すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される

みみぢあん

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22話 カルムの思惑2 カルムside

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 王家主催の舞踏会に、王立魔法騎士団の代表として参加したカルムは… そこで、自分の弟リベルテに関する、変なうわさ話を耳にした。

『今年、社交デビューをした、ジャルダン子爵家の次女リュンヌ嬢に、リベルテ・ブルイヤールきょうは夢中らしい』


「リベルテにリュンヌ嬢をだと紹介された…?!」 
 あの女ぐせの悪い愚弟ぐていは、なぜ自分の婚約者を姉のソレイユではなくて、義妹のリュンヌだと言ったのだ?! クソッ… 嫌な予感がする!!

 騎士としては一流だが、社交界で女性にはだらしない男だと… そんなリベルテのうわさは、普段は社交界と縁遠えんどおいカルムの耳にまで、部下を通して届いていた。

「……」
 今回、オレが耳にした話は悪質すぎる! これでは結婚した時、ソレイユが困ることになるぞ?! リベルテは何を考えているんだ?! 本気でソレイユではなくて、義妹のリュンヌと結婚する気か?! あんな顔だけの、頭が空っぽな女を選んだのか?!

 カルムはブルイヤール家の長男として、義務を果たそうと… リベルテ本人に確かめた。


「リベルテ!! お前、どういうつもりだ? ソレイユの義妹を、自分の婚約者だと紹介しているのは本当なのか?!」
 騎士団本部に顔を出したリベルテを、執務室に引っ張って行き、カルムは問いただす。


「だから… 今、王都で流行はやっている、"真実の愛" に目覚めたんだ! それに姉より、妹のほうが若くて可愛いと思ったから、変えただけさ」
 リベルテは恥ずかしげもなく、うわさは本当だと肯定こうていした。

「リベルテ、お前は…!! 自分が何を言っているのか、分かっているのか?!」
 こいつは… ここまでクズだったのか?! 本当にオレの弟か?! 昔から自己中心的なところがあったが、騎士になり責任ある立場に身を置けば… 誠実さも育つと思っていたが…?!

 弟のクズっぷりに、驚愕きょうがくするカルムの顔を見て… リベルテは兄をバカにするように笑った。

「ジャルダン子爵も、娘のうちどちらかを選ぶなら、良いと言っているし… 別に好みで決めても良いだろう?」

「このバカ野郎―――ッ!!」
 頭にきたカルムは、へらへらと笑う弟の顔を、思いっきりこぶしなぐりつけた。

「痛ッ…っ クソッ…!! 何するんだよ!! 今夜は公爵家の晩餐ばんさん会があるのに、どうしてくれるんだ!?」
 唇が切れてにじんだ血を指でぬぐいながら、リベルテは怒鳴り返した。

「お前はソレイユを何年も待たせて、かわいそうだとは思わないのか?!」

「あいつの顔なんて… 最後に見たのが昔すぎて、忘れたよ! 妹のリュンヌのほうが、可愛くて好みだから仕方ないだろう? そんなにソレイユが気になるなら、自分の愛人にすればいいんだよ!!」
 カルムが愛妻家だと知るリベルテは、嫌がらせで卑劣ひれつな提案をして… ソレイユだけでなく、兄のカルムまでおとしめようとした。

「お前はどこまでゲスなんだ?!」
 こんなゲス野郎は、オレの弟じゃない! こいつとは近いうちに、えんを切ってやる!

「ジャルダン子爵夫人も、今なら王都にいるから、自分で聞いて見ろよ?! きっとソレイユを喜んで、愛人にくれるぜ? あの継母ままはは… ソレイユのことが大嫌いだからな!」

「おまえっ…!!」
 リベルテのゲスな言葉に、カルムの頭の中は怒りで真っ赤に染まった。

「ああ、そう言えばアンティケール侯爵が、若い愛人を探していると、ジャルダン子爵夫人に教えてやったから… もしかするとソレイユを、高く売りつけるつもりかもしれないな?! クククッ… こういうのは早い者勝ちだから、急いだ方がいいぜ…?」

 アンティケール侯爵とはソレイユよりも20歳は年上で、若い娘を愛人にしては、しつけという名の暴力をふるうことで有名な、裕福な貴族である。 

「……っ?!」
 ジャルダン子爵夫人には、まだ会ったことは無いが… ソレイユを嫌っていると、実家の母から届いた手紙に書いてあった。  
 リベルテの言う通り、本当にアンティケール侯爵にソレイユが売られても、おかしくない状況かもしれない?!


 そこでカルムはケガで療養中の親友、ペイサージュ伯爵に相談し… 2人はソレイユを伯爵家で保護することにした。



 
 ジャルダン子爵夫人と会い、カルムはソレイユを引き取り保護しようと交渉こうしょうした。


「まぁ、カルム様! 王立魔法騎士団の副団長様が私にどんな御用ですの?」
 満面の笑みを浮かべて、ソレイユの義母は王都の高級ホテルで、カルムをむかえ入れた。

「ジャルダン子爵夫人… 実はソレイユ嬢のことですが… ええっとですね…」
 この意地悪な継母ままははから、ソレイユを救うには… どう説得しようか?!

 この時、交渉こうしょうをスムーズに進めるには… ジャルダン子爵夫人が納得できるような、ペイサージュ伯爵がソレイユを引き取る理由が必要だとカルムは考えた。


「子爵夫人… 実は大ケガで騎士団を辞めた伯爵が、逃げ出した婚約者の代わりを探しているのです… 私はソレイユなら、伯爵の顔に残るみにく傷痕きずあとを見ても、おびえて逃げることは無いと思いまして…」
 と言うのがカルムには手っ取り早くて、説得しやすかったのだ。

 気が強いが、そのぶん情もあつく、心優しいソレイユなら… 頑固がんこほこり高いなペイサージュ伯爵にピッタリだと、カルムはそう思った。

「まぁ! 助かりますわ… 行き遅れのあの子に、いつまでも子爵家に居座いすわられては困りますから!」

「……っ!」
 この… 恥知らずが!!

 ジャルダン子爵夫人の下品な返答に、カルムは癇癪かんしゃくをおこしてののしり出しそうになった。

 …だが、いつもソレイユは、このような暴言ぼうげんに耐え続けているのだと思いだし、カルムはグッ… と我慢する。




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