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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
牢屋の中
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ナタリーはケイリー達が閉じ込められている牢屋の中に突き飛ばされ、ガチャンと鍵をかけられた。
イースと護衛騎士達が去った後、ケイリーがナタリーに駆け寄ってきた。
「──ナタリー!?あぁ何をされたの?かわいそうに!」
「·····ケイリーごめんなさい。私、あなた達を助け出そうと思ったのに、自分もこちら側に来てしまったわ·······」
「謝らないでナタリー。私、ずっとここに閉じ込められて、誰かが助けに来てくれるって最初は希望を持ってたのよ。でも、期待はしないことにした。その方が楽だもの。でも、最後の時を過ごすのに一人きりは堪らなく怖くて寂しかった。あなたがいてくれるなんて夢のようだわ。」
ケイリーとナタリーは肩を寄せ合い、格子の窓から見える月明かりを見上げながら、ポツポツと話をした。
「あなたと以前、ドレスを買いに行ったわよね?くだらない話をして、楽しかった。」
「·····ええ、10年後も一緒に働いてるかもって私が言ったら、縁起でもないからやめてって、ケイリーに怒られたわ。」
「そうだったわね!でも、まさか死ぬまでの付き合いになるとは思ってなかった。私達って運命なのかしら。」
「·······ううん、多分私の方が先に殺されるわ。だって、私、近衛兵を燃やしてしまったの。皆が処刑されないようにどうにかするって言ってたけど、どうにもならないと思う。」
「····え、あなた魔法使えたの!?どうせなら、王女を燃やせばよかったのよ!残念だわ。」
ケイリーはククッと笑った。
「そういえば、あなた答えは出たの?」
「··············何の?」
「ほら!アッシュとウィルどっちが好きかって話。」
ナタリーは、この場と状況に似つかわしくない話を思い出すケイリーに笑ってしまった。
「懐かしい·······したわねそんな話。もちろんウィルよ!だって夫だもん。でも、もう2週間もしたら王女の夫。そして私はこの世にいない。切ないでしょ?」
ナタリーが自虐的に言うと、ケイリーは眉をひそめ、「そんな悲しいこと言うのやめてよ!」とナタリーを慰めた。
「·······ケイリーでもね、さっき、男達から乱暴されそうになった時、私どうすることもできなくて、心の中で助けを求めたの。『アッシュ助けて』って······なんでアッシュなんだろう。自分でも分からないわ。」
「そっか。私もあるわよ。どうしようもない時に、『助けてお母さん!!』って。いい年して笑っちゃう。───人の心は単純じゃないのよ。白か黒じゃないこともある。」
「───うん。しゃべりすぎたわねケイリー、少し寝るわ。」
「おやすみ。ナタリー」
ケイリーの温かな肩にもたれ掛かり、ナタリーは夢を見ていた。
夢の中で、ウィルが王女の隣に立っている。
「ウィル!こっちに来て!」
ナタリーが叫ぶと、ウィルは悲しそうに首を振った。
「ごめんね、ナタリー。僕は王女様と結婚する。今までありがとう。」
ウィルは王女の肩を抱き、ナタリーに背を向けて歩いていってしまう。
「ウィル!行かないで───!!」
──リー───タリー!····ナタリー!!
自分の名を呼ぶ声が聞こえ、ナタリーははっと目を開けた。ケイリーが顔を覗き込んでいる。
「ナタリー·····信じられないわ。助けが来たのよ───!!!」
ナタリーはケイリーの隣に立つ男性を見上げた。この薄暗く冷たい牢屋に似つかわしくない、秀麗な佇まいの彼は、間違いなくあの人だった。
「アッシュ··········?」
イースと護衛騎士達が去った後、ケイリーがナタリーに駆け寄ってきた。
「──ナタリー!?あぁ何をされたの?かわいそうに!」
「·····ケイリーごめんなさい。私、あなた達を助け出そうと思ったのに、自分もこちら側に来てしまったわ·······」
「謝らないでナタリー。私、ずっとここに閉じ込められて、誰かが助けに来てくれるって最初は希望を持ってたのよ。でも、期待はしないことにした。その方が楽だもの。でも、最後の時を過ごすのに一人きりは堪らなく怖くて寂しかった。あなたがいてくれるなんて夢のようだわ。」
ケイリーとナタリーは肩を寄せ合い、格子の窓から見える月明かりを見上げながら、ポツポツと話をした。
「あなたと以前、ドレスを買いに行ったわよね?くだらない話をして、楽しかった。」
「·····ええ、10年後も一緒に働いてるかもって私が言ったら、縁起でもないからやめてって、ケイリーに怒られたわ。」
「そうだったわね!でも、まさか死ぬまでの付き合いになるとは思ってなかった。私達って運命なのかしら。」
「·······ううん、多分私の方が先に殺されるわ。だって、私、近衛兵を燃やしてしまったの。皆が処刑されないようにどうにかするって言ってたけど、どうにもならないと思う。」
「····え、あなた魔法使えたの!?どうせなら、王女を燃やせばよかったのよ!残念だわ。」
ケイリーはククッと笑った。
「そういえば、あなた答えは出たの?」
「··············何の?」
「ほら!アッシュとウィルどっちが好きかって話。」
ナタリーは、この場と状況に似つかわしくない話を思い出すケイリーに笑ってしまった。
「懐かしい·······したわねそんな話。もちろんウィルよ!だって夫だもん。でも、もう2週間もしたら王女の夫。そして私はこの世にいない。切ないでしょ?」
ナタリーが自虐的に言うと、ケイリーは眉をひそめ、「そんな悲しいこと言うのやめてよ!」とナタリーを慰めた。
「·······ケイリーでもね、さっき、男達から乱暴されそうになった時、私どうすることもできなくて、心の中で助けを求めたの。『アッシュ助けて』って······なんでアッシュなんだろう。自分でも分からないわ。」
「そっか。私もあるわよ。どうしようもない時に、『助けてお母さん!!』って。いい年して笑っちゃう。───人の心は単純じゃないのよ。白か黒じゃないこともある。」
「───うん。しゃべりすぎたわねケイリー、少し寝るわ。」
「おやすみ。ナタリー」
ケイリーの温かな肩にもたれ掛かり、ナタリーは夢を見ていた。
夢の中で、ウィルが王女の隣に立っている。
「ウィル!こっちに来て!」
ナタリーが叫ぶと、ウィルは悲しそうに首を振った。
「ごめんね、ナタリー。僕は王女様と結婚する。今までありがとう。」
ウィルは王女の肩を抱き、ナタリーに背を向けて歩いていってしまう。
「ウィル!行かないで───!!」
──リー───タリー!····ナタリー!!
自分の名を呼ぶ声が聞こえ、ナタリーははっと目を開けた。ケイリーが顔を覗き込んでいる。
「ナタリー·····信じられないわ。助けが来たのよ───!!!」
ナタリーはケイリーの隣に立つ男性を見上げた。この薄暗く冷たい牢屋に似つかわしくない、秀麗な佇まいの彼は、間違いなくあの人だった。
「アッシュ··········?」
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