すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される

みみぢあん

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24話 伯爵の胸の内 アンバレside

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 険悪な表情で伯爵はカルムをにらみつける。

「つまり… ジャルダン子爵夫人に、私が『新しい婚約者を探している』と… お前が無責任なうそをついたせいで、ソレイユ嬢は私と結婚するために王都まで来たと言うのだな?」
 まったく… この男が交渉こうしょうごとが、苦手なのは知っていたが… 何てやつだ?! だが、ソレイユ嬢と私を思えばこそのうそだと思うと、強くは言えないし… 頭が痛い話だ!

 伯爵は、ハァ――っ… とため息をつく。

「団長がソレイユと結婚すれば、うそでは、なくなるだろう?! オレには2人が、お似合いに見えるぞ?!」
 カルムは伯爵と目を合せないよう、ふらふらと視線を彷徨さまよわせた。

「お前は子供か、カルム?! しっかり私の目を見て話せ!! 天井や絨毯じゅうたんは、うそつきのお前を、助けてはくれないぞ?!」
 伯爵は腕組みをして高圧的に、説教モードで元部下をしかりつけると… 開きなおったカルムは、キッ… と伯爵をにらみ返す。

「だからオレはああいう交渉こうしょうごとは苦手なんだよ! 知っているだろう? 団長が行けば良かったのに!」

「カルム、騎士団の団長はお前だろう?! いい加減、腹をくくれ! だいたい、今回のことで一番、傷つくのはソレイユ嬢ではないか!! 少しは考えたのか?!」
 ジャルダン子爵家とまったく接点せってんの無い私が交渉こうしょうできるわけがないだろう…? やれやれ…

 腕組みをした伯爵は、カルムよりこぶし一つ分高い目線で、冷ややかに見下ろす。

「だから、ソレイユは団長と結婚するから、傷つくわけないと思っていた!! 信じていたのにガッカリだよ!! …ていうか団長はなんで、ソレイユと結婚しないんだ? 逃げ出した公爵令嬢よりも、ずっと美人で可愛いのに?! それとも団長は、オレの妹は公爵令嬢に負けるとでも、言うのか?!」

「確かにソレイユ嬢は、美人で可愛い! 私好みで勇敢ゆうかんだし、とても慈愛じあいに満ちた素晴らしい女性だ! 彼女の姿を初めて見た時など、滅多めったにいない美女だから、女神ルージュが彼女の姿であらわれたと言われても、疑わなかっただろう!! だが、ソレとコレとは別だ!!」

「何が別なんだよ?! あんた今、ソレイユにべた惚れだって、自分で言ったじゃないか?!」
 何が問題なのかわからないと… カルムは面倒くさそうに、眉間みけんにしわをよせる。

「確かにソレイユ嬢に一目惚れしたと、言っても良いぐらいだ!! だが私の顔のみにく傷痕きずあとは、傷の奥まで染み込んだ呪毒じゅどくのせいで、毎晩ひどい悪さをする… そんな私の隣に、彼女がいたら気の毒だろう?」

「何が、気の毒なんだよ?! ソレイユは少しでも、団長を嫌がったのか?」

「…だからこんなみにくい顔を、彼女が一生見続けることが、かわいそうだと言ったのさ!!」
 ソレイユ嬢のような、素晴らしい女性の隣に、私ほど似合わない男は、いないだろう?!

「団長の… ソレイユと結婚出来ない理由は、それだけか? ソレイユに何か、不満があるわけではないのだな?」
 カルムは視線をチラリッ… と伯爵のななめ後方にうつす。

「あるわけないだろう? ソレイユ嬢は完璧だ!」
 まったく何度言えば気が済むのだ、カルムは?! 私だって右目の傷痕きずあとが無ければ、ソレイユ嬢を口説いていたさ!

 伯爵はムスッ… とねた。

「ヨッ~シ―――ッ!!!! 婚約式は明日の午後だ!! それで決まりだっ!!」
 大声でカルムは宣言する。

「何?!! お前は人の話を、聞いていなかったのか?! カルム?!」
 伯爵はカルムをにらみつけるが… カルムは聞く耳を持たずニヤニヤ笑いを浮かべた。

「そんなものはソレイユが、『はい』 …と言えば、決まることなんだよ!!! なぁ~…? ソレイユ―――ッ?!!!!」

「なっ…?!!」
 伯爵はハッ… と息をのみ、ゆっくり自分の背後を振り返ると… 満面の笑みを浮かべたジェランとともに、真っ赤な顔のソレイユが、祈るように両手を組み合わせて立っている。

 ソレイユに負けないぐらい伯爵の顔も、燃え盛る炎にあぶられたかのように真っ赤に染まった。

「カルム―――ッ!!! ソレイユ嬢はどこから私の話を聞いていたのだ?!! どこからだ―――ッ?!!!」
 真っ赤な顔でさけびながら、伯爵はヘラヘラと笑うカルムの肩をつかみ、ガクガクと揺さぶる。


「『確かにソレイユ嬢は、美人で可愛い! 私好みで勇敢ゆうかんだし、とても慈愛じあいに満ちた素晴らしい女性だ! 彼女の姿を初めて見た時など、滅多めったにいない美女だから女神ルージュが彼女の姿であらわれたと言われても疑わなかっただろう!!』 …と旦那様が熱心に、ソレイユお嬢様に対して熱い思いを告白されていた時からです」
 カルムの代わりに、ジェランがサラリと答えた。


「はぁっくっ… うう…っ――――――…!!!!」
 にぎりしめたこぶしまで赤く染まった伯爵は、言葉を忘れたように、何も話せなくなった。

「うううっ… うっ…」
 組み合わせてい手をくと… ソレイユは両手で真っ赤に染まった顔を隠し、嗚咽おえつをもらす。

「ソ… ソレイユ嬢?!」
 あわてて伯爵はそばに行き、少しだけ躊躇ちゅうちょしてから、そっとソレイユの腕に触れる。

「うっ… ふっ… う…」
「すまないソレイユ嬢、恥かしかっただろう? その… 私などに思いを寄せられて…」

 
 困った顔で伯爵は、ソレイユに話しかけた。







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