68 / 121
私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
作戦会議
しおりを挟む
その日の真夜中、ナタリー、アラン王子、ギースは、ジークリートを指定の場所で待っていた。待ち合わせ場所は、先日アラン王子に教えてもらった地下室だ。
ギースは不安を口にした。
「本当にジークリートとやらは来るのか?もし王女側に寝返っていた場合、私達はこの場で反逆罪に問われるだろうな。」
「必ず来ます。ジークリート様は忠誠心の強い方です。寝返るなんてことはありえません!」
「今からすごい魔法使いに会えるんだね!僕ドキドキしてる!」
アラン王子は、アレクシアと同様に魔法使いに対して強い関心があるようだ。しかし、アレクシア王女の歪んだ羨望や独占欲ではなく、単純な憧れや尊敬のようだった。
しばらくすると、地下廊の奥からゆっくりとした足音が聞こえてきた。警戒したように一歩、一歩と近づいてくる。
「········ナタリー?」
明かりに照らされた顔は、ジークリートだった。
「ジークリート様!!」
「ナタリー!!」
2人は手を取り合い、再会を喜び合った。
「この前は本当にすまなかった。ああするしかなかったんだ。」
「いいえ、分かってます。また生きて会えたこと、ここに来てくれたことがうれしいです。」
落ち着いたジークリートは、ナタリーの後ろにいる2人を見た。
「こちらの方々は?」
「第一王子のアラン殿下と、侍従のギース様です。私に力を貸してくれるそうです!」
「───第一王子!?なんでまたそんな方と····
」
さすがのジークリートも戸惑っているようだった。王女を出し抜こうという時に、一番の身内である第一王子がいるのだから、不審に思うのも当然だろう。
「初めまして!!魔法使いさん!僕はアラン。あなたに会いたかったんだ。安心して、僕はナタリーの味方だよ。アレクシアは悪い子だから凝らしめないとね。力を貸すよ!」
アラン王子の子どものような雰囲気を感じ取ったジークリートは、微笑んで一礼をした。
「挨拶はそれくらいにして、さっそく本題に入ろうか。あまり長く部屋を空けるのはまずいからな。まずは、どうやって捕まっている魔法使い達を逃がすかだ。君はどう思う?」
ギースは、ジークリートに問いかけた。
「そこが一番の問題でした。何十人もの魔法使いを逃がすには、一番早く、足もつきにくいのは移動魔法なのですが、この首輪をつけられていることで、安易に行動すれば首輪が発動し、全員の命がないかもしれません。」
ナタリーは、そもそもの疑問をジークリートにぶつけてみた。
「その首輪なんですが·····本当に、厳密に作動するのですか?誰かが逃げようとしたり、攻撃しようとした時だけ発動するというのは、かなり都合が良すぎる気がするのですが·····」
「それなんだが·····実は、俺も部屋で小さな魔法を使って試したことがあるが、何も発動しなかった。そもそも、魔法使い全員を監視し、管理できるような代物があるわけがないからな。恐らくだが、王女か、もしくは王女の側近に対象とされた者が、この首輪を媒介に魔力を奪われるんじゃないだろうか。」
「よく分からないけど、首輪は万能じゃなくて、アレクシア達に気付かれなければ魔法は使えるってこと!?」
アラン王子の要約に、ジークリートは「簡単にいうとその通りです。」と言った。
「それなら尚更、大多数の人質になって捕まっている魔法使い達を逃がすことができれば、可能性はあるってことですよね!?」
「ああ、だが、問題はまだある。」
「???」
「大人数の魔法使いを移動させ、痕跡を消すには、膨大な魔力と技術がいる。そんなことは、俺やウィルでもおそらくできない。」
「──────アッシュなら?」
ジークリートがナタリーを見た。
「アッシュなら、できるでしょうか?」
「······アッシュ様ならできるだろうが、行方は俺も分からない。闇の魔法使いを探して殺すと言っていたが····あの人の行方を辿れる魔法使いはいないんだ。」
いや、いる。アッシュの行方を知る人が、ただ一人·····
「聖女エステル様なら、居場所を御存じのはずです。」
エステルとアッシュは婚姻の誓いを交わした。アッシュとの死期にこだわっているエステルが、アッシュの居場所を知らないはずはない。
ナタリーは、少しだけ見えた一筋の光をなんとかして掴まなければならないと固く決意した。
ギースは不安を口にした。
「本当にジークリートとやらは来るのか?もし王女側に寝返っていた場合、私達はこの場で反逆罪に問われるだろうな。」
「必ず来ます。ジークリート様は忠誠心の強い方です。寝返るなんてことはありえません!」
「今からすごい魔法使いに会えるんだね!僕ドキドキしてる!」
