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花祭り~仲違い~
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クロエは、夜、自室で窓の外を見ながら、考え事をしていた。
怒涛のような日々が過ぎ数ヵ月が経っていた。最近は、リナリー、イオ、ラリーのおかげで、楽しく学園生活を送ることができていた。
しかし、夜に部屋で1人になると、どうしようもなく気持ちが沈んでしまう時があった。
10年もの間、一心に心を捧げた相手、幼馴染みでもあり、婚約者でもあったアリオンから、拒否され突き放されてしまったことは、クロエの心の傷として残っていた。
嫌いになれれば良かったのに、クロエが思い出すのは、2人で過ごした楽しかった思い出ばかりだった。
机の上に、押し花のデザインをしたきれいな栞が目に入った。
この栞は、去年の祭日を祝う花祭りで、アリオンに買ってもらったものだった。
花祭りには、毎年一緒に遊びに行っており、栞が欲しいというクロエに、アリオンがプレゼントしてくれたのだった。
その押し花は明るいブルーの色をしていた。
最初、アリオンは、紫の押し花を指差し、
「クロエの髪と瞳の色によく似ててキレイだから、これはどう?」
とすすめてくれたが、クロエはブルーの押し花がいいと断った。
ブルーにした理由は、まるでアリオンの瞳の色のような栞を手元に置いておきたかったからである。
そのように言うのは恥ずかしかったので、青い花が好きだということにしておいた。
そういえば、もうすぐ花祭りの季節がやってくる。
毎年この季節が近づくと、アリオンとお出かけできるとウキウキしていたクロエだったが、去年とは何もかもが変わってしまった。
ウキウキした気持ちよりも、憂鬱な気分になるクロエであった。
◇
翌日、いつもの3人と食堂にいた時のこと、もうすぐ花祭りだね、という話題になった。
花祭りとは、国民の一人一人が大切な人に花を渡し、人民と国の反映を願う、という祭日である。
大広間では、たくさんの出店が立ち並び、決まった時間になると、花吹雪が舞う中を、皆で喜び合いながら踊るというイベントがあり、
国民全体が盛り上がる祭日でもあった。
ラリーが、懐かしいなと笑いながら言った。
「去年は3人で花祭り行ったんだよね!広間で待ち合わせしてたんだけど、一番先に着いたイオが、何人もの女子から花束渡されちゃって、リナリーと僕が着いたときには、『大量の花束を抱えた、これから好きな人に告白する少年』みたいになってて。」
「そういえばそうだった!私告白されるのかと思ったもん!」
とリナリーがイオを指差しながら笑った。
イオもそうだったと楽しそうに笑った。
3人は花祭りを楽しみにしているのだなと思い、クロエは微笑んだ。
「クロエは?今年はどうするの?」
リナリーに聞かれ、クロエは答えずらくなってしまい、うつむき加減に答えた。
「えっと。。。私は今年は遠慮しとくわ。人混み嫌いだし。」
リナリーは、ありえないという表情で、クロエの手を掴んで言った
「クロエ!アイツらに会いたくないから??」
リナリーに言われ、クロエはなんだか認めたくない気持ちになり反論した。
「そういうわけじゃないわ。ただ、なんとなく、行きたくないだけで。。。」
「じゃあ、私たちと一緒に行きたくないってこと?」
リナリーが拗ねたようにこう続けた。
「もう3ヶ月経つんだよ?少しは前に進まないと!」
リナリーに言われたことはまさにその通りであったが、クロエは珍しく、リナリーに言い返した。
「・・・あなたには、私の気持ちなんか分からないわよ。」
リナリーは傷付いたような顔をし、ガタンと席を立って、
「ええ、私には分かんない!勝手にすれば?」
と言い残して食堂を出ていってしまった。
ラリーは、焦りながら
「もうっ!あいつはほんとに。。!」
と呟き、リナリーの後を追って行った。
クロエとイオは取り残され、しばしシーンとした空気が流れた。
「・・・・あークロエ、ごめんな?アイツ、クロエと祭りに行けるって楽しみにしてたみたいで。許してやって。」
イオがそういうと、
「リナリーは悪くないわ。私、嫌われちゃったかな。」
クロエが寂しそうに呟いた。
クロエは女友達がいたことがなく、どう言えば良かったのか、また、仲直りの仕方も分からなかった。
イオは、何かを思い付いたような顔をして、
「クロエ、来て。」
といい、クロエの手を引きながら外へ連れ出した。
連れていかれたのは、学園から少し離れた、小高い丘に大きな木のある、見晴らしのいい場所だった。
木の根本に2人で腰を下ろした。草の匂いと、そよそよと吹く風の音が心地いい。
こんな場所があるなんて、クロエは知らなかった。イオは草の上にゴロンと寝転んだ。
「俺は、サボりたくなった時とか、色々考えちゃう時とか、たまに来るんだ。なんかこの大きい木見てたら、色んなことがどうでもよくなるというか、なるようになるかって気がして。」
「一人占めしたかったから、リナリーにもラリーにも内緒の場所だけど。クロエは特別。」
イオは、いたずらっぽく笑ってそう言った。
自分を元気付けようとしてくれた、イオの優しさが嬉しくて、不覚にも少し泣きそうになってしまった。
