【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、元婚約者を諦められない

きなこもち

文字の大きさ
14 / 34

花祭り2~イオとの距離~

しおりを挟む
 それから数日間、リナリーは食堂にも放課後も姿を見せなくなっていた。

 いよいよ嫌われたか、とクロエが落ち込んでいると、ラリーが言った。

「リナリーはああ見えて不器用なんだ。ほんとは仲直りしたいくせに、素直になれないだけ。少し時間かかると思うけど、待ってあげて。」

 クロエは自分から話しに行こうと思ったが、今は時間をおいた方がいい気がした。

 ラリーは、リナリーと一緒にいることが増えた為、そんな時は、クロエとイオはあの2人の場所で共に時間を過ごした。

 2人で寝転がって静かに過ごすときもあれば、
 ポツポツと話をする時もあった。

 クロエには、適当に話せるような話があまりなかったが、イオが話す、昨日テオが何をやらかしたとか、ラリーとの昔のエピソードなど、なんてことない日常の話を聞くのが好きだった。

 楽しそうに話すイオの目を見て、クロエは突然こう言った。

「イオって木みたいね。」

 イオは意味が分からず、一瞬固まり、「え。。。木???」となっていた。


「うん、何も言わずにただそこにいて、大きな心で私を癒してくれるから、この木みたいだなって。」

 クロエがそういうと、イオは少し顔を赤くして、真剣な表情でクロエに聞いた。

「それは、クロエの中で俺が特別ってこと?」

 イオに質問され、クロエは本音で答えた。

「・・・ええ。イオは特別よ。一緒にいて楽しいし、それに」

「この時間が終わる時、私いつも残念な気持ちになるのよ。ずっとこのままだったらいいのになって。。。」

 クロエは本心をありのまま伝えたのだったが、イオはうろたえて何も言えなくなってしまった。

 少し落ち着いて、クロエの方に向き直り、緊張しながらこう言った。

「俺も、クロエとずっと一緒にいたいなって思ってるよ。」

 イオの緊張で赤くなった耳と、気を許した相手にしか見せない、少し甘えたような目元を見て、クロエはイオから目が離せなくなり、動悸が収まらなくなった。

 そんな時、ちょうど授業開始5分前の予鈴が鳴った。

「あ、そろそろ行こっか」

 とイオが呟き、すごく自然にクロエの手を取って歩きだした。引き連れているというよりは、まるで恋人同士が手をつないでいる感覚に陥り、クロエはさらにドキドキが止まらなくなった。

 イオは絶対に天性の女たらしだとクロエは思った。


 ◇


 それから、花祭り前日になった。

 リナリーとはあれから話せないままだったが、
 集合場所と時間は教えられていた。

「もし気が向いたら来て。」

 とラリーに言われていた。

 イオのおかげもあり、クロエは前に進める気がした。また、リナリーとも話がしたかった。

 明日の花祭りに行こうと決心したクロエだった。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

放蕩な血

イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。 だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。 冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。 その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。 「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」 過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。 光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。 ⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。

追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~

ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。 完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、 家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。 そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。 「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」 契約だけの夫婦のはずだった。 お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。 静かで優しさを隠した公爵。 無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。 二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。 しかしその噂は王国へ戻り、 「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。 「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」 契約結婚は終わりを告げ、 守りたい想いはやがて恋に変わる──。 追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。 そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、 “追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。 ---

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

冷徹王子に捨てられた令嬢、今ではその兄王に溺愛されています

ゆっこ
恋愛
 ――「お前のような女に、俺の隣は似合わない」  その言葉を最後に、婚約者であった第二王子レオンハルト殿下は私を冷たく突き放した。  私、クラリス・エルデンは侯爵家の令嬢として、幼い頃から王子の婚約者として育てられた。  しかし、ある日突然彼は平民出の侍女に恋をしたと言い出し、私を「冷酷で打算的な女」だと罵ったのだ。  涙も出なかった。  あまりに理不尽で、あまりに一方的で、怒りも悲しみも通り越して、ただ虚しさだけが残った。

【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 前世持ちのファビアは、ちょっと変わった子爵令嬢に育っていた。その彼女の望みは、一生ケーキを食べて暮らす事! その為に彼女は魔法学園に通う事にした。  継母の策略を蹴散らし、非常識な義妹に振り回されつつも、ケーキの為に頑張ります!

『お前とは結婚できない』と婚約破棄されたので、隣国の王に嫁ぎます

ほーみ
恋愛
 春の宮廷は、いつもより少しだけざわめいていた。  けれどその理由が、わたし——エリシア・リンドールの婚約破棄であることを、わたし自身が一番よく理解していた。  「エリシア、君とは結婚できない」  王太子ユリウス殿下のその一言は、まるで氷の刃のように冷たかった。  ——ああ、この人は本当に言ってしまったのね。

【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」 婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。 ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。 表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723) 【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19 【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+ 2021/12  異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過 2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

処理中です...