侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

決意

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 エステルの部屋から戻った後、しばらく放心状態でベッドに腰かけていたナタリーは、決心した。

 (誰にも言わずにセントラルを出ていく)


 侍女兼補佐官として働いてはいたが、本部から給料が支給される、ということではなく、大魔法使いが持っている資産から、ナタリーが暮らす程度のお金を使っていただけだった。

 欲しいものがあれば、アッシュに言えば買ってくれた。

 2人は、主従関係とはいえ、家族も同然の生活をしていた。買うものといっても、本や雑貨やお菓子など、ほんのちょっとしたものだった。

 以前、黒い侍女服ばかりを来ていたので、たまには明るい色の女性らしい服を着て出掛けたい、とアッシュに言ったことがある。

 その時は、

「そんなに着飾ってどうする?男でもひっかけるつもりか?似合わないからやめておけ」

 とひどいことを言われ、買えなかった。

 ナタリーは、今まで私って自由がなかったのね。と自分の暮らしを見直すきっかけとなった。

 そうと決まれば、出ていく時期と行き先を決めなければいけない。

 とはいえ、人間界はナタリーは10歳までしかおらず、その後はアッシュの側に付きっきりだったため、あまりにも世間知らずだった。

 こんなときに相談できるのは、一人しかいなかった。

 1日の仕事が終わり、アッシュは行くところがあると言っていた為、ナタリーは一人時間ができた。

 夕方、外出しウィルを訪ねることにした。

「ウィル!!」

 ナタリーが突然屋敷を訪ねてきたので、ウィルは驚いていた。

「どうしたの!?屋敷に来るのなんて初めてじゃない?早く中に入って入って。」

 ウィルの部屋に通されたナタリーは、今までの出来事と、計画を相談した。

 極秘事項は洩らせないと思ったが、今回は自分を守るための大事な計画だ。内緒のままでは、ウィルも理解できないだろう。

 キスのことは黙っておき、「魔力の供給」という言い方をした。

 さすがのウィルも、はぁ?という顔をしながらナタリーの話を聞いていた。

「つまり、こういうこと?ナタリーは、前世が恋人同士の、聖女様と大魔法使い様から追い出される予定で、セントラルを出てどこか知らない土地で暮らしたいと。」

「追い出されるとは言ってないわよ!自ら出ていくの!」

 大事なことなので、ナタリーは訂正しておいた。

 ウィルは、珍しく真剣な顔で、ナタリーに聞いた。

「それ、本気?」

「本気よ、ウィリー。私は、ここじゃない場所で人生をやり直すわ。」

 ウィルは少し考えて、決心したようにナタリーに言った。

「分かった。それなら、僕も手伝うよ。というか、僕も一緒に行く。」

 今度はナタリーがはぁ?という顔をした。

「ウィル!私は一緒に行って欲しくて相談したんじゃないのよ。知恵をかして欲しかったの。あなたは貴族の息子じゃない。私のせいで迷惑はかけられないわ。それに、あなたがいなくなったら捜索されるわよ!」

 ウィルは、真剣な顔で答えた。

「ナタリー。君がいなくなったって捜索されるよ。大魔法使い様は、君を必ず探すさ。」

「それに、一人で逃げたって、1日で見つかるよ。微力でも、魔力があれば居場所はすぐに分かるんだ。跡を辿られない方法にあてがある。」

 アッシュが自分を探すとは思えなかったが、ナタリーはウィルの言葉をじっと聞いていた。

「それに僕は、君以上に大切な友人も家族もいない。魔法界に未練なんてないんだよ。お願いだから、僕も一緒に行くことを許して。」

 ナタリーはその言葉を聞き、困ってしまった。確かに、一人で行くより、ウィルと行く方が断然心強いし、楽しいだろう。

 だが、万が一危険な目には合わせたくなかった。ウィルを、ナタリーのくだらない逃避行に巻き込むのも嫌だった。

「・・・・・・私と行ったって、苦労するだけよ。」

「それでもいいよ。君とする苦労なら、悪くないさ。」

 説得しても、ウィルは折れないだろうと確信したナタリーは、

「それなら話が早いわ。私達の新天地を決めましょ。ウィル。」

 こうして、2人の逃亡計画が幕を開けたのである。
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