11 / 92
9話 ペイサージュ伯爵邸2
しおりを挟む
さすがは由緒正しき伯爵家の、有能な執事というだけはあり、とても気がきくジェランに、さりげなくソレイユはたずねられた。
「お嬢様、長旅で大変お疲れのご様子ですが、お食事はお部屋でとられますか?」
「ええ、そうしてください…」
お腹もすいたけれど、それより辛いのは2日間も馬車に揺られ続け、お尻が痛くてこれ以上どこかに座り続けたら、悲鳴を上げてしまいそうだわ?! 早くコルセットをぬぎ捨てて、ベッドに転がってお尻を上にしたい!
ジャルダン子爵家には馬車が2台あり、新しく豪華でクッションが良くきいた方の馬車は… 義母が使うからと、ソレイユは長旅に出るにもかかわらず、使わせてもらえなかった。
古くてガタガタと振動がお尻に大きく伝わる、使用人用の馬車で伯爵邸まで来たのだ。
伯爵家の使用人用の馬車の方が、もっと良いものを使っているかもしれない。
使用人たちが着ている、服を見るとそんな気がする。
今、ソレイユが着ている4年前から変わらない、フリルが付いた子供っぽい外出用のドレスよりも… 使用人たちの服の方が、ずっと新しく上等な布で仕立てられていて、すごくうらやましい。
階段をのぼる前に、玄関ホールを振り返り、床から壁、そして天井へとゆっくり視線をうつし観察し、ソレイユは独りごとをつぶやいた。
「ああ… とても美しいお屋敷だわ…」
ジャルダン子爵家も地元ではそれなりの歴史があって、子爵邸はとても優雅で美しいと近隣の貴族たちには評判だったけれど…? 豪華さも、敷地の面積も何もかもが、ペイサージュ伯爵邸の比では無いわ!
「ご… ごめんなさい! 私ったら、つい見惚れてしまって…」
ぼんやりと天井をながめていた自分に気づき、あわててジェランに謝罪し、ソレイユは階段の一段目に足をかける。
「いいえお嬢様、毎日見ている私でも見惚れてしまいますから、美しいものに目を奪われるのは仕方の無いことでございます」
「ふふふっ… 本当に… 美しいものばかりで、見るものが多くて困ってしまいますね」
柱を飾る漆喰飾りにしても、さりげなく庭で咲いた花々をいけた花瓶や家具にしても、とても古い物だが美しかった。
「はい、お嬢様」
執事のジェランはソレイユにあきれることなく、嬉しそうに微笑んだ。
邸内全体がどこもかしこも美術品だらけで、外から伯爵邸を見た時の幽霊が出そうなおどろおどろしい印象とは大きく違っている。
「……」
ソレイユはふと、実家のジャルダン子爵家に昔あった、美術品の数々を思い出していた。
他にもお祝いの時にだけ出して使う銀食器や、外国で作られたティーセット… すべて父が売り払い、義母たちのドレス代で消えてしまっている。
本来ならばソレイユがリベルテを婿養子にもらい、ジャルダン子爵家とともに美術品を受け継ぐはずだった。
今のまま、使うばかりで屋敷を維持する努力をしなければ、そう遠くない未来にジャルダン子爵家は没落して子爵家自体が無くなるだろう。
これからお父様はどうするつもりなのかしら? …とソレイユは痛む胸をそっと押さえた。
「お嬢様、長旅で大変お疲れのご様子ですが、お食事はお部屋でとられますか?」
「ええ、そうしてください…」
お腹もすいたけれど、それより辛いのは2日間も馬車に揺られ続け、お尻が痛くてこれ以上どこかに座り続けたら、悲鳴を上げてしまいそうだわ?! 早くコルセットをぬぎ捨てて、ベッドに転がってお尻を上にしたい!
ジャルダン子爵家には馬車が2台あり、新しく豪華でクッションが良くきいた方の馬車は… 義母が使うからと、ソレイユは長旅に出るにもかかわらず、使わせてもらえなかった。
古くてガタガタと振動がお尻に大きく伝わる、使用人用の馬車で伯爵邸まで来たのだ。
伯爵家の使用人用の馬車の方が、もっと良いものを使っているかもしれない。
使用人たちが着ている、服を見るとそんな気がする。
今、ソレイユが着ている4年前から変わらない、フリルが付いた子供っぽい外出用のドレスよりも… 使用人たちの服の方が、ずっと新しく上等な布で仕立てられていて、すごくうらやましい。
階段をのぼる前に、玄関ホールを振り返り、床から壁、そして天井へとゆっくり視線をうつし観察し、ソレイユは独りごとをつぶやいた。
「ああ… とても美しいお屋敷だわ…」
ジャルダン子爵家も地元ではそれなりの歴史があって、子爵邸はとても優雅で美しいと近隣の貴族たちには評判だったけれど…? 豪華さも、敷地の面積も何もかもが、ペイサージュ伯爵邸の比では無いわ!
「ご… ごめんなさい! 私ったら、つい見惚れてしまって…」
ぼんやりと天井をながめていた自分に気づき、あわててジェランに謝罪し、ソレイユは階段の一段目に足をかける。
「いいえお嬢様、毎日見ている私でも見惚れてしまいますから、美しいものに目を奪われるのは仕方の無いことでございます」
「ふふふっ… 本当に… 美しいものばかりで、見るものが多くて困ってしまいますね」
柱を飾る漆喰飾りにしても、さりげなく庭で咲いた花々をいけた花瓶や家具にしても、とても古い物だが美しかった。
「はい、お嬢様」
執事のジェランはソレイユにあきれることなく、嬉しそうに微笑んだ。
邸内全体がどこもかしこも美術品だらけで、外から伯爵邸を見た時の幽霊が出そうなおどろおどろしい印象とは大きく違っている。
「……」
ソレイユはふと、実家のジャルダン子爵家に昔あった、美術品の数々を思い出していた。
他にもお祝いの時にだけ出して使う銀食器や、外国で作られたティーセット… すべて父が売り払い、義母たちのドレス代で消えてしまっている。
本来ならばソレイユがリベルテを婿養子にもらい、ジャルダン子爵家とともに美術品を受け継ぐはずだった。
今のまま、使うばかりで屋敷を維持する努力をしなければ、そう遠くない未来にジャルダン子爵家は没落して子爵家自体が無くなるだろう。
これからお父様はどうするつもりなのかしら? …とソレイユは痛む胸をそっと押さえた。
75
あなたにおすすめの小説
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる