あなたの隣で初めての恋を知る

暗澹

暗澹

バスタオルを忘れたからちょっと待ってて。
５分を過ぎても脱衣所に彼が戻ってこなくて。探しに行ったら、
｢そうだったんだ｣
ひそひそと話す和真さんと結お姉さんの声がキッチンから漏れ聞こえていた。
よく聞き取れなくてドアに近付いたら、ガラッと勝手にドアが開いたから驚いた。
｢ごめんなさい。盗み聞きするつもりじゃなかったの｣
てっきり怒られると思って頭を下げたら、
｢きみのことだ。全部自分のせいだ。そう言ってなにもかも一人で抱えようとするだろう。だから、四季のいないところで姉さんや雄士さんに今日のことを話そうと思ったんだ。俺のこそ、ごめんな｣
逆に頭を下げられてしまい、慌てた。
｢その子が噂の和真の幼妻くん？｣
不意に耳に届いた美声に、思わず顔を上げると、えっと目を丸くした。結お姉さんの隣にいたのは外国人だったのだ。
彼よりも年上、３０代なかばくらいだろうか。すらりと背が高く、精悍で華やかな顔と堂々とした雰囲気を持ち合わせていた。
「彼が雄士さん。父親が日本人で、母親がアメリカ人だ。本名はユージ・アレッシオだ」
「ブライダルプランナーなのに、探偵の真似事をしてる。一度でいいから顔を拝ませろって和真にしつこく頼んでようやく念願が叶った。予想していた子よりも何倍も可愛いじゃないか」