6 / 39
俺だけのかわいいペット
しおりを挟む
(第一王子 レイン視点)
俺は、この国の第一王子だ。
生まれながらにして高貴な身分、容姿端麗で、学問も武道も、類い希なる才能を持つ。周囲の期待に背いたことはない。
俺の周囲は常に人で溢れているが、俺にとっては使える奴か使えない奴か、それしかない。
そんな俺の初めての例外となったのは、平民出身のソラだった。
初めは、俺はソラのことが気にくわなかった。いつも弱々しく、俺よりも全てにおいて劣っているのに、ソラは常に人に囲まれていた。
だが、学園で一緒に過ごすうちに、俺はソラのことが気になるようになってきた。段々と放っておけなくなり、目が離せなくなっていた。
ソラを貶めようとするやつは許せなかった。悔しいが俺はソラに惹かれている。そのように自分でも感じていた。
そんな俺の許せない奴ナンバーワンが、イアンだ。
イアンは、人より少しばかり美しいことを鼻にかけた、プライドの塊のような奴で、卑劣な手でソラを陥れようとした。
当然、俺が主導で糾弾し、二度と悪さができないよう手を下すつもりだった。
··········つもりだったのだが、あまりに情けなく慈悲を乞うイアンを見て、毒気が抜かれてしまい、俺は剣を振り下ろすことができなかった。
挙げ句の果てには、監視という目的ではあるが、俺の侍従として側にいることを許してしまった。
イアンは言葉どおり俺に命を捧げる程、俺に尽くしてくれているのが伝わってきた。何か企んでいるのではないかと思ったが、しばらく側で見ていて、侍従としての熱意以外のおかしな企みはないように感じた。
本当におかしな話だが、毎日「レイン様」「レイン様」と尽くしてくれるイアンと接していると、だんだんとコイツが愛しく思えてきた。出来の悪いペットを可愛がる種類の愛しさだとは思うが、常に側に置いておきたくなるくらい、イアンは俺の中で特別な存在になってしまっていた。
そんな時、イアンとソラが俺の不在中に接触し、なんと『和解し仲良くなった』などと言い出した。
あそこまでソラを目の敵にしてた奴が、急に態度を軟化させたことに、俺は違和感しかなかった。
再びソラに何かをするような素振りを見せれば、今度こそ容赦はしない。そう思っていたのに、イアンは俺の予想とは反する言葉を口にした。
『ソラが好きだから意地悪をしてしまった』
好きだから?イアンがソラを?
その答えは俺にとってすごく予想外だった。
イアンが俺に尽くしてくれているのは、あくまでも侍従としてであって、一人の男として特別な思いがあるわけではないと突き付けられた気分だ。
しかも、ソラもソラで、イアンと仲良くなりたいと親しい様子で抱きついていた。
ソラを近くで見ていた俺だから分かるのだが、ソラは八方美人だが、本当に仲良くなりたいと思った相手にしか自分からは接近しない。出掛ける約束まで取り付けるのだから、イアンを相当気に入っているのは間違いないだろう。
すごく面白くなかった。
この感情は、きっとソラと仲良くなったイアンに対しての嫉妬のようなものなのだ、そう自分でも思っていた。いや、思い込もうとしていた。
それなのに、イラついた気持ちのままイアンの裸を見た俺は、自分の欲望に抗えなくなってしまった。
イアンの普段は見せない艶のある表情や、あられもない姿を見ているのは自分だけだという、灰暗い優越感が芽生えていた。
自分でも、この感情に名前をつけることができなかった。イアンのことが大嫌いだったのに、今は他の誰にも見せたくないのだ。
惹かれているソラにさえも。
俺は、深く考えることをやめた。時々、浴室での行為のことを思い出すと抑えがきかなくなり、イアンを泣き顔にしたくなった。
いずれにせよ、イアンは他のどこにも行き場がない。
学園は退学し、親にも勘当された名無し草だ。
今、イアンと唯一深く繋がっているのは俺だけであることに安堵し、今日も俺は愛しいペットを思う存分可愛がってやるのだ。
俺は、この国の第一王子だ。
