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「あ、あの……?」

「陽斗君、僕は決めたよ。陽斗君にとって僕のキスが気持ちいいものだとするならば、僕は喜んでキスを与えよう。もちろん、ハグもだ」

「え、え……??」

「つまり、陽斗君にとってもプラスになるならば、僕は陽斗君にこそ、この溢れんばかりの欲求を受け取って欲しい!」

「え、ちょ……」

「という訳で、これから宜しくね、陽斗君♡」

「……はぁぁあ!?」

……頭が追いつかない。

口をパクパクさせる俺を残し、東条は満足そうにキッチンへと去っていった。

・・・

そして、夕方。

バイトの時間が迫り、俺はベッドから降りる。

「着替えなきゃ……」

確か先程、東条は俺の服を洗濯機に放り込んでたっけ。

今は東条に借りたトレーナーを着ているのだけれど、サイズは大きいし、こんな格好でバイトに行く訳にはいかない。

(バイトの時間まで、あと1時間半……もう準備して出ないと遅刻する)

ちなみに東条は今、夕飯の買い出しに出ているので、抜け出すなら今しかない。

服は明日以降にでも返してもらうとして、今はとにかく、隣の自分の部屋に戻ろう。

(で、バイトに行く、と)

そう決めると、俺は急いで荷物をまとめ、東条の部屋を出た。

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