿で、婚姻を無効にできないか、相談をしに行くよ」

「婚姻無効ですか?」
「うん。初夜に花嫁が逃げ出したことにしてね」
「初夜に…?」

 お姉様は結婚式の前に逃げ出してしまい、初夜もしなかったから、クロード様の話はけして間違ってはいない。

「なるべく君がこの騒動に関わっていないようにした方が良いと思うんだ」

 クロード様が苦笑する。

「はい」
(そうね。さすがに私が花嫁の身代りをしていたとは言えないわね)

 お姉様の身代わりでクロード様の寝室で体験したことまで、ふと思い出してしまった。

 たくさんクロード様とキスをして、力強く抱きしめられ… それから………
(自分でもまだ信じられないわ! この私がまるでお姉様のように、あんな大胆なことをしたなんて…)

 頬が恥かしさでボッ! …と熱くなり。手のひらで頬の熱を冷まそうと、ペタリとくっ付ける。

 …でも、クロード様の言葉で私の羞恥が吹き飛んだ。

「まぁ、どちらにしても… 僕がマヌケだと思われることは避けられないけどね」

「……ハッ!」
 思わず息をのみ、クロード様を見あげた。

 初夜でも、結婚式でも… 花嫁に逃げられた花婿が恥をかくことに変わりはない。私の恥ずかしさなど比べようもないほど、クロード様はこれから屈辱を味わうことになる。


「ビオレータ、少し話をしないか?」
「…え?」
「こんなことになって、今さらだけど。君と話がしたい」
「はい」


あなたにおすすめの小説

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

彼女よりも幼馴染を溺愛して優先の彼と結婚するか悩む

佐藤 美奈
恋愛
公爵家の広大な庭園。その奥まった一角に佇む白いガゼボで、私はひとり思い悩んでいた。 私の名はニーナ・フォン・ローゼンベルク。名門ローゼンベルク家の令嬢として、若き騎士アンドレ・フォン・ヴァルシュタインとの婚約がすでに決まっている。けれど、その婚約に心からの喜びを感じることができずにいた。 理由はただ一つ。彼の幼馴染であるキャンディ・フォン・リエーヌ子爵令嬢の存在。 アンドレは、彼女がすべてであるかのように振る舞い、いついかなる時も彼女の望みを最優先にする。婚約者である私の気持ちなど、まるで見えていないかのように。 そして、アンドレはようやく自分の至らなさに気づくこととなった。 失われたニーナの心を取り戻すため、彼は様々なイベントであらゆる方法を試みることを決意する。その思いは、ただ一つ、彼女の笑顔を再び見ることに他ならなかった。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

愛しておりますわ、“婚約者”様[完]

ラララキヲ
恋愛
「リゼオン様、愛しておりますわ」 それはマリーナの口癖だった。  伯爵令嬢マリーナは婚約者である侯爵令息のリゼオンにいつも愛の言葉を伝える。  しかしリゼオンは伯爵家へと婿入りする事に最初から不満だった。だからマリーナなんかを愛していない。  リゼオンは学園で出会ったカレナ男爵令嬢と恋仲になり、自分に心酔しているマリーナを婚約破棄で脅してカレナを第2夫人として認めさせようと考えつく。  しかしその企みは婚約破棄をあっさりと受け入れたマリーナによって失敗に終わった。  焦ったリゼオンはマリーナに「俺を愛していると言っていただろう!?」と詰め寄るが…… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

某国王家の結婚事情

小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。 侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。 王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。 しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。

[完結]離婚したいって泣くくらいなら、結婚する前に言ってくれ!

h.h
恋愛
「離婚させてくれぇ」「泣くな!」結婚してすぐにビルドは「離婚して」とフィーナに泣きついてきた。2人が生まれる前の母親同士の約束により結婚したけれど、好きな人ができたから別れたいって、それなら結婚する前に言え! あまりに情けなく自分勝手なビルドの姿に、とうとう堪忍袋の尾が切れた。「慰謝料を要求します」「それは困る!」「困るじゃねー!」