破滅エンド後にバグ!?BL乙女ゲームのヒロインポジションが、悪役サブキャラの俺に移ってます!?

きなこもち

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俺だけのかわいいペット

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 (第一王子 レイン視点)

 俺は、この国の第一王子だ。

 生まれながらにして高貴な身分、容姿端麗で、学問も武道も、類い希なる才能を持つ。周囲の期待に背いたことはない。
 俺の周囲は常に人で溢れているが、俺にとっては使える奴か使えない奴か、それしかない。

 そんな俺の初めての例外となったのは、平民出身のソラだった。
 初めは、俺はソラのことが気にくわなかった。いつも弱々しく、俺よりも全てにおいて劣っているのに、ソラは常に人に囲まれていた。
 だが、学園で一緒に過ごすうちに、俺はソラのことが気になるようになってきた。段々と放っておけなくなり、目が離せなくなっていた。
 ソラを貶めようとするやつは許せなかった。悔しいが俺はソラに惹かれている。そのように自分でも感じていた。

 そんな俺の許せない奴ナンバーワンが、イアンだ。
 イアンは、人より少しばかり美しいことを鼻にかけた、プライドの塊のような奴で、卑劣な手でソラを陥れようとした。

 当然、俺が主導で糾弾し、二度と悪さができないよう手を下すつもりだった。
 ··········つもりだったのだが、あまりに情けなく慈悲を乞うイアンを見て、毒気が抜かれてしまい、俺は剣を振り下ろすことができなかった。
 挙げ句の果てには、監視という目的ではあるが、俺の侍従として側にいることを許してしまった。

 イアンは言葉どおり俺に命を捧げる程、俺に尽くしてくれているのが伝わってきた。何か企んでいるのではないかと思ったが、しばらく側で見ていて、侍従としての熱意以外のおかしな企みはないように感じた。

 本当におかしな話だが、毎日「レイン様」「レイン様」と尽くしてくれるイアンと接していると、だんだんとコイツが愛しく思えてきた。出来の悪いペットを可愛がる種類の愛しさだとは思うが、常に側に置いておきたくなるくらい、イアンは俺の中で特別な存在になってしまっていた。

 そんな時、イアンとソラが俺の不在中に接触し、なんと『和解し仲良くなった』などと言い出した。

 あそこまでソラを目の敵にしてた奴が、急に態度を軟化させたことに、俺は違和感しかなかった。
 再びソラに何かをするような素振りを見せれば、今度こそ容赦はしない。そう思っていたのに、イアンは俺の予想とは反する言葉を口にした。

『ソラが好きだから意地悪をしてしまった』

 好きだから?イアンがソラを?
 その答えは俺にとってすごく予想外だった。
 イアンが俺に尽くしてくれているのは、あくまでも侍従としてであって、一人の男として特別な思いがあるわけではないと突き付けられた気分だ。

 しかも、ソラもソラで、イアンと仲良くなりたいと親しい様子で抱きついていた。
 ソラを近くで見ていた俺だから分かるのだが、ソラは八方美人だが、本当に仲良くなりたいと思った相手にしか自分からは接近しない。出掛ける約束まで取り付けるのだから、イアンを相当気に入っているのは間違いないだろう。

 すごく面白くなかった。

 この感情は、きっとソラと仲良くなったイアンに対しての嫉妬のようなものなのだ、そう自分でも思っていた。いや、思い込もうとしていた。

 それなのに、イラついた気持ちのままイアンの裸を見た俺は、自分の欲望に抗えなくなってしまった。
 イアンの普段は見せない艶のある表情や、あられもない姿を見ているのは自分だけだという、灰暗い優越感が芽生えていた。

 自分でも、この感情に名前をつけることができなかった。イアンのことが大嫌いだったのに、今は他の誰にも見せたくないのだ。

 惹かれているソラにさえも。

 俺は、深く考えることをやめた。時々、浴室での行為のことを思い出すと抑えがきかなくなり、イアンを泣き顔にしたくなった。

 いずれにせよ、イアンは他のどこにも行き場がない。
 学園は退学し、親にも勘当された名無し草だ。
 今、イアンと唯一深く繋がっているのは俺だけであることに安堵し、今日も俺は愛しいペットを思う存分可愛がってやるのだ。
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