友達夫婦~夫の浮気相手は私の親友でした~

きなこもち

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追跡開始!

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 数日後、寅から馬鹿丁寧なメールが届いていたので、奈緒子も丁寧に返信した。
『  先日は、助けていただき感謝申し上げます。お借りしていた服をお渡ししたいので、ご都合がいい時に、図書館へ伺ってもよろしいでしょうか? 』
『とんでもございません。私からも洗濯した服をお返ししたいです。また、ご相談したいことがある為、先日と同じ時間と場所に来ていただけないでしょうか?』
 あれから、弘人の浮気の証拠をつかもうと思い、車のナビを調べたが、履歴は残っていなかった。やましいことがあれば履歴は消さないと思うので、ますます怪しい。スマホのトーク履歴や写真も見ようと思ったのだが、指紋認証ロックがかかっており、開けることができなかった。

 ◇

 その日、前に寅と会った川縁に座っていると、寅が走ってやって来た。
「奈緒子さん!お久しぶりです。」
 律儀に頭を下げられ、奈緒子も「あ、こちらこそです」と言って頭を下げた。
「それで、ご相談というのは····」
 早速本題を切り出してきた寅に、奈緒子は覚悟を決めて話し出した。
「私、寅君のいう通り、夫の浮気現場を押さえようと思ってる。」
「はぁ。そうですか。」
「それで、今週の土曜日に家から外出する夫を追跡しようと思うんだけど、寅君、私と一緒に行ってくれない?」
「·····えぇ!な、なんで僕が??」
 寅は心底、ゴタゴタに巻き込まれたくないというような顔をした。
「あなたしか頼めないの!私1人だと、万が一見失ったとき困るし、一人だと目立つだろうし、何より浮気相手が現れた時に、自分がどうなるか分からないの。」
 奈緒子の懇願に、寅は断りきれなくなり、
「····でも僕、お役に立つかは分からないですけど·····」
 と言ってしぶしぶ承諾してくれた。奈緒子は嬉しくなり、寅の両手を掴んでぶんぶん振り回した。
「寅君、ありがとう~!!」

 ◇

 土曜日の午後、奈緒子は一泊実家で過ごすということにして、玄関で弘人に見送られていた。
「じゃあ、行ってくるね。」
「なおちゃん、ゆっくりしてきて。行ってらっしゃい。」
 玄関を出ると、奈緒子は自家用車に乗り込み、車内で着替えた。近くのパーキングに停めて、自宅マンションの前に戻ってきて寅と合流した。
「GPSはつけなかったんですか?」
「それは考えたんだけど、私が勢いで今日実家に帰るって言っちゃったから、用意する暇がなかったの。」
「じゃあ、本当に刑事の張り込みみたいな感じですね。実はやってみたかったんです。張り込み。」
 寅がこの状況に似つかわしくないような、少しワクワクした表情をしたので、奈緒子はずっと感じていた緊張と不安が少し和らいだ。

 一時間ほどしてから、弘人がエントランスから出てきた。
「来た!」
「へーあれが旦那さん・・・かっこいい人ですねぇ。」
 気付かれないように間を空け、弘人の後ろを歩いた。奈緒子は大学生の女の子が着そうなカジュアルな服装をし、帽子を深く被った。
 途中、弘人が立ち止まって振り返ったので、慌てて2人は下を向いた。大学生のカップルに見えるように、寅の腕に手を回した。
 弘人がまた歩きだしたが、奈緒子は寅の腕に腕を絡ませたまま、歩き出そうとした。
「あの、もう旦那さん見てないですけど。」
 寅が、腕を離せと言っているのだと思い、奈緒子は答えた。
「突然振り向かれたら反応できないから、嫌かもしれないけど、しばらくこのまま歩こう!」
「嫌ってわけじゃなくて····」
 寅がボソボソと何か言っていたが、奈緒子には聞こえなかった。

 弘人は駅で電車に乗り、乗り換えてある駅で降りた。少し歩き、一人でカフェに入っていった。奈緒子と寅も入店し、弘人からは見えない位置の席に座った。
「ここで誰かと待ち合わせですかね?」
 しかし、弘人はカバンからパソコンを取り出し、仕事をしている様子だった。しばらくしても、人が来る気配はない。1時間ほどして、店を出てから、またどこかへ歩きだした。
 今度こそ目的地に行くはずだ。奈緒子はなんだか心臓が痛くなってきた。緊張した顔をしていると、今度は寅から、奈緒子の腕を掴んできた。
「振り向かれると反応できないから、こうするんでしょ。」
 奈緒子は少し心強くなって、寅の腕を握り返した。尾行を再開し、辿り着いたのは、きれいな高層マンションだった。
 弘人がマンションのエントランス付近まで行くと、女性が弘人に駆け寄っていくのが見えた。
 奈緒子は、覚悟はしていたものの、やはり女がいたと分かり、かなりショックだった。しかし、現場を押さえなければ追跡した意味がないので、スマホを用意してカメラを向けた。寅も念のため撮影していた。
 その時、奈緒子は相手の女の顔をはっきりと見た。奈緒子は女の顔を見たとたん、呆然とし、撮っていたスマホを持った手をダランと下げた。
「え?え?奈緒子さん・・・?」
 寅が目を白黒させながら、奈緒子と現場の2人を交互に見ていた。

 あの人たちは、誰だ?

 私にいつも笑ってくれる優しい夫

 学生時代から今でも、ずっと親友のはるか

 2人が自分を騙し、会瀬を重ねていたという事実が、ただただ奈緒子には信じられず、現実感がなかった。
「あの女、私の親友なの。」
 そう呟いて、奈緒子はゆらっと2人の元へ歩きだした。



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