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25話 求婚 アンバレside
しおりを挟む耳まで真っ赤にして顔を隠すソレイユに、伯爵は何度も謝罪した。
「すまないソレイユ嬢… その… 恥ずかしい思いをさせて…!」
「いいえ…っ…」
「悪かった… 本当に…」
私でもこんなに恥ずかしいのだから… 淑女のソレイユ嬢は、もっと恥ずかしいだろう。
まったく… カルムのやつめ! ソレイユ嬢が私の背後にいると、知っていて挑発したな?!
自分の顔に大きな傷痕があることなど、すっかり忘れた伯爵は顔を近づけ、ソレイユが手で隠す赤い顔をのぞきこんだ。
その時、そろそろと静かに部屋から逃げ出す、カルムとジェランの姿が伯爵の視界に入る。
「いいえ… 私… 男性からあんなに素敵な告白をされたのが、初めてだったので… 嬉しくて… 婚約していたリベルテでさえ、田舎娘の私には、あんなふうには言ってはくれなかったから…!」
顔を手のひらで隠したまま話すソレイユの口から、リベルテの名が出て伯爵は顔をしかめた。
「ソレイユ嬢…! 君は心も姿も… 何もかも美しい! 褒め称えられて当然なんだ! リベルテの頭はおかしいのだ!」
昨夜の私は、呪毒に侵された苦痛に耐えられず、夜が明けたらこの命をすてるつもりだった! そんな時、優しい手を差しのべてくれたソレイユ嬢にどれほど救われたか?! キラキラと輝く君は本当に… 苦しむ私に慈悲を与えようと、女神があらわれたかと思ったぐらいだ!
「私よりも伯爵様の方がずっと美しくて素敵ですわ… 昨夜も言いましたが、伯爵様はとても美しい男性ですからいけないと思うのに、私はずっと… 伯爵様が苦しむ姿さえ、美しいと見惚れてしまいました…」
手のひらをずらし恥かしそうに唇だけを隠して、アンバレを見あげるソレイユはとても可愛かった。
「ソレイユ嬢… 君が私に見惚れてくれたのなら、昨夜は苦しむだけの価値があったと言うことだな…?」
笑ったぞ?! ソレイユ嬢が笑った! なんて可愛いんだ?! もっと、もっと笑わせたい!
ソレイユから笑顔を引き出したくて、伯爵はユーモアをしぼりだす。
今までのアンバレなら、騎士団長の威厳を守るため、女性を笑わせようと必死になることなど、元婚約者にさえしたことが無い。
「伯爵様… ふふふふっ…」
嬉しそうにソレイユは笑う。
「……っ!」
昨夜、寝室で見た笑顔だ! この綺麗な笑顔に、私は癒された! ああ、ずっと見ていたい…!
キラキラと輝きを増した、ソレイユの金色の瞳に、涙の粒を見つけ伯爵は慎重に指さきでぬぐう。
伯爵は覚悟を決めた。
「ソレイユ嬢… 私のそばにいると、君はたくさん苦労するだろう… そんな私でも良いと君が思うなら、私の妻になって欲しい! 私の気持ちはさっき話した通りで、うそは1つも無い…」
今の私がソレイユ嬢を、幸せにできるかどうか不安だが… 全力でソレイユ嬢が幸せになれるよう、努力すると誓う!
アンバレはゆっくりと自分の気持ちを伝え… ソレイユに求婚した。
「伯爵様は…」
「アンバレ… と呼んでくれると嬉しい」
「ええ? あ、はい… ア… アンバレ様は純潔を失った田舎娘でも良いのですか?」
ソレイユはアンバレから視線をそらし、表情を曇らせる。
「君が妻になって、夫だけを愛してくれるなら、私は気にしない! 私だって、その… すでに童貞では無いのだから… そこは同じだよ? それに伯爵領も田舎にある、 …つまり私も田舎者だ!」
純潔にこだわりはない。
こうやってソレイユ嬢が確認するのは、それだけ誠実な証拠だ! 増々、好ましい!
「…っ」
ホッ… とソレイユが小さなため息をついたのを、アンバレは見逃さなかった。
「他に気になることは?」
「ありません…」
恥かしそうにソレイユは、ふわりと微笑む。
「返事を聞かせてくれるか? 君の返事しだいで、婚約式は明日の午後に行うらしいから」
カルムはたぶん… 私を追い詰めようと、勝手に騎士団の部下たちに、婚約式のことを連絡しているだろう? カルムはそういう奴だ。
「あらら…」
「ソレイユ嬢?」
「はい! 伯… ア… アンバレ様… 私と結婚してください! あなたの妻になって… 生涯、夫だけを愛すとお約束します!」
「私も妻だけを愛すと約束するよ」
アンバレは笑い、そのままソレイユの額にキスを落とした。
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