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11話 これから…
クロード様は私の両親から結婚の許可をもらった。
…でも、その直後にマグノリアお姉様が泣きだして、クロード様から許しを得ようと半狂乱で懇願を始めた。
「嫌よ、クロード! 私はあなたと結婚するわ! お願いだから許して! ごめんなさい、私が悪かったわ。これからはあなたの言う通りにするから!」
「まぁ、まぁ… 落ちついて、マグノリア。そんなに泣いたりして… はしたないわ」
クロード様に縋りつこうとするお姉様を、お母様が抱きしめてなだめるけど…
「お願い、クロード! 私の話を聞いて!」
「マグノリア… クロード様を困らせてはいけないわ」
「嫌よ、お母様! こんなの嘘でしょう? ねぇ、クロード! ビオレータも何とか言いなさい!」
私はお姉様にキッ! …と睨まれた。自分の婚約者を私に横取りされたと、思っているのだろう。
「お姉様……」
(お姉様もクロード様が好きなのね? …それなら好かれるように、なぜクロード様に求められていた努力をしなかったの?)
ずっと反抗的だったお姉様が、こんなに取り乱すとは思わなかった。今までクロード様との、ケンカの愚痴ばかり聞かされていたから。
でも、取り乱すお姉様を見ていると… お姉様はクロード様が好きだからこそ、『好きな人に優しくして欲しい』 …という思いでクロード様に反抗していたのだとわかる。
「もう謝らなくて良いよマグノリア。今まで厳しいことばかり言って悪かったよ」
「クロード!」
懇願するお姉様に声をかけるクロード様の姿は、穏やかでとても優しく見えるけれど…
『婚約者ではない君に、期待する必要が無いから何も言わない』 …だから自分はお姉様に関わらないから『好きにすれば良い』と。
自分の人生からお姉様を完全に切り離し、突き放したように見える。
私にはお姉様をなだめるクロード様の言葉が、ひどく惨酷に聞こえ… 背筋が寒くなった。
「オルランド卿、デントン夫人、僕はここで失礼します。今後のお話は明日にしましょう」
泣きわめくお姉様がいては、これ以上はまともに話を進められないと、クロード様に手を引かれて、私は一緒に居間を出た。
見苦しく泣きわめくお姉様の声が、パタン! …と居間の扉を閉めて遮られる。
私はそれまで無意識で緊張していたらしく、ハァ───…… と大きなため息がでた。そんな私の背中を、クロード様がトンッ、トンッ… とたたく。
「やれやれだな… お疲れ様、ビオレータ」
「…クロード様こそ、お疲れ様です」
フゥ───…… とクロード様も大きなため息をつく。
「僕はこの後、結婚式をしたソールズ伯爵領の神殿で、婚姻を無効にできないか、相談をしに行くよ」
「婚姻無効ですか?」
「うん。初夜に花嫁が逃げ出したことにしてね」
「初夜に…?」
お姉様は結婚式の前に逃げ出してしまい、初夜もしなかったから、クロード様の話はけして間違ってはいない。
「なるべく君がこの騒動に関わっていないようにした方が良いと思うんだ」
クロード様が苦笑する。
「はい」
(そうね。さすがに私が花嫁の身代りをしていたとは言えないわね)
お姉様の身代わりでクロード様の寝室で体験したことまで、ふと思い出してしまった。
たくさんクロード様とキスをして、力強く抱きしめられ… それから………
(自分でもまだ信じられないわ! この私がまるでお姉様のように、あんな大胆なことをしたなんて…)
頬が恥かしさでボッ! …と熱くなり。手のひらで頬の熱を冷まそうと、ペタリとくっ付ける。
…でも、クロード様の言葉で私の羞恥が吹き飛んだ。
「まぁ、どちらにしても… 僕がマヌケだと思われることは避けられないけどね」
「……ハッ!」
思わず息をのみ、クロード様を見あげた。
初夜でも、結婚式でも… 花嫁に逃げられた花婿が恥をかくことに変わりはない。私の恥ずかしさなど比べようもないほど、クロード様はこれから屈辱を味わうことになる。
「ビオレータ、少し話をしないか?」
「…え?」
「こんなことになって、今さらだけど。君と話がしたい」
「はい」
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