侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~

作戦会議

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 その日の真夜中、ナタリー、アラン王子、ギースは、ジークリートを指定の場所で待っていた。待ち合わせ場所は、先日アラン王子に教えてもらった地下室だ。
 ギースは不安を口にした。
「本当にジークリートとやらは来るのか?もし王女側に寝返っていた場合、私達はこの場で反逆罪に問われるだろうな。」
「必ず来ます。ジークリート様は忠誠心の強い方です。寝返るなんてことはありえません!」
「今からすごい魔法使いに会えるんだね!僕ドキドキしてる!」
 アラン王子は、アレクシアと同様に魔法使いに対して強い関心があるようだ。しかし、アレクシア王女の歪んだ羨望や独占欲ではなく、単純な憧れや尊敬のようだった。

 しばらくすると、地下廊の奥からゆっくりとした足音が聞こえてきた。警戒したように一歩、一歩と近づいてくる。
「········ナタリー?」
 明かりに照らされた顔は、ジークリートだった。
「ジークリート様!!」
「ナタリー!!」
 2人は手を取り合い、再会を喜び合った。
「この前は本当にすまなかった。ああするしかなかったんだ。」
「いいえ、分かってます。また生きて会えたこと、ここに来てくれたことがうれしいです。」
 落ち着いたジークリートは、ナタリーの後ろにいる2人を見た。
「こちらの方々は?」
「第一王子のアラン殿下と、侍従のギース様です。私に力を貸してくれるそうです!」
「───第一王子!?なんでまたそんな方と····
 」
 さすがのジークリートも戸惑っているようだった。王女を出し抜こうという時に、一番の身内である第一王子がいるのだから、不審に思うのも当然だろう。
「初めまして!!魔法使いさん!僕はアラン。あなたに会いたかったんだ。安心して、僕はナタリーの味方だよ。アレクシアは悪い子だから凝らしめないとね。力を貸すよ!」
 アラン王子の子どものような雰囲気を感じ取ったジークリートは、微笑んで一礼をした。


「挨拶はそれくらいにして、さっそく本題に入ろうか。あまり長く部屋を空けるのはまずいからな。まずは、どうやって捕まっている魔法使い達を逃がすかだ。君はどう思う?」
 ギースは、ジークリートに問いかけた。
「そこが一番の問題でした。何十人もの魔法使いを逃がすには、一番早く、足もつきにくいのは移動魔法なのですが、この首輪をつけられていることで、安易に行動すれば首輪が発動し、全員の命がないかもしれません。」
 ナタリーは、そもそもの疑問をジークリートにぶつけてみた。
「その首輪なんですが·····本当に、厳密に作動するのですか?誰かが逃げようとしたり、攻撃しようとした時だけ発動するというのは、かなり都合が良すぎる気がするのですが·····」
「それなんだが·····実は、俺も部屋で小さな魔法を使って試したことがあるが、何も発動しなかった。そもそも、魔法使い全員を監視し、管理できるような代物があるわけがないからな。恐らくだが、王女か、もしくは王女の側近に対象とされた者が、この首輪を媒介に魔力を奪われるんじゃないだろうか。」
「よく分からないけど、首輪は万能じゃなくて、アレクシア達に気付かれなければ魔法は使えるってこと!?」
 アラン王子の要約に、ジークリートは「簡単にいうとその通りです。」と言った。
「それなら尚更、大多数の人質になって捕まっている魔法使い達を逃がすことができれば、可能性はあるってことですよね!?」
「ああ、だが、問題はまだある。」
「???」
「大人数の魔法使いを移動させ、痕跡を消すには、膨大な魔力と技術がいる。そんなことは、俺やウィルでもおそらくできない。」
「──────アッシュなら?」
 ジークリートがナタリーを見た。
「アッシュなら、できるでしょうか?」
「······アッシュ様ならできるだろうが、行方は俺も分からない。闇の魔法使いを探して殺すと言っていたが····あの人の行方を辿れる魔法使いはいないんだ。」
 いや、いる。アッシュの行方を知る人が、ただ一人·····

「聖女エステル様なら、居場所を御存じのはずです。」
 エステルとアッシュは婚姻の誓いを交わした。アッシュとの死期にこだわっているエステルが、アッシュの居場所を知らないはずはない。

 ナタリーは、少しだけ見えた一筋の光をなんとかして掴まなければならないと固く決意した。
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