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「あの、優真……」

優真の胸から顔を離し、想いを告げようとすると、同時に俺の肩に手が置かれ、そっと身体が離れた。

「さて……なんだか、急にこんな事になってごめん。スゴロクがまだ途中だったよね。まぁ、僕としてはもう十分ではあるのだけど……陽斗君、最後までやりたい?」

「あ、う……」

スゴロクなんて、もうすっかり忘れていた。

俺としては、このまま優真とイチャイチャしていたいのだが……。

(どうしよう。告白しそびれちゃった……)

というか、優真もこういった事に慣れていないから、俺の気持ちを聞くなんて頭にないのだろう。

だとしたら、気付かせなければ。

悩んだ末、俺は優真の服の裾を掴んで言った。

「……もう少しこのまま……がいい」

「え……」

もうここまできたら、大胆になってやる。

甘えたもん勝ちだ。

俺はここぞとばかりに、上目遣いに優真を見上げた。

「……」

「陽斗君……はぁ。その顔はちょっと、反則過ぎるね」

優真は困りきった様子でため息をつくと、俺の顎に手をかけ、クイッと上向かせた。

「陽斗君……君のお陰で、僕は恋する気持ちが少し分かった気がするよ。この気持ちは確かに……友達を大切に思ったり、妹の世話をやいたり、そういう気持ちとは別物だ。ただ……」

優真は愛しげに俺を見つめ、スリ、と頬を撫でてから続けた。

「恥ずかしい話だけど、この先どうやって君に接したらいいのか、正直分からないんだ。その、なんていうか……少し、怖い」

「え、怖い?」

「うん。もし……陽斗君に嫌がられたりしたらと思うと、怖いんだ」

優真はそう言って、俺の手を取り、自分の頬に当てて目を閉じた。

「優真……」

長い睫毛が、僅かに震えている。

(ほんとに、恋愛初心者なんだな)

優真にとって、俺はきっと初恋の相手になるのだろう。

そう思うと、優真を愛おしく思う気持ちがまた増していく。

しかし、焦ってはだめだ。

ここは俺が上手くリードして、優真を安心させなければ。

(まずはやっぱり、俺の気持ちを言わなきゃな)
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