クロエもイオの隣に寝転がり、目をつむった。
昼休みが終わるギリギリまで、2人は静かに寝転んでいた。
怒涛のような日々が過ぎ数ヵ月が経っていた。最近は、リナリー、イオ、ラリーのおかげで、楽しく学園生活を送ることができていた。
しかし、夜に部屋で1人になると、どうしようもなく気持ちが沈んでしまう時があった。
10年もの間、一心に心を捧げた相手、幼馴染みでもあり、婚約者でもあったアリオンから、拒否され突き放されてしまったことは、クロエの心の傷として残っていた。
嫌いになれれば良かったのに、クロエが思い出すのは、2人で過ごした楽しかった思い出ばかりだった。
机の上に、押し花のデザインをしたきれいな栞が目に入った。
この栞は、去年の祭日を祝う花祭りで、アリオンに買ってもらったものだった。
花祭りには、毎年一緒に遊びに行っており、栞が欲しいというクロエに、アリオンがプレゼントしてくれたのだった。
その押し花は明るいブルーの色をしていた。
最初、アリオンは、紫の押し花を指差し、
「クロエの髪と瞳の色によく似ててキレイだから、これはどう?」
とすすめてくれたが、クロエはブルーの押し花がいいと断った。
ブルーにした理由は、まるでアリオンの瞳の色のような栞を手元に置いておきたかったからである。
そのように言うのは恥ずかしかったので、青い花が好きだということにしておいた。
そういえば、もうすぐ花祭りの季節がやってくる。
毎年この季節が近づくと、アリオンとお出かけできるとウキウキしていたクロエだったが、去年とは何もかもが変わってしまった。
ウキウキした気持ちよりも、憂鬱な気分になるクロエであった。
◇
翌日、いつもの3人と食堂にいた時のこと、もうすぐ花祭りだね、という話題になった。
花祭りとは、国民の一人一人が大切な人に花を渡し、人民と国の反映を願う、という祭日である。
大広間では、たくさんの出店が立ち並び、決まった時間になると、花吹雪が舞う中を、皆で喜び合いながら踊るというイベントがあり、
国民全体が盛り上がる祭日でもあった。
ラリーが、懐かしいなと笑いながら言った。
「去年は3人で花祭り行ったんだよね!広間で待ち合わせしてたんだけど、一番先に着いたイオが、何人もの女子から花束渡されちゃって、リナリーと僕が着いたときには、『大量の花束を抱えた、これから好きな人に告白する少年』みたいになってて。」
「そういえばそうだった!私告白されるのかと思ったもん!」
とリナリーがイオを指差しながら笑った。
イオもそうだったと楽しそうに笑った。
3人は花祭りを楽しみにしているのだなと思い、クロエは微笑んだ。
「クロエは?今年はどうするの?」
リナリーに聞かれ、クロエは答えずらくなってしまい、うつむき加減に答えた。
「えっと。。。私は今年は遠慮しとくわ。人混み嫌いだし。」
リナリーは、ありえないという表情で、クロエの手を掴んで言った
「クロエ!アイツらに会いたくないから??」
リナリーに言われ、クロエはなんだか認めたくない気持ちになり反論した。
「そういうわけじゃないわ。ただ、なんとなく、行きたくないだけで。。。」
「じゃあ、私たちと一緒に行きたくないってこと?」
リナリーが拗ねたようにこう続けた。
「もう3ヶ月経つんだよ?少しは前に進まないと!」
リナリーに言われたことはまさにその通りであったが、クロエは珍しく、リナリーに言い返した。
「・・・あなたには、私の気持ちなんか分からないわよ。」
リナリーは傷付いたような顔をし、ガタンと席を立って、
「ええ、私には分かんない!勝手にすれば?」
と言い残して食堂を出ていってしまった。
ラリーは、焦りながら
「もうっ!あいつはほんとに。。!」
と呟き、リナリーの後を追って行った。
クロエとイオは取り残され、しばしシーンとした空気が流れた。
「・・・・あークロエ、ごめんな?アイツ、クロエと祭りに行けるって楽しみにしてたみたいで。許してやって。」
イオがそういうと、
「リナリーは悪くないわ。私、嫌われちゃったかな。」
クロエが寂しそうに呟いた。
クロエは女友達がいたことがなく、どう言えば良かったのか、また、仲直りの仕方も分からなかった。
イオは、何かを思い付いたような顔をして、
「クロエ、来て。」
といい、クロエの手を引きながら外へ連れ出した。
連れていかれたのは、学園から少し離れた、小高い丘に大きな木のある、見晴らしのいい場所だった。
木の根本に2人で腰を下ろした。草の匂いと、そよそよと吹く風の音が心地いい。
こんな場所があるなんて、クロエは知らなかった。イオは草の上にゴロンと寝転んだ。
「俺は、サボりたくなった時とか、色々考えちゃう時とか、たまに来るんだ。なんかこの大きい木見てたら、色んなことがどうでもよくなるというか、なるようになるかって気がして。」
「一人占めしたかったから、リナリーにもラリーにも内緒の場所だけど。クロエは特別。」
イオは、いたずらっぽく笑ってそう言った。
自分を元気付けようとしてくれた、イオの優しさが嬉しくて、不覚にも少し泣きそうになってしまった。
クロエもイオの隣に寝転がり、目をつむった。
昼休みが終わるギリギリまで、2人は静かに寝転んでいた。
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