【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、元婚約者を諦められない

きなこもち

文字の大きさ
15 / 34

花祭り3~事件~

しおりを挟む
 花祭り当日になった。

 朝起きたクロエは、少し緊張していたが、なんだか久しぶりにワクワクした気分だった。

 花祭りに着ていくのは、花柄の赤と白のドレス風ワンピースにした。髪は普段は下ろしていることが多いのだが、今日はハーフアップにして花の髪飾りも付けた。

 クロエの両親は、久しぶりの娘のおしゃれした姿と明るい表情に喜び、

「まぁ、クロエなんて可愛らしいの!お友達と楽しんできてね。」

 と笑顔でクロエを見送った。


 目的地に着くと、既にラリーとイオが待っていた。クロエの制服姿しか見たことがない2人は、クロエの私服姿を見て

「うわ~~まじかわいい。。。」

 と、心の声を漏らした。

 そこへ、リナリーが遅れて現れた。
 リナリーは黄色いワンピースを着ており、スタイルも際立っていてとても可愛かった。

 クロエの姿を見たリナリーは一瞬立ち止まり、すぐに走り寄ってきて、クロエに抱きついた。

「クロエ~~!!ごめんねぇ~!!!私馬鹿だからさぁ。」

 とリナリーは泣きながら謝ってきた。

 クロエはリナリーの背中を擦りながら、

「私の方こそごめんね。リナリーと仲直りしたかった。」

 と言うと、リナリーは満面の笑顔になり、再びクロエを抱き締めた。

 しばらく2人がくっついていると、イオがリナリーをクロエから引き剥がした。

「おい!いつまでもクロエにイチャイチャするな!俺たちのことを無視しやがって。それに遅刻だぞ!」

 イオがぶつぶつと文句を言うと、リナリーはごめんごめんとおどけてみせた。


 それから3人は、市場を探索したり、屋台のものを食べ、花祭りを楽しんでいた。


 ◇


 アリオンは1人で花祭りにきていた。

 セリーナとルイに一緒に行こうと誘われたが断った。そんな気分になれなかったし、最近は1人の方が気が楽になっていた。

 クロエとの思い出しかないこの場所に、足を運ぶのは辛かったが、もしかしたら一目彼女を見ることができるかもしれないと思った。

 隣に誰がいたとしても、学園では見せない、楽しそうな表情の彼女を一目見れたら帰るつもりだった。

 大広場の近くにベンチに腰かけていると、声をかけられた。

「アリオン様~!!もう~~来るなら来ると行ってくださいよ!」

 セリーナだった。隣にルイもいる。

 ルイは、セリーナがアリオンに声をかけたことが面白くなかったようで、明らかに不機嫌そうな顔をしていた。

 正直、3人で行動を共にするつもりがなかったアリオンは、

「いや、僕は。。。」

 といいかけた時だった。


 14時の鐘がなり、大広間では花びらが吹き乱れた。鐘の音と共に、周辺にいた人々が、大広間に集まってきた。


 音楽が流れ始め、花吹雪が舞う中、皆、恋人や家族、友人らと手を繋いだり、抱き合ったりしながら踊り始めた。

 アリオンは、毎年この踊りには参加したことがなかったため、呆気にとられて見ていた。
 皆幸せそうである。

 その時、少し離れたところに、クロエがいるのが見えた。

 そして、目が合った。






しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

放蕩な血

イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。 だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。 冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。 その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。 「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」 過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。 光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。 ⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。

追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~

ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。 完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、 家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。 そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。 「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」 契約だけの夫婦のはずだった。 お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。 静かで優しさを隠した公爵。 無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。 二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。 しかしその噂は王国へ戻り、 「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。 「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」 契約結婚は終わりを告げ、 守りたい想いはやがて恋に変わる──。 追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。 そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、 “追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。 ---

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

冷徹王子に捨てられた令嬢、今ではその兄王に溺愛されています

ゆっこ
恋愛
 ――「お前のような女に、俺の隣は似合わない」  その言葉を最後に、婚約者であった第二王子レオンハルト殿下は私を冷たく突き放した。  私、クラリス・エルデンは侯爵家の令嬢として、幼い頃から王子の婚約者として育てられた。  しかし、ある日突然彼は平民出の侍女に恋をしたと言い出し、私を「冷酷で打算的な女」だと罵ったのだ。  涙も出なかった。  あまりに理不尽で、あまりに一方的で、怒りも悲しみも通り越して、ただ虚しさだけが残った。

【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 前世持ちのファビアは、ちょっと変わった子爵令嬢に育っていた。その彼女の望みは、一生ケーキを食べて暮らす事! その為に彼女は魔法学園に通う事にした。  継母の策略を蹴散らし、非常識な義妹に振り回されつつも、ケーキの為に頑張ります!

『お前とは結婚できない』と婚約破棄されたので、隣国の王に嫁ぎます

ほーみ
恋愛
 春の宮廷は、いつもより少しだけざわめいていた。  けれどその理由が、わたし——エリシア・リンドールの婚約破棄であることを、わたし自身が一番よく理解していた。  「エリシア、君とは結婚できない」  王太子ユリウス殿下のその一言は、まるで氷の刃のように冷たかった。  ——ああ、この人は本当に言ってしまったのね。

【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」 婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。 ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。 表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723) 【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19 【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+ 2021/12  異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過 2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

処理中です...