アラン王子は、アレクシアと同様に魔法使いに対して強い関心があるようだ。しかし、アレクシア王女の歪んだ羨望や独占欲ではなく、単純な憧れや尊敬のようだった。
しばらくすると、地下廊の奥からゆっくりとした足音が聞こえてきた。警戒したように一歩、一歩と近づいてくる。
「········ナタリー?」
明かりに照らされた顔は、ジークリートだった。
「ジークリート様!!」
「ナタリー!!」
2人は手を取り合い、再会を喜び合った。
「この前は本当にすまなかった。ああするしかなかったんだ。」
「いいえ、分かってます。また生きて会えたこと、ここに来てくれたことがうれしいです。」
落ち着いたジークリートは、ナタリーの後ろにいる2人を見た。
「こちらの方々は?」
「第一王子のアラン殿下と、侍従のギース様です。私に力を貸してくれるそうです!」
「───第一王子!?なんでまたそんな方と····
」
さすがのジークリートも戸惑っているようだった。王女を出し抜こうという時に、一番の身内である第一王子がいるのだから、不審に思うのも当然だろう。
「初めまして!!魔法使いさん!僕はアラン。あなたに会いたかったんだ。安心して、僕はナタリーの味方だよ。アレクシアは悪い子だから凝らしめないとね。力を貸すよ!」
アラン王子の子どものような雰囲気を感じ取ったジークリートは、微笑んで一礼をした。
「挨拶はそれくらいにして、さっそく本題に入ろうか。あまり長く部屋を空けるのはまずいからな。まずは、どうやって捕まっている魔法使い達を逃がすかだ。君はどう思う?」
ギースは、ジークリートに問いかけた。
「そこが一番の問題でした。何十人もの魔法使いを逃がすには、一番早く、足もつきにくいのは移動魔法なのですが、この首輪をつけられていることで、安易に行動すれば首輪が発動し、全員の命がないかもしれません。」
ナタリーは、そもそもの疑問をジークリートにぶつけてみた。
「その首輪なんですが·····本当に、厳密に作動するのですか?誰かが逃げようとしたり、攻撃しようとした時だけ発動するというのは、かなり都合が良すぎる気がするのですが·····」
「それなんだが·····実は、俺も部屋で小さな魔法を使って試したことがあるが、何も発動しなかった。そもそも、魔法使い全員を監視し、管理できるような代物があるわけがないからな。恐らくだが、王女か、もしくは王女の側近に対象とされた者が、この首輪を媒介に魔力を奪われるんじゃないだろうか。」
「よく分からないけど、首輪は万能じゃなくて、アレクシア達に気付かれなければ魔法は使えるってこと!?」
アラン王子の要約に、ジークリートは「簡単にいうとその通りです。」と言った。
「それなら尚更、大多数の人質になって捕まっている魔法使い達を逃がすことができれば、可能性はあるってことですよね!?」
「ああ、だが、問題はまだある。」
「???」
「大人数の魔法使いを移動させ、痕跡を消すには、膨大な魔力と技術がいる。そんなことは、俺やウィルでもおそらくできない。」
「──────アッシュなら?」
ジークリートがナタリーを見た。
「アッシュなら、できるでしょうか?」
「······アッシュ様ならできるだろうが、行方は俺も分からない。闇の魔法使いを探して殺すと言っていたが····あの人の行方を辿れる魔法使いはいないんだ。」
いや、いる。アッシュの行方を知る人が、ただ一人·····
「聖女エステル様なら、居場所を御存じのはずです。」
エステルとアッシュは婚姻の誓いを交わした。アッシュとの死期にこだわっているエステルが、アッシュの居場所を知らないはずはない。
ナタリーは、少しだけ見えた一筋の光をなんとかして掴まなければならないと固く決意した。
285
あなたにおすすめの小説
ワルシャワ蜂起に身を投じた唯一の日本人。わずかな記録しか残らず、彼の存在はほとんど知られてはいない。
上郷 葵
歴史・時代
ワルシャワ蜂起に参加した日本人がいたことをご存知だろうか。
これは、歴史に埋もれ、わずかな記録しか残っていない一人の日本人の話である。
1944年、ドイツ占領下のフランス、パリ。
平凡な一人の日本人青年が、戦争という大きな時代の波に呑み込まれていく。
彼はただ、この曇り空の時代が静かに終わることだけを待ち望むような男だった。
しかし、愛国心あふれる者たちとの交流を深めるうちに、自身の隠れていた部分に気づき始める。
斜に構えた皮肉屋でしかなかったはずの男が、スウェーデン、ポーランド、ソ連、シベリアでの流転や苦難の中でも祖国日本を目指し、長い旅を生き抜こうとする。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる