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失態の夜
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部屋に入ってきたクラインは、明らかにベッドの上が乱れているのを見て苦笑していた。俺がはしゃぎまくっていたことがばれたのだろう。転生しても、育ちまでは取り繕うことができないアホな自分が恥ずかしくなった。
「部屋、喜んでくれたみたいで良かった。イアンはジュースでいい?何か飲もうか。」
「あ、はい!」
机の上に2つグラスが置かれ、それぞれに瓶の中の美しい色の液体が注がれた。ただのジュースなのに、スイートルームで注がれるジュースはなんだか特別に見える。
「あっ!部屋に戴いたお菓子があったかも。イアンすぐ戻るからちょっと待ってて。飲み物先にどうぞ。」
侍従に取ってこさせずに自分で取りに行く辺り、いい奴さが滲み出ている。
俺ははしゃぎすぎて実は喉が乾いていた。ジュースを戴こうと思い、並べられた2つのグラスを見比べた。
(一つは色的にりんごか何かのフルーツジュースだな。もう一つはぶどうか。)
俺はぶどうジュースが好きだったので、紫色の液体が注がれたグラスに口をつけた。飲んでみると、今まで俺が飲んだことのない味がして、ひどく美味しく感じた。
(これが王家秘蔵のぶどうジュースか!)
などと思いながら、乾いた喉に流し込んだ。
クラインが部屋に戻ってくると、ぶどうジュースを飲んだ俺を見て驚いていた。
「イアン!それ飲んだの······!?美味しかったかもしれないけどお酒なんだ。もう一つの方がジュースで·····ごめん、瓶に『ワイン』って書いてあるから間違えないと思ってしまった。大丈夫??」
クラインは慌てて俺に水を飲ませた。
「すみません、間違えてしまいました。でも、今のところ全然大丈夫です!!」
「そうか?本当にごめん!きつくなったら教えてくれ。」
俺とクラインは並んで椅子に座り、夜景を見ながら話をした。
「イアンには本当に毎回驚かされるよ。大雨の中、馬車に突然飛び出してくるし、俺ですら忘れていた昔の文通ノートを持ってくるし········でも、そのおかげで最近すごく楽しい。」
クラインは微笑んだ。
「楽しいですか?俺もクライン様といるとすごく楽しいです!」
俺は酔ってきているのだろうか?何故かすごく陽気な気分になってきた。
「クライン様は、王子っぽくないですよね?王子というと、偉そうで上から目線で·········そう、レインのような!レインはひどいんですよ。今は友達になったけど、前は、前は·········勝手に勘違いして馬車から蹴りだしたり、それに何より俺の貞操観念をぶち壊したんです!!」
俺は何を言っているのだろうか。言うべきではないことを口走っている気がするが、自分ではもう理性が働いていないのが分かる。
「えっなに·····?貞操観念をぶち壊したって、レインに何かされたのか?」
クラインは怪訝な顔をして俺を見ている。なんだか親切なクラインが兄貴のような気がしてきて、俺は洗いざらいぶちまけたい衝動に駆られた。
「俺は破滅エンドを回避したいが為に、レインの侍従を死ぬ気でやってたんですよ!俺に色々したくせに、勝手に勘違いするし俺を捜索して大騒ぎするし·····」
クラインは立ち上がり、俺の前に来て両腕を掴んだ。
「イアン!よく分からないけど、色々って·····?レインは君に何したんだ?」
「色々·······あぁ、」
俺はなけなしの理性で、これは言っていいのか言わない方がいいのか考えてはみたが、クラインは大人だし性的な経験はあるだろう、言っても大丈夫だ!と間違った判決を下した。
「レインはお遊びのつもりだと思うんですけど········浴室で服を脱げって言われたんですよ。体を洗ってやるって。俺、初めて男の手でイかされちゃいました。でも、それだと俺もやってあげないとおかしいでしょ?だからレインのもしてあげたんですよ!そういうことが何回かあって、俺の貞操観念は壊れてしまったワケなんです!」
俺が自信満々に言い切ると、クラインは言葉を失ったように押し黙ってしまった。あ、ヤバいこういう話題はダメな人だったんだと今更ながら俺は気付き、理性の働かなくなった頭で必死にフォローした。
「あ·······ごめんなさい!こんなの聞きたくないですよね。でも、僕も別に嫌じゃなかったし。気持ちいいの好きなんです。合意の上っていうんですか?だから、僕のこと軽蔑してもいいですよ!僕はどうしようもない人間なので!」
フォローどころか完全に墓穴を掘ってしまった俺は、クラインに対して取り返しのつかない失態を犯してしまった。
「·······だからあんなに君を探してたのか。」
クラインが呟くように何か言ったが、俺は聞こえなかった。
俺は、ショボい悪役キャラのBL世界に投げ込まれた自分の境遇を悲観し、泣きたい気持ちになってきた。堪らず、兄貴的存在のクラインに抱きついた。
「クライン様~!!俺辛かったんです!分かってくれますか───?」
「あぁ、分かるよ。辛かったね。」
兄貴は俺の背中を優しく撫でてくれた。
俺は泣きながら兄貴の背中にすがり付き、そのまま眠ってしまった。
◇
朝目を覚ますと、少し頭が痛かった。
(あのまま寝てしまったのか·····ほとんど記憶がない。)
「イアン?起きた?」
クラインにドアの外から声をかけられた。
「あ、はい!起きてます!」
俺が急いで返事をすると、クラインが部屋に入ってきて俺の近くまで来ると、俺の両肩を掴んでこう言った。
「今まで辛かったねイアン。これからは俺が君を守るよ。レインの好きにはさせない。」
「───────え?」
俺は昨日、この人に何を言ったんだろうか。すごく勘違いさせている気がするが、俺の考えすぎだろうか。何事もないといいなと思いながら、俺はいつも通りに学園へ向かった。
「部屋、喜んでくれたみたいで良かった。イアンはジュースでいい?何か飲もうか。」
「あ、はい!」
机の上に2つグラスが置かれ、それぞれに瓶の中の美しい色の液体が注がれた。ただのジュースなのに、スイートルームで注がれるジュースはなんだか特別に見える。
「あっ!部屋に戴いたお菓子があったかも。イアンすぐ戻るからちょっと待ってて。飲み物先にどうぞ。」
侍従に取ってこさせずに自分で取りに行く辺り、いい奴さが滲み出ている。
俺ははしゃぎすぎて実は喉が乾いていた。ジュースを戴こうと思い、並べられた2つのグラスを見比べた。
(一つは色的にりんごか何かのフルーツジュースだな。もう一つはぶどうか。)
俺はぶどうジュースが好きだったので、紫色の液体が注がれたグラスに口をつけた。飲んでみると、今まで俺が飲んだことのない味がして、ひどく美味しく感じた。
(これが王家秘蔵のぶどうジュースか!)