生まれながらにして高貴な身分、容姿端麗で、学問も武道も、類い希なる才能を持つ。周囲の期待に背いたことはない。
俺の周囲は常に人で溢れているが、俺にとっては使える奴か使えない奴か、それしかない。
そんな俺の初めての例外となったのは、平民出身のソラだった。
初めは、俺はソラのことが気にくわなかった。いつも弱々しく、俺よりも全てにおいて劣っているのに、ソラは常に人に囲まれていた。
だが、学園で一緒に過ごすうちに、俺はソラのことが気になるようになってきた。段々と放っておけなくなり、目が離せなくなっていた。
ソラを貶めようとするやつは許せなかった。悔しいが俺はソラに惹かれている。そのように自分でも感じていた。
そんな俺の許せない奴ナンバーワンが、イアンだ。
イアンは、人より少しばかり美しいことを鼻にかけた、プライドの塊のような奴で、卑劣な手でソラを陥れようとした。
当然、俺が主導で糾弾し、二度と悪さができないよう手を下すつもりだった。
··········つもりだったのだが、あまりに情けなく慈悲を乞うイアンを見て、毒気が抜かれてしまい、俺は剣を振り下ろすことができなかった。
挙げ句の果てには、監視という目的ではあるが、俺の侍従として側にいることを許してしまった。
イアンは言葉どおり俺に命を捧げる程、俺に尽くしてくれているのが伝わってきた。何か企んでいるのではないかと思ったが、しばらく側で見ていて、侍従としての熱意以外のおかしな企みはないように感じた。
本当におかしな話だが、毎日「レイン様」「レイン様」と尽くしてくれるイアンと接していると、だんだんとコイツが愛しく思えてきた。出来の悪いペットを可愛がる種類の愛しさだとは思うが、常に側に置いておきたくなるくらい、イアンは俺の中で特別な存在になってしまっていた。
そんな時、イアンとソラが俺の不在中に接触し、なんと『和解し仲良くなった』などと言い出した。
あそこまでソラを目の敵にしてた奴が、急に態度を軟化させたことに、俺は違和感しかなかった。
再びソラに何かをするような素振りを見せれば、今度こそ容赦はしない。そう思っていたのに、イアンは俺の予想とは反する言葉を口にした。
『ソラが好きだから意地悪をしてしまった』
好きだから?イアンがソラを?
その答えは俺にとってすごく予想外だった。
イアンが俺に尽くしてくれているのは、あくまでも侍従としてであって、一人の男として特別な思いがあるわけではないと突き付けられた気分だ。
しかも、ソラもソラで、イアンと仲良くなりたいと親しい様子で抱きついていた。
ソラを近くで見ていた俺だから分かるのだが、ソラは八方美人だが、本当に仲良くなりたいと思った相手にしか自分からは接近しない。出掛ける約束まで取り付けるのだから、イアンを相当気に入っているのは間違いないだろう。
すごく面白くなかった。
この感情は、きっとソラと仲良くなったイアンに対しての嫉妬のようなものなのだ、そう自分でも思っていた。いや、思い込もうとしていた。
それなのに、イラついた気持ちのままイアンの裸を見た俺は、自分の欲望に抗えなくなってしまった。
イアンの普段は見せない艶のある表情や、あられもない姿を見ているのは自分だけだという、灰暗い優越感が芽生えていた。
自分でも、この感情に名前をつけることができなかった。イアンのことが大嫌いだったのに、今は他の誰にも見せたくないのだ。
惹かれているソラにさえも。
俺は、深く考えることをやめた。時々、浴室での行為のことを思い出すと抑えがきかなくなり、イアンを泣き顔にしたくなった。
いずれにせよ、イアンは他のどこにも行き場がない。
学園は退学し、親にも勘当された名無し草だ。
今、イアンと唯一深く繋がっているのは俺だけであることに安堵し、今日も俺は愛しいペットを思う存分可愛がってやるのだ。
561
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる