single tear drop

彩矢

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兄の裏切り

決して知られてはいけない秘密

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「尊‼未知から離れなさい‼」

血相を変えて怒鳴り込んで来たのは母さんだった。

「聞こえないの?その汚ならしいものをさっさと抜いて‼未知から離れて‼」

「汚ならしいものって・・・心外だね。これが欲しくて寝込みを襲ったの誰だよ」

「もう昔の事よ。未知は関係ないでしょ。復讐したいなら私にすればいい」

母さんの後ろから駆けつけてきたのは父さんだった。お兄ちゃんは動揺することなく冷静そのもので。抜くどころか、なおも腰を打ち付けてきた。

「やだ・・・お兄ちゃん・・・もう、やめて‼」

涙で視界がグジャリと減し曲がる。
両親の見ている前で、こんな事されて・・・
こんなのイヤだ・・・
屈辱に耐えかねて、ありったけの声をかき集めて叫んだ。

一瞬だけ静寂に包まれる室内。
お兄ちゃんの動きが止まったわずかな瞬間。父さんがお兄ちゃんの腕を強く引っ張り、僕の体から引き剥がしてくれた。
蜜まみれでテロテロに滑った赤黒い塊がズルっと体内から抜け、ひりひりとした痛みが下肢に走り、あまりの痛さに声を上げその場に倒れ込んだ。

「未知‼」

一母さんがすぐに駆け寄ってくれて、タオルを身体にそっと掛けてくれた。

「ごめんね、ごめんね」

母さんが泣きながら謝罪の言葉を口にして、ギュッと抱き締めてくれた。

母さんの腕の中ってこんなに温かったんだ。
ごめんね、悪い子だよね。
いっぱい心配かけて、迷惑かけて、ごめんね。
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