などと思いながら、乾いた喉に流し込んだ。
クラインが部屋に戻ってくると、ぶどうジュースを飲んだ俺を見て驚いていた。
「イアン!それ飲んだの······!?美味しかったかもしれないけどお酒なんだ。もう一つの方がジュースで·····ごめん、瓶に『ワイン』って書いてあるから間違えないと思ってしまった。大丈夫??」
クラインは慌てて俺に水を飲ませた。
「すみません、間違えてしまいました。でも、今のところ全然大丈夫です!!」
「そうか?本当にごめん!きつくなったら教えてくれ。」
俺とクラインは並んで椅子に座り、夜景を見ながら話をした。
「イアンには本当に毎回驚かされるよ。大雨の中、馬車に突然飛び出してくるし、俺ですら忘れていた昔の文通ノートを持ってくるし········でも、そのおかげで最近すごく楽しい。」
クラインは微笑んだ。
「楽しいですか?俺もクライン様といるとすごく楽しいです!」
俺は酔ってきているのだろうか?何故かすごく陽気な気分になってきた。
「クライン様は、王子っぽくないですよね?王子というと、偉そうで上から目線で·········そう、レインのような!レインはひどいんですよ。今は友達になったけど、前は、前は·········勝手に勘違いして馬車から蹴りだしたり、それに何より俺の貞操観念をぶち壊したんです!!」
俺は何を言っているのだろうか。言うべきではないことを口走っている気がするが、自分ではもう理性が働いていないのが分かる。
「えっなに·····?貞操観念をぶち壊したって、レインに何かされたのか?」
クラインは怪訝な顔をして俺を見ている。なんだか親切なクラインが兄貴のような気がしてきて、俺は洗いざらいぶちまけたい衝動に駆られた。
「俺は破滅エンドを回避したいが為に、レインの侍従を死ぬ気でやってたんですよ!俺に色々したくせに、勝手に勘違いするし俺を捜索して大騒ぎするし·····」
クラインは立ち上がり、俺の前に来て両腕を掴んだ。
「イアン!よく分からないけど、色々って·····?レインは君に何したんだ?」
「色々·······あぁ、」
俺はなけなしの理性で、これは言っていいのか言わない方がいいのか考えてはみたが、クラインは大人だし性的な経験はあるだろう、言っても大丈夫だ!と間違った判決を下した。
「レインはお遊びのつもりだと思うんですけど········浴室で服を脱げって言われたんですよ。体を洗ってやるって。俺、初めて男の手でイかされちゃいました。でも、それだと俺もやってあげないとおかしいでしょ?だからレインのもしてあげたんですよ!そういうことが何回かあって、俺の貞操観念は壊れてしまったワケなんです!」
俺が自信満々に言い切ると、クラインは言葉を失ったように押し黙ってしまった。あ、ヤバいこういう話題はダメな人だったんだと今更ながら俺は気付き、理性の働かなくなった頭で必死にフォローした。
「あ·······ごめんなさい!こんなの聞きたくないですよね。でも、僕も別に嫌じゃなかったし。気持ちいいの好きなんです。合意の上っていうんですか?だから、僕のこと軽蔑してもいいですよ!僕はどうしようもない人間なので!」
フォローどころか完全に墓穴を掘ってしまった俺は、クラインに対して取り返しのつかない失態を犯してしまった。
「·······だからあんなに君を探してたのか。」
クラインが呟くように何か言ったが、俺は聞こえなかった。
俺は、ショボい悪役キャラのBL世界に投げ込まれた自分の境遇を悲観し、泣きたい気持ちになってきた。堪らず、兄貴的存在のクラインに抱きついた。
「クライン様~!!俺辛かったんです!分かってくれますか───?」
「あぁ、分かるよ。辛かったね。」
兄貴は俺の背中を優しく撫でてくれた。
俺は泣きながら兄貴の背中にすがり付き、そのまま眠ってしまった。
◇
朝目を覚ますと、少し頭が痛かった。
(あのまま寝てしまったのか·····ほとんど記憶がない。)
「イアン?起きた?」
クラインにドアの外から声をかけられた。
「あ、はい!起きてます!」
俺が急いで返事をすると、クラインが部屋に入ってきて俺の近くまで来ると、俺の両肩を掴んでこう言った。
「今まで辛かったねイアン。これからは俺が君を守るよ。レインの好きにはさせない。」
「───────え?」
俺は昨日、この人に何を言ったんだろうか。すごく勘違いさせている気がするが、俺の考えすぎだろうか。何事もないといいなと思いながら、俺はいつも通りに学園へ向かった。
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