single tear drop

彩矢

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修羅の妄執

修羅の妄執

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「なぁ遥琉・・・・」そう言いかけて口ごもる和泉さん。何かを決心したかのように前を見据えた。

「今すぐ未知を迎えに来い。宇賀神組が本部長側に付いたら九条組も恐らくマチガイに巻き込まれる。それに鳥飼さんが未知に危害を加えるかも知れない。勿論分かっているよ、一太くんや遥香ちゃん、それに組の皆を守らないといないから身動きが取れないことくらい・・・・俺、鷲崎さんに頼むから、それに兄貴たちにも頼むから、遥琉の代わりに一太くんや遥香ちゃんを守って欲しい。遥琉を未知のところに行かせて欲しいって。だから、早く迎えに来てやってくれ、この通りだ頼む」

痛みで動けない体を曲げて頭を下げた。

【何で無理してまで僕のことを心配してくれるの?】

「どうせ生きていても仕方ないって思っていた。生き恥を晒すくらいなら死んだ方がましだって。でも未知が寝ずに自分の体調を後回しにして懸命に看病してくれるのを見て何としてでも生きなきゃ、そう思えるようになったんだ」

和泉さんの指が目蓋にそっと触れてきて、初めて泣いていることに気が付いた。

「遥琉ごめん、未知を泣かせるつもりはなかったんだが、泣かせてしまった」

『だから、いちいち謝らなくていいって。たく、相変わらず真面目で馬鹿正直なんだからお前は』

彼の声も心なしか震えているようだった。

『未知、七海ちゃん元気⁉』あっ、この声の主は千里さんだ。早く電話に出なさいよ。誰かを急かしているようだった。
『七海』
少しだけ間が開いて、彼や千里さん以外の人が電話に出た。
丁寧ながらも鋭い声を耳にするなり和泉さんが、信じられないと驚きの声を上げた。
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