侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~

初めての夜

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 ひとしきり口付けをした後、アッシュはナタリーを抱き上げ、教会中央の祭壇まで歩いてくると、ゆっくりと彼女を下ろした。
「ナタリー、俺はこれ以上進んだら、もう途中でやめてやれないと思う。やめるならまだ間に合う。·····どうする?」
 ナタリーはアッシュの頬を撫でた。
「───やめないでアッシュ。一つになりたいの。私をあなたのものにして。」
 それを聞いたアッシュはナタリーの唇を奪い、2人は床に倒れ込み、激しく絡み合った。本能のままに求め合う2人を、薄暗い静寂の中、聖母の像だけが見ていた。

 ◇

 俺はナタリーの生まれたままの姿を初めて見た。幾度となく想像したことはあったが、実際の彼女の一糸纏わぬ姿は、想像よりもはるかに扇情的で美しかった。
 俺の名を呼び、快感に身悶える表情、俺の背中に回した手に時折力が入る様、すべてが俺にとっては特別で脳裏に焼き付いた。
 俺が舐めたナタリーの秘密の場所はとても甘く、まるで蜜のようにやめられなくなった。
 お互いに何度も絶頂を迎えたが、体が触れあえばまた足りなくなり、再び無我夢中で求め合った。

 俺が生きてきた中で最も幸せな夜だ。死ぬ時を選べるなら、今この瞬間がいい。ナタリーに好きなように触れていた男がいたなど、到底受け入れがたかった。目の前にいるならきっと殺しているが、俺には何よりも恐れることができてしまった。

 それは、ナタリーの愛を失うことだ。
 以前は側にいられればそれ以上は望まないと本気で思っていたが、一度ナタリーの身も心も手にしてしまった今となっては、ナタリーに愛想を尽かされ、愛されなくなることは死よりも怖いことだった。

 俺はもう、一年前のように『彼女を想って身を引く』という選択肢は選べそうにない。ナタリーには悪いが、例え彼女がウィルを選んだとしても、俺はもうナタリーを手放すことはない。
 血の繋がりなどどうでも良かった。禁忌だからなんだというのだ。『愛する者と一つになる』それ以外に大事なことなどありはしない。

 疲れ果てて寝てしまったナタリーの顔を見ていると、一度は治まっていた情欲の熱が再び起き出しそうだ。腕の中の愛しい人の顔を見ながら、俺はこれが覚めたら消えてしまう夢でないことを願った。
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