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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
王女の企み
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アレクシアは、ナタリーのことがとにかく気に入らなかった。善人ぶってあれこれ世話を焼いてくるのもイライラしたし、年増で大して綺麗でもないくせに、ウィルと夫婦生活を送り、ましてや、ただの人間の分際で、以前は大魔法使い専属の侍女だったという。
彼女は、身の程をわきまえない人間が大嫌いだ。
嫌がらせのつもりで、恥さらしの兄アランの専属侍女にしたが、根を上げることもなく、アランや侍従のギースと上手くやっているというのも、アレクシアにとっては腹立たしいことだった。
ウィルと深く関係した女など、目障りであるし、早く消したかったが、万が一、あの女の死によって自暴自棄になったウィルやジークリートに反乱でも起こされたら面倒だ。
イースに頼み、今ウィルは部屋から連れ出してもらっている。ウィルには知られない形で、ナタリーを苦しめてやろう。そう考えた王女は、部屋に2人の近衛兵を呼んだ。
◇
ナタリーは夜、自室で考え事をしていた。気になるのは、ケイリー含む、囚われている魔法使い達のこと、ウィルと王女のこと、そして、アッシュのことだった。
時間は刻一刻と過ぎていくのに、アッシュの行方を知る手掛かりは未だに見つけられていなかった。エステルの行方も分からない。
アッシュのことだから、人間達に捕まっているということはないだろう。別れたあの日から、アッシュのことを考えない日はなかった。こんな形で彼を探さなければならないのは不本意だったが、多くの魔法使い達の命がかかっているのだから、どんな条件を飲んででも、力を貸してもらうしかない。
ウィルのことを考えると、ナタリーは胸が痛くなった。もう2週間も会えていない。王女にひどいことをされてはいないだろうか、もしくは、美しい王女に心を奪われていないだろうか、と考え出すとキリがなかった。
いつもの笑顔で『シェリー大丈夫だよ。』と抱き締めてほしい、ナタリーが望むのはそれだけであった。
そろそろ寝ようとしていたところ、ナタリーの部屋がノックされた。
「王女様からのご伝言だ。侍女ナタリー、直ちにドアを開けろ。」
王女から!?ナタリーは身構えた。こんな夜更けに使いをやるなんて、余程のことだろう。
恐る恐るドアを開けると、大柄のいかにも屈強そうな近衛兵2人が、ドアの前に立っていた。
「はい、·······何でしょうか?」
近衛兵は、何も言わずにナタリーの部屋にズカズカと入ってきた。
「────·····何なんですか!?ちょっと!」
近衛兵の一人がナタリーを羽交い締めにし、ナタリーは身動きが取れなくなった。
「王女様からの命令だ。お前を好きにしていいと言われている。我々も無理強いはしたくないんだ。大人しく応じろ。」
ナタリーは耳を疑った。王女がナタリーに対してやけに大人しいと思っていたら、やはり仕掛けてきた。今からこの近衛兵達に、黙って辱めを受けろというのか。
「お、お願いです。王女様のご命令で逆らえないのでは?命令通りに動いたことにして、少ししたら帰っていただけませんか?私もそう見えるように演技しますから……」
いつも無表情の近衛兵が顔を見合わせ、にやついた表情でナタリーに言った。
「悪いな。我々も働き詰めで楽しみがないんだ。この機会は逃せない。」
一人がナタリーの服の襟元に手を掛けたかと思うと、思い切り下に力を入れ、来ていた寝巻きのボタンが弾け飛んだ。
「!!やめて───!!」
ナタリーが叫ぼうとすると、手で口を塞がれ、床に押し倒された。
思い切り後頭部を床にぶつけてしまい、ナタリーは痛みで呻いた。男の手が胸元に伸びてきた。
彼女は、身の程をわきまえない人間が大嫌いだ。
嫌がらせのつもりで、恥さらしの兄アランの専属侍女にしたが、根を上げることもなく、アランや侍従のギースと上手くやっているというのも、アレクシアにとっては腹立たしいことだった。
ウィルと深く関係した女など、目障りであるし、早く消したかったが、万が一、あの女の死によって自暴自棄になったウィルやジークリートに反乱でも起こされたら面倒だ。
イースに頼み、今ウィルは部屋から連れ出してもらっている。ウィルには知られない形で、ナタリーを苦しめてやろう。そう考えた王女は、部屋に2人の近衛兵を呼んだ。
◇
ナタリーは夜、自室で考え事をしていた。気になるのは、ケイリー含む、囚われている魔法使い達のこと、ウィルと王女のこと、そして、アッシュのことだった。
時間は刻一刻と過ぎていくのに、アッシュの行方を知る手掛かりは未だに見つけられていなかった。エステルの行方も分からない。
アッシュのことだから、人間達に捕まっているということはないだろう。別れたあの日から、アッシュのことを考えない日はなかった。こんな形で彼を探さなければならないのは不本意だったが、多くの魔法使い達の命がかかっているのだから、どんな条件を飲んででも、力を貸してもらうしかない。
ウィルのことを考えると、ナタリーは胸が痛くなった。もう2週間も会えていない。王女にひどいことをされてはいないだろうか、もしくは、美しい王女に心を奪われていないだろうか、と考え出すとキリがなかった。
いつもの笑顔で『シェリー大丈夫だよ。』と抱き締めてほしい、ナタリーが望むのはそれだけであった。
そろそろ寝ようとしていたところ、ナタリーの部屋がノックされた。
「王女様からのご伝言だ。侍女ナタリー、直ちにドアを開けろ。」
王女から!?ナタリーは身構えた。こんな夜更けに使いをやるなんて、余程のことだろう。
恐る恐るドアを開けると、大柄のいかにも屈強そうな近衛兵2人が、ドアの前に立っていた。
「はい、·······何でしょうか?」
近衛兵は、何も言わずにナタリーの部屋にズカズカと入ってきた。
「────·····何なんですか!?ちょっと!」
近衛兵の一人がナタリーを羽交い締めにし、ナタリーは身動きが取れなくなった。
「王女様からの命令だ。お前を好きにしていいと言われている。我々も無理強いはしたくないんだ。大人しく応じろ。」
ナタリーは耳を疑った。王女がナタリーに対してやけに大人しいと思っていたら、やはり仕掛けてきた。今からこの近衛兵達に、黙って辱めを受けろというのか。
「お、お願いです。王女様のご命令で逆らえないのでは?命令通りに動いたことにして、少ししたら帰っていただけませんか?私もそう見えるように演技しますから……」
いつも無表情の近衛兵が顔を見合わせ、にやついた表情でナタリーに言った。
「悪いな。我々も働き詰めで楽しみがないんだ。この機会は逃せない。」
一人がナタリーの服の襟元に手を掛けたかと思うと、思い切り下に力を入れ、来ていた寝巻きのボタンが弾け飛んだ。
「!!やめて───!!」
ナタリーが叫ぼうとすると、手で口を塞がれ、床に押し倒された。
思い切り後頭部を床にぶつけてしまい、ナタリーは痛みで呻いた。男の手が胸元に伸びてきた。
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