破滅エンド後にバグ!?BL乙女ゲームのヒロインポジションが、悪役サブキャラの俺に移ってます!?

きなこもち

文字の大きさ
16 / 39

友との別れは突然に

しおりを挟む
 翌朝目覚めた俺は、昨夜のことを言い過ぎてしまったと反省していた。
ブライトに謝ろうと思いながら、ベッド下段を見ると、既にもぬけの殻だった。
 (こんな朝早くどこにいったんだろう?)
 その内帰ってくるだろうと思っていたが、始業時間が近くなってもブライトは帰ってこない。
 (まさか、そのまま授業に行ったのか?俺と顔を合わせたくないから?こんなあからさまに避けるなんて、なんて露骨な野郎なんだ!)
 俺が少し寂しく思っていると、部屋をノックされた。
「イアン、ちょっといいか?」
 扉を開けると、朝から超絶さわやか男が立っていた。

 第二王子、クラインだった。
「話があるんだ。今から食堂に来れるか?」
「?はい。すぐに行きます。」

 食堂につくと、クラインは真剣な面持ちで話し始めた。
「君のご実家のことなんだが·····」
 俺の実家?俺の悪行に呆れ、速攻俺を捨てたあの冷徹な家のことか。
「弟のレインが、君のご実家に直談判しに行ってね·····勘当を取り消すように求めたんだ。」
「えぇ!?レイン様が·······!?」
「ああ。そして、ご両親はすぐに君を籍に戻した。家に戻ってくるよう探して伝えると。そして、通っていた学園の除籍も取り消された。」
「···········はい。」
「イアン、申し訳ないが、ここまでくると、俺は君を匿えないんだ。ご両親が探しているとなると、君はいわゆる行方不明だろ?早めに名乗り出た方がいいと思う。」
 それはそうだろう。家に戻れて、学園に通えるのであれば、俺がここにいられるわけがない。

 それにしても、俺の両親の変わり身の早さに呆れてしまった。「二度と顔を見せるな!」と俺を放り出したくせに、レインに少し圧をかけられたら「はいよ~」とばかりに勘当を撤回するのか。

「事情はわかりました。クライン様······俺を助けていただいたこと、本当に感謝しています!このご恩は一生忘れません。」
「いや、こちらこそ仕事を引き受けてくれて助かったよ。良かったら、学園に戻ってからも君が暇なときに、こっちのモデルの仕事を引き受けてくれたら嬉しい。」
「はい!喜んで。」
 また無一文になった時の為に、アルバイトをしてお金を貯めておくことは大事だ。
「じゃあ、早速だが部屋の荷物を片付けて家に戻ろうか。ご両親が待っている。」
 両親は俺を待ってはいないと思うが、言われた通り、荷物を片付ける為一度部屋に戻った。
 (ブライト·····まだ帰ってきてない。)
 元々俺は身一つで来た為、荷物はほとんどなかった。片付けはすぐに終わり、部屋を出ようとした時、どうしようもなく寂しい気持ちに襲われた。
 (せっかくブライトと親友になれたのに····この世界に来てから、初めての本当の友達だった。ケンカしたまま別れるなんて最悪だ。)

 部屋を出るとクラインが待っていた。
「行こうか」と言われ、部屋を出たちょうどその時、戻ってきたブライトに出くわした。
「·······イアン?」
「ブライト!良かった戻ってきて·····!俺、急なんだけど家に戻ることになったんだ。学校も通えるって。だから、お前とこの部屋で過ごすのも最後だったんだ。俺と友達になってくれて、本当にありがとう!!あと、昨日はごめんな。」
 俺は涙目になりながら、ブライトに別れの抱擁をした。

 突然のことに呆気に取られているブライトだったが、すぐに俺の背中に手を回し、別れの言葉を口にした。
「そっか。良かったな、家に戻れることになって。俺も、お前と会えて嬉しかったよ。でも、またすぐに会えるさ。」
「······そうだな!!俺もこっちに遊びに来るよ!!」
 ブライトはニコッと笑い、「じゃあな」と手を振った。
 俺が何度も振り返っているとクラインが苦笑した。
「短い間だったのに、とても大切な友達ができたみたいだね。弟も君のことひどく気にしてたし、イアンは人から好かれる才能があるのかな。」
 それは、きっとBLゲームの展開がおかしくなっているからだと思う。
「いえ、·····そんなことないです。」
「いや、あるよ。少なくとも俺は、イアンみたいな素直でかわいい弟が欲しかった。」
 クラインの弟は、あの不遜な俺様男なのだから、しょうもない俺のことをそういうふうに思ってくれるのだろう。俺も転生前は、モテない暴力喪女姉がいたから、クラインのようにカッコ良くて、気遣いができて、仕事ができる兄が欲しかった。
「僕も、クライン様のような兄さんが欲しかったです。」
 俺がそういうと、クラインはひどく嬉しそうにした。
「俺のことを、本当の兄のように頼ってくれたら嬉しい。家に戻ってからも、何か困ったことがあったら遠慮なく言ってくれ。レインの相手は大変だろ?無理せず、君らしく過ごせばいいさ。」
「はい。そうするつもりです。」
 学園に戻ったら、俺はレインやソラに関わる気などさらさらない。また面倒ごとに巻き込まれるなんてごめんだ。

 学園での俺の評判は最悪だろうが、慎ましく、目立たず卒業まで過ごそう。
 まさるやブライトのような、気の合う友達が一人でもできればいいなと考えていると、帰りたくもない俺の屋敷が見えてきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...