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暗澹
暗澹
しおりを挟む関係者以外立入禁止の張り紙が貼られたドアを開けられずにいたら、がらっとドアが開いて、次の瞬間には初瀬川さんの腕の中にすっぽりと包み込まれていた。
柔らかな日差しの優しい匂いがした。
「良かった無事で……」
初瀬川さんは声を押し殺し静かに泣いていた。
「大人しくしないと四季を殺す、そう脅されていたから。もう、やだ。会っても絶対に泣かないって決めたのに」
初瀬川さんがずずっと鼻を啜った。
「黒田さんにね、真犯人はすぐ近くにいる。そう言われて、だから、真犯人を暴くため四季にわざと冷たく当たったの。もしかしたら、真犯人の方からコンタクトを取ってくるかも知れない、そう思って。本当はね、四季に謝りたかった。ずっとそればかり考えていたの」
「姉さん、朝宮さんに焼きもちを妬かれるよ」
隆之さんが苦笑いを浮かべた。
「そうだった。新婚さんだったね」
名残惜しそうにすっと身体が離れていった。
そして病室の中に入ると、思いもよらない人が僕を待っていた。
「嘘……」
信じられなくて二度、三度と顔を見たのち、両手で口を押さえた僕に、その人はにっこりと優しく微笑み掛けてくれた。
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