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13話 ペイサージュ伯爵3 アンバレside
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魔獣の呪毒に侵された自分を恐れない優しい女性… 名前もわからない『誰か』を、アンバレは引き止めたくて、必死に手をのばした。
「あ… 伯爵様?!」
『誰か』は戸惑い、アンバレがのばした手を、温かな手でキュッ… とにぎる。
「……ううっ!」
行かないで欲しい! お願いだ… 気付いてくれ!
頭を襲う激痛に耐えながら… 願いを込めてアンバレは、自分の手をにぎる『誰か』の手の、なめらかな肌を無骨な親指でなでた。
「あっ… あの… ええっと… 私にいて欲しいのですか?」
『誰か』に問われ、アンバレはもう1度、親指で肌をなでて、そうだと答えた。
「わかりました伯爵様… 病気やケガをした時は、誰でも心細くなるものですし…」
穏やかに『誰か』は笑い、アンバレの手をなだめるようになでた。
女性に腕をなでられたのは… アンバレの記憶ではケガをする前まで、遡らなければならない。
「……」
最後に女性に触れられた記憶は… 確か婚約者を夜会にエスコートした時以来だ!
婚約者だった令嬢は、ケガを負ったアンバレを見て、恐れおののき悲鳴をあげて気絶した。
結局、傷ついたアンバレに触れるどころか、2度と会うことなく、婚約解消となったのだ。
元婚約者のことを思い出し、アンバレの唇に苦笑が浮かぶ。
それを見ていた『誰か』が、笑った。
「ふふふっ… 私の尊敬するキルデリク・ブルイヤール卿が、伯爵様はとても美男子だと言っていたけれど、女性の私が嫉妬するぐらい、あなたは本当に美しい男性ですね… 笑っていると特に」
「…?!」
キルデリク・ブルイヤール卿…?! リベルテ・ブルイヤールの親族か?!
『ブルイヤール』 …その名を聞いて、アンバレの心臓が胸の中でドクンッ… と飛び跳ねた。
「……」
そうだった… 執事のジェランから、来客があったと報告を受けたのを忘れていた。
私の手をにぎる優しい女性は、私のせいで婚約者を失った、気の毒な女性『ジャルダン子爵家のソレイユ嬢』… 私が償わなければならない相手だ。
ソレイユ嬢の元婚約者、リベルテが女性に対して不誠実になったのは… 私が彼を魔法騎士団で、早く昇進させ過ぎたのが原因だから。
若くして昇進したリベルテを… 『将来有望な騎士』だと貴族の令嬢たちがむらがり、ちやほやと褒め称えた。
『婚約者がいても奪えば良い』と容姿の良いリベルテは、未婚の貴族令嬢たちにとって、良い結婚相手に見えたのだ。
「……っく…」
傲慢な男へと変わってしまった婚約者を、田舎で待ち続けたソレイユ嬢は、リベルテの不誠実さの犠牲となった!
私が騎士団でくだした選択が、ソレイユ嬢の未来を大きく変えてしまったのだ!
胸の中が苦い思いでいっぱいになり、久しぶりに浮かんだアンバレの笑みは消え去った。
「あ… 伯爵様?!」
『誰か』は戸惑い、アンバレがのばした手を、温かな手でキュッ… とにぎる。
「……ううっ!」
行かないで欲しい! お願いだ… 気付いてくれ!
頭を襲う激痛に耐えながら… 願いを込めてアンバレは、自分の手をにぎる『誰か』の手の、なめらかな肌を無骨な親指でなでた。
「あっ… あの… ええっと… 私にいて欲しいのですか?」
『誰か』に問われ、アンバレはもう1度、親指で肌をなでて、そうだと答えた。
「わかりました伯爵様… 病気やケガをした時は、誰でも心細くなるものですし…」
穏やかに『誰か』は笑い、アンバレの手をなだめるようになでた。
女性に腕をなでられたのは… アンバレの記憶ではケガをする前まで、遡らなければならない。
「……」
最後に女性に触れられた記憶は… 確か婚約者を夜会にエスコートした時以来だ!
婚約者だった令嬢は、ケガを負ったアンバレを見て、恐れおののき悲鳴をあげて気絶した。
結局、傷ついたアンバレに触れるどころか、2度と会うことなく、婚約解消となったのだ。
元婚約者のことを思い出し、アンバレの唇に苦笑が浮かぶ。
それを見ていた『誰か』が、笑った。
「ふふふっ… 私の尊敬するキルデリク・ブルイヤール卿が、伯爵様はとても美男子だと言っていたけれど、女性の私が嫉妬するぐらい、あなたは本当に美しい男性ですね… 笑っていると特に」
「…?!」
キルデリク・ブルイヤール卿…?! リベルテ・ブルイヤールの親族か?!
『ブルイヤール』 …その名を聞いて、アンバレの心臓が胸の中でドクンッ… と飛び跳ねた。
「……」
そうだった… 執事のジェランから、来客があったと報告を受けたのを忘れていた。
私の手をにぎる優しい女性は、私のせいで婚約者を失った、気の毒な女性『ジャルダン子爵家のソレイユ嬢』… 私が償わなければならない相手だ。
ソレイユ嬢の元婚約者、リベルテが女性に対して不誠実になったのは… 私が彼を魔法騎士団で、早く昇進させ過ぎたのが原因だから。
若くして昇進したリベルテを… 『将来有望な騎士』だと貴族の令嬢たちがむらがり、ちやほやと褒め称えた。
『婚約者がいても奪えば良い』と容姿の良いリベルテは、未婚の貴族令嬢たちにとって、良い結婚相手に見えたのだ。
「……っく…」
傲慢な男へと変わってしまった婚約者を、田舎で待ち続けたソレイユ嬢は、リベルテの不誠実さの犠牲となった!
私が騎士団でくだした選択が、ソレイユ嬢の未来を大きく変えてしまったのだ!
胸の中が苦い思いでいっぱいになり、久しぶりに浮かんだアンバレの笑みは消え去った。
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