25 / 92
22話 カルムの思惑2 カルムside
しおりを挟む王家主催の舞踏会に、王立魔法騎士団の代表として参加したカルムは… そこで、自分の弟リベルテに関する、変なうわさ話を耳にした。
『今年、社交デビューをした婚約者、ジャルダン子爵家の次女リュンヌ嬢に、リベルテ・ブルイヤール卿は夢中らしい』
「リベルテにリュンヌ嬢を婚約者だと紹介された…?!」
あの女癖の悪い愚弟は、なぜ自分の婚約者を姉のソレイユではなくて、義妹のリュンヌだと言ったのだ?! クソッ… 嫌な予感がする!!
騎士としては一流だが、社交界で女性にはだらしない男だと… そんなリベルテのうわさは、普段は社交界と縁遠いカルムの耳にまで、部下を通して届いていた。
「……」
今回、オレが耳にした話は悪質すぎる! これでは結婚した時、ソレイユが困ることになるぞ?! リベルテは何を考えているんだ?! 本気でソレイユではなくて、義妹のリュンヌと結婚する気か?! あんな顔だけの、頭が空っぽな女を選んだのか?!
カルムはブルイヤール家の長男として、義務を果たそうと… リベルテ本人に確かめた。
「リベルテ!! お前、どういうつもりだ? ソレイユの義妹を、自分の婚約者だと紹介しているのは本当なのか?!」
騎士団本部に顔を出したリベルテを、執務室に引っ張って行き、カルムは問いただす。
「だから… 今、王都で流行っている、"真実の愛" に目覚めたんだ! それに姉より、妹のほうが若くて可愛いと思ったから、変えただけさ」
リベルテは恥ずかしげもなく、うわさは本当だと肯定した。
「リベルテ、お前は…!! 自分が何を言っているのか、分かっているのか?!」
こいつは… ここまでクズだったのか?! 本当にオレの弟か?! 昔から自己中心的なところがあったが、騎士になり責任ある立場に身を置けば… 誠実さも育つと思っていたが…?!
弟のクズっぷりに、驚愕するカルムの顔を見て… リベルテは兄をバカにするように笑った。
「ジャルダン子爵も、娘のうちどちらかを選ぶなら、良いと言っているし… 別に好みで決めても良いだろう?」
「このバカ野郎―――ッ!!」
頭にきたカルムは、へらへらと笑う弟の顔を、思いっきり拳で殴りつけた。
「痛ッ…っ クソッ…!! 何するんだよ!! 今夜は公爵家の晩餐会があるのに、どうしてくれるんだ!?」
唇が切れてにじんだ血を指でぬぐいながら、リベルテは怒鳴り返した。
「お前はソレイユを何年も待たせて、かわいそうだとは思わないのか?!」
「あいつの顔なんて… 最後に見たのが昔すぎて、忘れたよ! 妹のリュンヌのほうが、可愛くて好みだから仕方ないだろう? そんなにソレイユが気になるなら、自分の愛人にすればいいんだよ!!」
カルムが愛妻家だと知るリベルテは、嫌がらせで卑劣な提案をして… ソレイユだけでなく、兄のカルムまで貶めようとした。
「お前はどこまでゲスなんだ?!」
こんなゲス野郎は、オレの弟じゃない! こいつとは近いうちに、縁を切ってやる!
「ジャルダン子爵夫人も、今なら王都にいるから、自分で聞いて見ろよ?! きっとソレイユを喜んで、愛人にくれるぜ? あの継母… ソレイユのことが大嫌いだからな!」
「おまえっ…!!」
リベルテのゲスな言葉に、カルムの頭の中は怒りで真っ赤に染まった。
「ああ、そう言えばアンティケール侯爵が、若い愛人を探していると、ジャルダン子爵夫人に教えてやったから… もしかするとソレイユを、高く売りつけるつもりかもしれないな?! クククッ… こういうのは早い者勝ちだから、急いだ方がいいぜ…?」
アンティケール侯爵とはソレイユよりも20歳は年上で、若い娘を愛人にしては、躾という名の暴力をふるうことで有名な、裕福な貴族である。
「……っ?!」
ジャルダン子爵夫人には、まだ会ったことは無いが… ソレイユを嫌っていると、実家の母から届いた手紙に書いてあった。
リベルテの言う通り、本当にアンティケール侯爵にソレイユが売られても、おかしくない状況かもしれない?!
そこでカルムはケガで療養中の親友、ペイサージュ伯爵に相談し… 2人はソレイユを伯爵家で保護することにした。
ジャルダン子爵夫人と会い、カルムはソレイユを引き取り保護しようと交渉した。
「まぁ、カルム様! 王立魔法騎士団の副団長様が私にどんな御用ですの?」
満面の笑みを浮かべて、ソレイユの義母は王都の高級ホテルで、カルムをむかえ入れた。
「ジャルダン子爵夫人… 実はソレイユ嬢のことですが… ええっとですね…」
この意地悪な継母から、ソレイユを救うには… どう説得しようか?!
この時、交渉をスムーズに進めるには… ジャルダン子爵夫人が納得できるような、ペイサージュ伯爵がソレイユを引き取る理由が必要だとカルムは考えた。
「子爵夫人… 実は大ケガで騎士団を辞めた伯爵が、逃げ出した婚約者の代わりを探しているのです… 私はソレイユなら、伯爵の顔に残る醜い傷痕を見ても、怯えて逃げることは無いと思いまして…」
と言うのがカルムには手っ取り早くて、説得しやすかったのだ。
気が強いが、そのぶん情もあつく、心優しいソレイユなら… 頑固で誇り高いなペイサージュ伯爵にピッタリだと、カルムはそう思った。
「まぁ! 助かりますわ… 行き遅れのあの子に、いつまでも子爵家に居座られては困りますから!」
「……っ!」
この… 恥知らずが!!
ジャルダン子爵夫人の下品な返答に、カルムは癇癪をおこして罵り出しそうになった。
…だが、いつもソレイユは、このような暴言に耐え続けているのだと思いだし、カルムはグッ… と我慢する。
87
あなたにおすすめの小説
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる